電磁波問題とは - Ⅲ.電磁波の強さと規制

1.商用周波電磁界(超低周波電磁波)に対する各国の規制

(1)送配電線などの電力設備から発生する超低周波磁場について、多くの国は「国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)」による国際指針値よりも厳しい値を自国の規制値として採用しています。

(2)超低周波磁場の非熱作用による健康影響の可能性を示す証拠がそれなりに強いと考える国や自治体は「予防原則」の考え方から、より厳しい規制値などを設けています。
 ※予防原則=あるリスクが本当だったときに発生する可能性がある重大な被害を防ぐために、科学的に不確定なリスクについても対策をとろうという考え方。

(3)超低周波電場について、日本の通商産業省(現経済産業省)は「電気設備に関する技術基準を定める省令」を1976年10月に「改正」し、「特別高圧の架空電線路」は、地上1mの電界が3kV/m以下となるよう施設しなければならないと定めました。日本の超低周波電場の基準値は、国際指針値(50Hzで5kV/m、 60Hzで4.17kV/mより、やや厳しくなっています。

(4)超低周波磁場について、日本の経済産業省は「電気設備に関する技術基準を定める省令」を2011年3月31日に「改正」し、「電線路」や「変電所」などの付近の規制値を200µTとする規定(第27条の2)を設けました(施行は同年10月1日から)。日本の超低周波磁場の基準値は国際指針値と同じで英国より厳しいですが、他のほとんどの国と比べるとかなり緩くなっています。
 参考:経済産業省「電力の安全」

(5)電力設備に関する規制・指針等(超低周波磁場)

英国の自主基準値 360µT  
ICNIRPによる国際指針値、日本、オーストラリアの規制値 200µT  
ドイツ、フランス、イタリア、スイス、スウェーデンの規制値 100µT  
韓国の告示値 83.3µT  
米フロリダ州(500kV線)、米ニューヨーク州の規制値 20µT 敷地端
米フロリダ州(230kV線)の規制値 15µT 敷地端
労働環境で長期曝露すると乳がんの危険が増加する値(1) 10µT 「バイオイニシアティブ・ワーキンググループ」が指摘
イタリアの注意値 10µT 住宅、学校、遊び場近くの既存施設
イタリアの目標値 3µT 住宅、学校、遊び場近くの新設施設
スイスの規制値 1µT 住宅、病院、学校等
オランダの勧告値 0.4(100)µT 子どもが電力線から長時間ばく露される場合、新設される線/新築の住宅に対し、合理的に可能であれば、0.4μT(計算に よる年間平均値)が適用
ブリュッセル(ベルギー)の規制値 0.4(10)µT 新設の定置型変圧器に対し、ガイド値として 0.4µT(24 時間平均値)を適用。この要件 を満たせない場合、全ての手段が技術的または経済的に実施不可能であることを示す義務があり、その場合には 10µT を適用。
小児白血病の発症が増える値(1) 0.2~0.4µT 各国疫学調査
小児と妊婦のための既存の居住空間について推奨される強さ(1) 0.1µT 「バイオイニシアティブ・ワーキンググループ」が推奨

注:
「バイオイニシアティブ・ワーキンググループ」は、世界各国の14名からなる電磁波の人体影響の研究や公衆衛生の政策に関する専門家集団。
出典:
(1)NPO法人市民科学研究室『バイオイニシアティブ報告書』より「公衆のための要約」
他=環境省環境安全課「身のまわりの電磁界について」2016年4月

2.身のまわりの超低周波磁場

(1)国による調査

(2)電磁波研による調査
・ACアダプタは20µTを超える物も。
・冷蔵庫の壁を隔てての背面22µT。
  出典:電磁波問題市民研究会編著『暮らしの中の電磁波測定』緑風出版

3.放送、通信についての電波(高周波電磁波)に関する規制等

(1)放送、通信のために利用される高周波電磁波について、多くの国は「国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)」による国際指針値を自国の規制値として採用しています。

(2)しかし、非熱作用による健康影響の可能性を示す証拠がそれなりに強いと考える国や自治体は「予防原則」の考え方から、より厳しい規制値などを設けています。
 ※予防原則=あるリスクが本当だったときに発生する可能性がある重大な被害を防ぐために、科学的に不確定なリスクについても対策をとろうという考え方。

(3)日本の郵政省(現総務省)は、電波の人体への影響に関して、電気通信技術審議会へ諮問し、1990年6月25日に「電波利用における人体の防護指針」(電波防護指針)の答申を受けました。
 参考:総務省「電波防護指針」

(4)日本の総務省は、電波法施行規則を1998年10月1日に「改正」して第21条の3を設け、電波防護指針に沿った内容で法的規制を行うこととしました(1999年10月1日施行)。日本の法規制値は、米国などと同じ値で、国際指針値より若干緩くなっています。
 参考:総務省「関係法令」

(5)放送、通信についての電波に関する規制等

  電力密度(又は電界強度を電力密度に換算)  
日本・米国・カナダの基準値(1) 1.8GHzの場合1000µW/c㎡
900MHzの場合600µW/c㎡
 
ICNIRPによる国際指針値、英国・フランス・ドイツ・オーストリア・スウェーデン・オーストラリア・韓国・ブラジルの基準値(1) 1.8GHzの場合900µW/c㎡
900MHzの場合450µW/c㎡
 
中国の基準値(1) 38µW/c㎡  
ロシア・ポーランド・ブルガリアの基準値(1) 10µW/c㎡  
イタリアの「注意値」(1) 9.5µW/c㎡ 4時間以上滞在の建物内
スイス(1) 1.8GHzの場合9.5µW/c㎡
900MHzの場合4.2µW/c㎡
 
ブリュッセル(ベルギー)の基準値(1) 1.8GHzの場合4.7µW/c㎡
900MHzの場合2.4µW/c㎡
電磁界曝露防護(環境事項)は連邦政府ではなく地方政府に管轄権があるとベルギー最高裁が2009年に判決
欧州評議会の勧告値(2) 0.1µW/c㎡  
大勢の住民が健康影響を訴えた宮崎県延岡市での携帯電話基地局からの電磁波の実測値(3) 最大値0.1~22.0µW/c㎡ 吉富邦明・九州大学教授による測定
携帯電話で通話が可能な最小値(3) 0.00002µW/c㎡ 吉富邦明・九州大学教授による800MHz帯での実験例

出典:
(1)総務省「平成25年度電波防護に関する国外の基準・規制動向調査報告書」2014年3月
(2)欧州評議会 The potential dangers of electromagnetic fields and their effect on the environment. 欧州評議会は、人権、民主主義、法の支配の分野で国際社会の基準策定を主導する汎欧州の国際機関で、各種条約策定、専門家会合開催、国際問題などに関する勧告・決議採択などに取り組んでいる。日本もオブザーバーとして参加している
(3)吉富邦明・九州大学教授による講演「携帯基地局周辺の電磁波と健康被害」電磁波問題市民研究会主催2015年2月14日

4.身のまわりの高周波電磁波

携帯電話(通話中)(1) 最大552.9µW/c㎡ 電磁波研による測定例
電子レンジ(1) 128.3µW/c㎡ 電磁波研による測定例
デジタルビデオカメラ(液晶画面オン)(1) 47.9µW/c㎡ 電磁波研による測定例
宮崎県延岡市での携帯電話基地局からの電磁波(2) 最大値0.1~22.0µW/c㎡ 吉富邦明・九州大学教授による調査
コードレス電話(3) 数~10µW/c㎡ 上田昌文さん(市民科学研究室)による測定
携帯電話(通話中・イヤフォン使用)(1) 3.3µW/c㎡ 電磁波研による測定例
携帯電話基地局からの電磁波(4) 最大2µW/c㎡ 国による調査
スカイツリーからのTVキー局電波(5) 最大0.554µW/c㎡ 新東京タワーを考える会による測定

出典:
(1)電磁波問題市民研究会編著『暮らしの中の電磁波測定』緑風出版
(2)吉富邦明・九州大学教授による講演「携帯基地局周辺の電磁波と健康被害」電磁波問題市民研究会主催2015年2月14日
(3)電磁波問題市民研究会編著『携帯電話でガンになる!?』緑風出版
(4)環境省環境保健部環境安全課「身のまわりの電磁界について」2016年4月
(5)網代太郎「東京スカイツリー周辺における電磁波測定調査」

5.海外の対応例

 海外各国の多くは、電磁波の非熱効果による健康影響を考慮していないICNIRPの国際指針値か、またはそれに近い値を自国の規制値として採用しています。しかし、非熱効果による健康影響も否定できないことから、ほとんどの国が、規制値を厳しくすることとは違うやり方で、電磁波について政策対応などを行っています。
 一方、日本は、超低周波は国際指針値と同じ値、高周波は国際指針値よりやや緩い値を規制値としているだけでなく、規制値以外での政策対応などもほとんど実施していません。

(1)英国
・英国保健省は携帯電話についての啓発リーフレットを2013年3月に作成。携帯電話の長期的使用による健康影響はまだ不明で、より多くの研究を必要としていること、また、10代の子どもの神経系は発達途上であることなどを指摘したうえで、16歳未満の若者は重要な目的に限って携帯電話を使うことを勧め、また、電波が気になる人はハンズフリー・キットやメールの活用によって曝露を減らせることを知らせています。
 参考:当会「英保健省が携帯電話の啓発リーフレットを出版」

(2)フランス
・2015年1月、新しい法律が成立し、保育所での無線LAN(Wi-Fi)使用が禁止され、携帯電話の広告に(イヤフォンのような)頭の被曝を減らす装置についての推奨を含めることが義務付けられました。
 参考:当会「フランスで法律成立 保育園で無線禁止、過敏症の調査」
・フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は、2016年7月に発表した高周波電磁波曝露による子どもの健康影響の可能性についての報告書の中で「一般住民、特に子どもたちの健康と安全を守るために電磁波の環境曝露制限の参考レベルを再考すること」が必要と指摘。
 参考:当会「フランス政府機関、子どもへの影響で報告書 「電磁波曝露基準の再考を」」
・2015年8月、裁判所が電磁波過敏症発症者への障害者手当の受給資格を認めました。
 出典:AFP「電磁波アレルギー」に障害者手当の受給認める、仏裁判所

(3)ドイツ
・2013年、220kV以上の送電施設を住居の上に新規架設することを禁止。
 参考:当会「ドイツ電磁界規制改正 市民団体から批判」

(4)ベルギー
・2013年、7歳以下向けにデザインされた携帯電話の販売を禁止。14歳以下の子どもを対象とした広告やテレビコマーシャルを禁止。
 出典:Portfolio News「ベルギー、子供向け携帯電話販売禁止」

(5)イタリア
・仕事で携帯電話を長時間使用したことが脳腫瘍の発症につながったとの男性の訴えを認めたイタリア最高裁の判決が2012年10月に確定。
 参考:当会「携帯で脳腫瘍、伊最高裁が労災認める」

(6)オランダ
・2002年、居住用建物の屋上に接地面からの高さが5m以下のアンテナを設置する場合、建築許可は不要とするが、建物の所有者が承諾しても建物の居住者の過半数が反対した場合は設置しないことに(政府と携帯電話事業者との合意)。
 出典:総務省「諸外国における電波防護規制等に関する調査報告書」2004年3月

(7)ロシア
・ロシア非電離放射線防護委員会(RNCNIRP)は2011年、「携帯電話からの電磁場:子どもたちとティーンエイジャーに対する健康影響」の中で「18歳未満の携帯電話使用は推奨できない」と明記。
 参考:当会「ロシア当局が携帯電話の子どもへの影響について決議」

(8)バングラデシュ
・2002年から16歳以下の子どもは携帯電話禁止。
 参考:市民科学研究室「携帯電話と子どもの気がかりな話」

(9)米国カリフォルニア州
・州教育局は1989年に新規学校用地と既設送電線との離隔距離を定めるガイドラインを制定し、1993年にはそのガイドラインを法制化。たとえば、5万~13万3000Vの送電線に対しては、学校用地の境界線は少なくても送電線用地端から100フィート(約30m)離さなければならないと定めました。ただし、1990年代後半に入り、この規制にもとづいた学校用地の選定が困難となり、2006年に「離隔規制の例外ガイダンス」が制定され、個々の条件に応じた緩和措置がとられています。
 参考:電磁界情報センター「プレコーション的アプローチの事例」

(10)米国カリフォルニア州アーバイン市
・住宅や幼稚園を0.4µTを超える場所に建設することを禁止。
 参考:電磁界情報センター「プレコーション的アプローチの事例」

< Ⅱ.電磁波の影響

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