無人の飛行ロボット「ドローン」を目視外でも飛ばして物流などに役立てようと、ドローンの通り道「ドローン航路」を整備する計画を経済産業省が打ち出しています。ドローンを自動運転または遠隔制御するために、航路に沿った地域では携帯電話電波が増強される可能性があります。
ドローン航路の「設置場所」としては、まず、高圧送電線沿いが想定されています。ヘリコプターや飛行機は接触事故回避のため送電線に近づかず、航空法でも150m以上離れて飛ぶことが決められています。逆に言えば、ドローンを高圧送電線に沿って飛ばすことで、飛行機などと接触する恐れが小さくなります。
高圧送電線を管理する東京電力パワーグリッド(東電PG)は、鉄塔の点検へのドローン活用を進めています。その用途に限らず、物流も担うことを目指し、東電PG、NTTデータ、日立製作所が2020年に「グリッドスカイウェイ有限責任事業組合(GSW)」を設立しました。無人飛行機の飛行形態は、目視内での操縦飛行(レベル1)、目視内の自動・自律飛行(同2)、無人地帯の目視外飛行(同3)、有人地帯の目視外飛行(同4)の4段階に分かれます。GSWはレベル3以上を目指しています。
ドローン航路は、高さ30m、幅30~50mの空間が基本。鉄塔の頂点や送電線の上空5~35mの空間を飛行するイメージです。送電線沿い以外では、河川沿いにドローン航路を設けることも想定されています。
経済産業省は「少子高齢化や人口減少などの社会課題に直面する今の時代においては、自動運転やドローンといった新たなデジタル技術を社会実装させるための、新しいデジタルのインフラが必要」だとして、今年3月に「デジタルライフライン全国総合整備計画」をとりまとめました。
同計画は、ドローン航路を2033年度までに全国の送電網の上空4万kmと、全国の1級河川の上空に総延長1万kmを設定することを目標として掲げています。先行地域として、埼玉県秩父地域の送電網上空150kmと、静岡県浜松市の天竜川水系上空30kmで、今年度から実現へ向けて着手するとしています。
地上基地局、空飛ぶ基地局、衛星の活用も
同計画は、ドローン航路整備のためには電波不感地帯の対策が重要だとして、先行地域においては電波環境調査を政府が行った上で、短期的には既存の携帯電話基地局を調整して上空の通信エリア確保し、将来的には「空飛ぶ基地局(HAPS)」や災害に備えて通信衛星の活用も検討するとしています。航路沿いでは電波が増強されそうです。
そもそも、ドローンによる物流事業は採算がとれるのか、消費者や地元住民に受け入れられるのかという問題があり、同計画について検討した経産省のワーキンググループでも主要な論点となっていました。【網代太郎】