ハーデルら 5G基地局で健康影響が出た7事例をまとめた論文

 自宅などの近くに5G基地局を設置されたり、5G基地局が近くにある場所に滞在した後に様々な症状が出た事例研究(ケーススタディ)を、スウェーデン環境がん研究財団のLennart Hardell(レナート・ハーデル)と、スウェーデン放射線防護財団のMona Nilsson(モナ・ニルソン)が8件発表したことを、会報第147号でご紹介しました。このハーデルらが、これら8件のうち7件をまとめた論文が、6月に発表されました。8件のうち、学校の近くに5G基地局が設置された事例は含まれていません。

 この論文[1]は、住居などの近くに5G基地局が設置されてから短期間で「マイクロ波症候群」を発症した、4~83歳の合計16人を対象とした7件の症例報告です。計41の症状が見られ、深刻だったのは、不眠・夜中に目が覚める・早朝に目が覚めるといった睡眠障害、疲労、頭痛、イライラ、情緒的症状、集中力の問題、短期記憶障害などでした。これらの症状はすべてマイクロ波症候群に見られる症状だと著者らは指摘しています。ほとんどの場合、調査対象者が5Gのない場所に移ってから短期間で症状が軽減または消失し、著者らは「より多くの安全性研究が実施されるまで5Gの展開を中止すべきであるという緊急性を裏付けるものである」と結論づけています。著者らは、自分たちが知る限り、5G基地局の健康影響を調査した世界初の研究であるとしています。
 この論文が取り上げた事例の測定値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)による国際ガイドラインより低かったものの、測定した11の寝室の最大値(ピーク値)は0.06~250超(測定限界超え)μW/cm2と、かなりの強さでした。1μW/cm2を下回ったのは1室だけで、10μW/cm2超が5室ありました。

以前の世代より5Gは有害

 この論文によると、基地局の近隣住民への健康影響に関する以前の疫学調査における測定結果として、2001年にスペインのGSM(2G)基地局の近くに住む94人の寝室で測定された高周波電磁波の最大値0.44μW/cm2、2006年にオーストリアで行われた研究で336人の寝室で測定した高周波電磁波で最も高かった最大値0.41μW/cm2があります。それらに比べると、今回のケーススタディーにおける5G電波の強さが際立ちます。7件のうち1件については、2分間平均値も測定され、13.5μW/cm2でした。この家に住んでいた49歳の男性は1週間以内に生命の危険を伴うと考えられる深刻な心臓の症状を発症し、アパートを離れました。
 7件のケーススタディすべてで、5Gへの変更前に3G・4G用のアンテナが稼働しており、調査した住民のほとんどはこれら旧世代からの電磁波を耐えていたようです。しかし、5Gの展開後、住民のほとんどが急速にマイクロ波症候群の重度の症状を発症しました。これは、5Gがそれ以前の世代の通信よりも有害であることを示していると著者らは述べています。
 5Gの電磁波にさらされた場合、健康被害は数日のうちに発生することが多く、5Gからの曝露を回避または大幅に低減すれば、短期間で症状が消える可能性がある、と著者らは述べています。【網代太郎】

[1]Summary of seven Swedish case reports on the microwave syndrome associated with 5G radiofrequency radiation

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