スマートメーター「オプトアウト制度」院内集会に146名 拒否有料化反対、アナログメーター継続訴える

スマートメーター院内集会=鮎川哲也撮影

 スマートメーターの「オプトアウト制度」の問題点を訴える院内集会が7月3日、衆議院第二議員会館で開かれました。オプトアウト制度とは、スマートメーターによる遠隔検針を拒否(オプトアウト)する需要家(電力消費者)から、メーターの設置・交換などのたびに44,000円を徴収する“拒否有料化”と、遠隔検針拒否の方法を“スマートメーターからの通信部外し”に限りアナログメーターは認めない、というものです。2028年4月からこの制度を始めることを、経済産業大臣の諮問機関の下に置かれている委員会で昨年、決められました。スマートメーターからの電磁波で症状が出る電磁波過敏症(EHS)の方々にとっては健康面および経済的な脅威であり、様々な理由からスマートメーターを選択したくない消費者の権利保障の観点からも、不当な制度であり容認できません。そこで、アナログメーターの存続を望む会、いのち環境ネットワーク、当会(電磁波問題市民研究会)、日本消費者連盟の4団体の共同により、オプトアウト制度の撤回を求める署名運動に取り組んでいます。院内集会は、この問題を、国会議員やメディアをはじめ、広く知ってもらうことを目的に、上記4団体の共催で行いました。会場参加74名、オンライン参加72名、計146名が参加しました(主催者、エネ庁、東電PGを含む)。国会議員、地方議員、議員秘書、メディアの方々にもご参加いただき、ほとんど知られていないこの問題を広める第一歩になったと思います。
 集会には、国のスマートメーターの担当部署である経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)の職員2名と、東京電力パワーグリッド(東電PG)の担当者3名にもご参加いただきました。主催者から両者へ事前に質問し、その回答を前提に、会場でさらに質疑応答を行いました。

前代未聞! エネ庁・東電PGが匿名参加

 院内集会に来る省庁の方々は、権限をもつ役職でないので、立場上、発言が制約されることも、やむを得ない面もあります。とは言え、今回の院内集会は、ひど過ぎました。回答内容もさることながら、エネ庁・東電とも、所属のみ明らかにする匿名での参加を一方的に主張し、主催者との名刺交換も拒否しました(主催者側の名刺は受け取っていただきました)。私(網代)の経験では、このようなことは初めてです。さらに、エネ庁・東電PGとも、オンラインの画面に顔を映すなとも要求しました。集会の会場を借りたり、エネ庁との折衝でお世話になった高木真理参議院議員(立憲民主党)の事務所によると、職員の名前を出さない理由について「以前、電磁波研ではない、電磁波問題に取り組んでいる他の団体により、職員がトラブルに巻き込まれ、省庁として大変な騒ぎになった事例があった。以後、このような対応にさせていただいている」という主旨の説明がエネ庁からあったとのことです。どの程度のトラブルなのか分かりませんが、国の担当者として主権者と向き合う立場の者が匿名なのは、あり得ません。あまりに不当な要求ですが、主催者側で話し合い、今後の課題としつつ、今回は、この点については徹底抗戦しないことにしました。

健康を取り戻すための行動に“罰金”

 高木議員は別件のため集会に出席できず、代理で秘書の方がご出席されました。高木議員からの「私は、アレルギーの発症や化学物質過敏症、香害のケースでも、周囲に理解されずに苦しんでいる方たちに接してきましたが、決して見過ごしてはならない問題と考えています。スマートメーターの発する電磁波の影響で、体調不良を抱える方々も、同様の苦しみの中にいらっしゃると思います。有意義な意見交換ができますことをご祈念申し上げ、ご挨拶といたします」といったメッセージを、司会の杉浦陽子さん(日本消費者連盟事務局長)が集会の冒頭で代読しました。
 続いて、東麻衣子さん(アナログメーターの存続を望む会代表)が、スマートメーターによって被害を受けた体験を報告。東さんは知らされないまま自宅に設置されたスマートメーターでめまい、体への圧迫感、頭痛など、寛解していたEHSの症状が再発しました。自宅と両隣の家をアナログメーターに戻したことにより、症状が治まりました。
 東さんは「健康を守るため、元の生活を取り戻すためにアナログメーターに戻しただけなのに、なぜ、これほど高額なペナルティーのような費用を支払わなければならないのでしょうか。1人でも多くの人が健康を脅かされることなく暮らせるよう、皆様のご協力とご理解をいただけますよう、お願い申し上げます」と訴えました。

全戸設置のメリットは、ほぼ遠隔検針のみ

 私(網代太郎・電磁波問題市民研究会会報編集長)は、オプトアウト制度と、その問題点について話しました。その前提として、まずスマートメーターはどのような物で、国はなぜ、どのような方法で設置を進めてきたのか、から紐解きました。
 国は、スマートメーターを原則、すべての需要家に設置する方針を掲げ、その理由として設置のメリットなどを挙げています。その筆頭が、スマートメーターからの30分ごとの電力使用量データを、宅内のディスプレイにリアルタイム表示する「見える化」により、需要家の節電意識を刺激することです。しかし、見える化をするためには、スマートメーターと宅内を結ぶ通信経路である「Bルート」の利用を申し込まなければならず、その利用率は、東電エリアで、わずか0.14%です。エネ庁などが強調する節電効果は、実際は極めて限定的なのです。結局、スマートメーター全戸設置のメリットは、遠隔検針等による人件費削減だけです。つまり、メリットを受けるのは、主として送配電事業者側であり、私たち需要家のほうではないことを指摘しました。
 一方で、スマートメーターを拒否したい理由は、電磁波以外にも、30分ごとの電力使用量という生活パターンが分かるプライバシー情報を把握されることによる犯罪被害または監視社会化、火災、計量の正確さの問題、サイバー攻撃のおそれなどがあり、それらの心配には根拠があることを実例を示しながら説明しました。

需要家と送配電事業の歩み寄りを台無しに

 スマートメーター導入政策じたいの是非はともかく、スマートメーターを拒否する権利を需要家に認めることを、私たちは導入前から訴え続けてきました。
 スマートメーターの設置が始まったころは、送配電事業者がかなり強引に設置を進める事例が多くあり、予告なく交換された、「電気を止める」と脅された、電磁波過敏症の診断書の提出を求められた、といった相談が、全国から私たちに、連日のように寄せられました。しかし、私たちの運動や個別交渉の積み重ねの中で、現在では、スマートメーターの通信部外しであれば、ほぼ無条件で認められるようになりました。通信部を外すと、電波の送信頻度は大幅に減るので、それで救われたという方々も大勢いらっしゃいます。また、東電PG以外では、アナログメーターへの交換に応じるケースもありました。十分とは言えないまでも、需要家と送配電事業者が歩み寄ってきた経緯があるのに、オプトアウト制度導入は、それを台無しにしてしまうものだと私は訴えました。

拒否の権利に基づく制度でなく拒否をしづらくさせるための制度

 オプトアウト制度の事務手数料の負担が高額であることは「拒否はできます。ただし、なるべくあきらめてください」という国・電力会社によるメッセージだと私は指摘。制度の問題点として、①オプトアウトをしている当事者からの意見聴取もなく、パブコメの募集もなく、国会での議論もないという決定プロセスの問題、②事実上のスマートメーター強制である、③障害者への合理的配慮義務に反する、④通信部を外しても症状が出る方に対応できないこと-を挙げました。
 さらに、中部電力パワーグリッドによる「積み上げ方式」(会報157号参照)や、中国電力ネットワークが裁判所に「計器交換妨害禁止の仮処分命令」を申し立てた事例(会報第158号参照)を紹介し、送配電事業者の現場対応が、オプトアウトをあきらめさせる方向に強まっていることを指摘しました。

通信機を外しても電磁波が出る

 続いて、加藤やすこさん(いのち環境ネットワーク代表)が、化学物質過敏症(MCS)とEHSで東京へ行けない体調なのでオンラインで報告しました。
 加藤さんは、スマートメーターから発生する電磁波は二つあると説明。一つは電力会社へ電力使用量を送信するために無線周波数送信機から出る電磁波で、もう一つはメーター内の電子機器のスイッチングモード電源です。電源を高速でオン・オフすることで、交流から直流へ変えたり、電圧を変えることができるスイッチングモード電源からは高調波電圧が発生し、室内配線を通じて屋内に拡散します。体を帯電させ、シグナル伝達機能やインスリン分泌、免疫系を妨げる可能性があり、高血圧、耳鳴り、睡眠障害、認識障害、糖尿病などとの関連性が指摘されています。ノルウェー国立工科大学元講師のEinar Flydal(フライダール)博士らが自国のスマートメーターを実測したところ、スイッチングモード電源によって、1~60kHz、30~40MHzの帯域で高いノイズ電圧が確認されました。通信機と電子機器の両方から、低周波、中間周波数、マイクロ波の電磁波が発生していて、無線通信をオプトアウトしたとしても、汚染電気は依然として存在するとFlydal博士が述べていることを、加藤さんは強調しました。

過敏症など疾患群の6割が設置後に症状

スマートメーター設置後に出た症状=加藤やすこさんの発表スライドより

 加藤さんは、オプトアウトをしている方を対象にオンラインでアンケート調査を行い、その結果を発表しました。オプトアウトをしたかったのに送配電事業者に拒否された方々からの回答もあったそうです。有効回答者数は、疾患群(EHS、MCS、アレルギー疾患、神経変性疾患、中枢性感作疾患)581名、対照群118名の計699名。
 スマートメーター設置後に体調不良を経験したのは、疾患群が63.2%、対照群が18.6%でした。疾患群で最多の症状は、頭痛・頭部の圧迫感で42.7%ですが、対照群は7.6%にとどまりました。疾患群で次に多かったのは、肩こりなど筋骨格系の症状が34.9%で、対照群は8.5%。疾患群では、思考力低下など認識能力の問題、イライラ・うつなど情緒の問題、平衡感覚異常、目の疲れ・かすみ目が、それぞれ約3割でした。対照群と比べて疾患群の方が圧倒的に体調不良を経験していることがわかりました(このページの図)。
 EHSやMCSの人は、原因となる電磁波や化学物質をできるだけ減らすよう自宅内を整えていますが、近隣の環境要因のために転居せざるを得ない場合があります。アンケートでも、転居したことがある、転居先を探している、の合計が疾患群で計37.4%、対照群が計4.2%でした。オプトアウト制度は転居しても44,000円の事務手数料は返還されず、転居リスクが高い過敏症の人たちにとってあまりにも不当であると加藤さんは訴えました。
 オプトアウトの状況は、アナログメーターが疾患群19.6%/対照群25.4%、通信部外しが52.3%/35.6%、通信機能がある通常のスマートメーターが27.0%/39.0%でした。
 オプトアウトの理由(複数回答)は、電磁波を避けるが疾患群71.4%/対照群55.1%、個人情報保護が25.0%/32.2%、火災が14.3%/11.9%でした。
 2028年からのオプトアウト制度を知っている人は、疾患群43.0%、対照群34.7%で、ともに半数以下でした。

需要家の自己申告で検針不要にしては

 事務手数料44,000円が妥当と答えたのは疾患群0.3%、対照群3.4%だけ。また両群とも9割以上がアナログメーター提供を継続すべきと答え、障害者への合理的配慮が必要と答えました。
 アンケートの自由記入欄では、スマートメーターで体調が悪化し、アナログメーターへ交換するか通信部を外すと改善したという記述が複数ありました。
  事務手数料については、賃貸物件を所有し自分で空き室を修繕することもあるので通信部を外しているが何棟分もの事務手数料を払うとすると負担が大きい、EHSに苦しみ外出できない暮らしを余儀なくされわずかな障害年金で生活しているので事務手数料の撤回を強く望む、などの意見がありました。また、検針の人件費がかかるというなら需要家がメーターの写真を撮って電力会社へ送れば良いという提案や、一方的に決めてほしくないという憤りの声もありました。

障害者差別解消法に違反

 加藤さんは、オプトアウト制度は障害者差別解消法に違反しており合理的配慮の提供をすべきであること、アメリカでは「障害のあるアメリカ人法」で合理的配慮に料金を課すことが禁止されており、電力会社を提訴したEHS患者にオプトアウト料金が返還された例があること(会報第130号参照)も紹介しました。そして、この制度の白紙撤回を求める社会的な議論が必要だと締めくくりました。
 その後、質疑応答に移りました。主催者から質問への回答をエネ庁、東電PGから事前にいただき、それに基づいて、主催者から質問、その後、会場参加者から質問しました。質疑応答の内容を、この後に掲載します。
 なお、参加者から、オプトアウト制度についてパブリックコメントを行わなかった理由を質問されたエネ庁担当者が、以前のスマートメーターの研究会のときはパブリックコメントを行ったという回答をしました。これは、エネ庁の「次世代スマートメーター制度検討会」による「取りまとめ案」について2022年3~4月に行ったパブリックコメントについて述べたものと思われます。この時のとりまとめ案には、オプトアウトについて「なお、オプトアウトの在り方については、諸外国の事例も踏まえつつ、具体的な手続等について、一般送配電事業者と国の審議会とが連携し、今後検討を行う」と書いてあっただけです。このわずか一文の記載と、その3年後に突然決めたオプトアウト制度を同列視するようなエネ庁の説明は、まさに詭弁と言うべきです。この時のパブリックコメントには、当会からの意見も含め、アナログメーターの存続を求めたり、オプトアウト有料化への反対や、次世代スマートメーターで電磁波が増える(一部の需要家から5分ごとに使用量データを取得、Wi-Fi対応)ことへの反対を含めた電磁波問題に関する意見が40件出されていました。
 院内集会には、ラサール石井参議院議員(社民党)ご本人、前述の高木真理参議院議員(立憲民主党)秘書、岩渕友参議院議員(共産党)秘書がお越しくださいました。オンライン配信をレイバーネットの松原明さんにご担当していただき、たいへんスムーズに行ってくださいました。ありがとうございました。
 署名は7月末が第2次集約です。その後の方針は、今後4団体で話し合います。【網代太郎】

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