科学技術庁の疫学調査結果の解説

□科学技術庁(現文部科学省)等は未発表
 今回の疫学調査結果は朝日のスク−プであり、まだ正式な発表はされていない。しかし、「中間解析内容」は担当者の裏付け取材を基に報道されており内容に誤りはない。むしろ2002年3月に3ヵ年調査は終了しており、これまでまったく発表してこなかったことのほうが問題である。
 というのは、99年度に調査を開始する時点でも科学技術庁は発表を好まず、当時、毎日と東京しか報道しなかった。日本で初の全国規模疫学調査なのにその態度は不可解なものだった。
 報道によれば正式発表は年内予定。

□WHOの2005年環境保健基準はどうなる
 WHO(世界保健機関)は1996年から2005年までの10年かけて、新しい「環境保健基準」をつくろうと動いている。当初は5年計画で2000年に「極低周波電磁波」の基準をつくる予定だったが、携帯電話の爆発的普及で急遽「高周波電磁波」の基準も射程に入れたため2005年まで延長された経緯がある。これから厳しい基準を求める環境派ちょうと甘い基準を求める経済派との間で激しいら一時的ロビ−活動が展開されるであろうが、経済派の日本で「4ミリガウスでリスク2倍」が出たことでより複雑な過程をたどりそうだ。

□極低周波と超低周波の違い
 電磁波は「ELF−EMF」と「RF/MW」に大きく分けられる。「ELF−EMF」は「Extremely Low Freqency−Electric Magnetic Field」つまり極低周波電磁場の意味で「Extremely=極端に」を極と訳すか超と訳すかの違いで極低周波と超低周波は同じことだ。
 一方の「RF/MW」は「Radio Freqency/Micro Wave」つまり「無線周波数/マイクロ波」のことで高周波の意味だ。

□電磁場と電磁波は同じ
 電磁場と電磁波は与える影響の場をみるか波の部分をみるかの違いで両者に違いはない。界と場も違いはない。

□今回の疫学調査は極低周波の分野
 今回の報道は極低周波、つまり家庭電化製品・送電線・配電線・変電所などで使われる50ヘルツ/60ヘルツの電磁波での調査だ。
 ちなみに高周波はガウスやテスラでなく電力密度「W/m2」で表す。

□高調波やトランジェントを測定した
 日本の今回の疫学調査で注目されるのはこれまであまり研究されてこなかった高調波やトランジェントの研究がある。電化製品からは50ヘルツの場合、その倍数の百ヘルツや3倍数の150ヘルツの周波数の電磁波が出ている。これを「高調波」(こうちょうは)という。あるいは、電化製品から一時的に高い周波数の電磁波が出る。これをトランジェントという。特に電気を切ったり入れたりする時に出る。こうした高調波やトランジェントが身体に悪影響を与えるのではないかという説があるが、これまでは研究されてこなかったが日本の今回の研究には入っている。
 また電磁波との交絡因子の可能性がある大気汚染・室内汚染・自然放射線・医療放射線・ラドンなどの測定も行なっているのでそうした結果も重要である。

□まだ言うか「50ガウス安全説」
 電力会社はこれまで1987年のWHOが出した「環境保健基準69」でふれた「50ガウス(5万ミリガウス)以下では有害な生物学的影響は認められない」を安全説としていたが(本当はWHOの基準でないのだが)、そろそろ撤回しないと恥をかきますよ。もう電磁波の熱作用でなく非熱作用が問題になる時代なのだから。


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