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マイクロウェーブ・ニュース
2002年11〜12月号より
(抄訳 TOKAI)

電磁波(EMF)のリスクとコ−ヒ−のリスク

WHO国際EMFプロジェクトのメッセ−ジの問題点


□WHOの出したブックレット
 WHO国際EMFプロジェクトが『EMFリスクに関する話し合いの設定』と題する66ペ−ジのブックレット(小冊子)を出した。EMFリスクに関する姿勢の違いについて、利害の反する立場の人たちが話し合いを通じて誤解を減らし信頼し合えるようにするために、いろいろアドバイスが書かれている。
 しかし同時にこの小冊子には少なからぬ問題点が見受けられる。

□2BにランクされるEMFとコ−ヒ−
 2001年6月にIARC(国際がん研究機関)は極低周波磁場(EMF)を2B、つまり「ヒトに割を果た対して発がん可能性あり(possible)」に分類した。このランク2Bにはクロロホルム・鉛・DDTなど231物質が入っているが、そこにはコ−ヒ−も入っている。
 ブックレットつまりWHO国際EMFプロジェクトはEMFのリスクを低く見せようと「EMF曝露はコ−ヒ−1杯を飲む以上の健康被害はない」という趣旨の展開をそこで行なっている。

□ショックを和らげるための姑息さ
 プロジェクトの現責任者マイケル・レパチョリと次期責任者リ−カ・カイフェッツは、231ある物質からコ−ヒ−だけを拾いあげた。しかもコ−ヒ−は腎臓がんリスクを高める一方で結腸がんを防ぐ効能もあると紹介している。多くの人たちがコ−ヒ−1杯なしでは1日が始まらないことを考えればこうした例示はどういう役割を果たすか歴然だ。
 231の中には四塩化炭素・DDT・鉛など明らかにコ−ヒ−より害がありそうなものも多くあるがそれらには触れない。
 プロジェクトの連中はEMFを2Bに分類したショックを和らげようとこうした方法をとっていることはあからさまだ。

□EMFのリスクは心配ないのか
 EMFが小児白血病とリンクしていることは知られている。しかし私たちはEMFを曝露されることが子どもたちに利益をもたらす可能性など考えたこともない。そこがコ−ヒ−との違いだ。
 ところがカナダのエドモントン・カトリックスク−ル(ECS)から「ファクトシ−ト」(背景事実説明文)が届き、そこには「EMFに曝露された子どもたちはがんリスクが減る」と書いてあったのだ。(はっきり言うがこれは誇張でもなんでもなく事実だ)。
 さらに「私たちが相談した専門家は皆EMFと小児白血病に関連はないと言っていたし、私たちが調査した研究もEMFと小児白血病は関連ないとしており、健康リスクはないと考えている」とも書いてある。
 一体誰とECSは相談したのだろうか?最も考えられるのはECSのコンサルタントであるメアリ−・マグブライドである。彼女は、エドモントン市で送電線近くに学校を建設することはWHOの勧告と矛盾しない、と言っている。

□NIEHSの微妙な姿勢変化
 NIEHS(米国環境健康科学研究所)が最近、EMFブックレット『EMF・Q&A』の改訂版を発行した。その中で、流石にコ−ヒ−とEMFは同じといった記述はないが、EMFの健康リスクにについてはねつけるような見方をとっている。
 4年前、NIEHSは評価小委員会をもち「EMFを2B(発がん可能性あり)」に分類した。その後IARCが同じ2Bに分類したのにその決定を“再確認”ととらず、むしろNIEHSの決意は弱まっているように見える。そして不必要なEMF曝露はなるべく減らそうという戦略をすすめようとしていない。

□ポ−ティエの心変わり
 NIEHSとWHOの両方のブックレットの草稿づくりに関与したクリス・ポ−ティエ(Chris Portier)は見方を変えたように見える。2001年6月のIARCの評価委員会では、ポ−ティエはEMFとがんの関係は疫学デ−タより動物デ−タで示されていると力強く主張した一人だ。
 彼も含めた21名の評価委員会と3人のオブザ−バ−をポ−ティエが説得していたならば、IARCはEMFを2Bでなく2A(ヒトに対しておそらく発がん性あり=probable)に分類していただろう。70%発がんありの2Aにはベンゾピレン・PCB・紫外線が入っている。
 ポ−ティエは米国国立毒物学計画の准代表で、かつNIEHSの環境毒物学計画のチ−フであり大きな影響をもつ人物だ。私たちはなぜポ−ティエが心変わりしたのかわからない。はっきりしているのは、EMFの健康への影響に強い警告を出したカリフォルニアEMF計画報告書に彼は良い印象は持っていないことだ。彼がEMF健康リスクについて米国人に正しく警告を与えないのはなぜなんだろう。
 以前、WHOとNIEHSはともに慎重なる回避を支持したし、あるいはEMF曝露を低減するためのコストのかからない手段をとることを支持した。それがあたかも過去の出来事のように見える。今回のメッセ−ジは「心配するな、ハッピ−であれ、エスプレッソをもう1杯どうぞ」ということだ。


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