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マイクロウェーブ・ニュース
2002年11〜12月号より
(抄訳 TOKAI)

ドイツ退役軍人がレ−ダ−で被害を受けたと米企業を訴えた

□テキサス州で集団訴訟
 ドイツの退役軍人たちは、軍事レ−ダ−の電気機械部分から出た有害なX線が原因で健康障害を起こしたと、アメリカのレ−ダ−・メ−カ−を、エルパソのテキサス州裁判所へ10月8日に訴えた。
 訴訟方法は原告に関係なく状況を共有するなら賠償金が支払われる「集団訴訟」で行なわれた。状況を共有するとはレイセオン社やル−セント社など米レ−ダ−製造企業ならどこでもそこの製造したレ−ダ−により被害を受けたことが明らかならば、賠償金が支払われるということだ。
 数百人のドイツの退役軍人は、レ−ダ−により様々の健康被害を受けたと信じて賠償を要求してきたものである。2001年にドイツ政府が依頼し作成された報告書は、「高出力レ−ダ−から発射されるX線は退役軍人が罹ったがんの内いくつかのがんに関係している」とした。そしてドイツ国防省は、被害者の賠償のため迅速に手続きを進めると、すぐに声明を出した。被害者のいくつかの要求は認められた、それにもかかわらず、退役軍人たちは国防省を法廷に訴えた。デンマ−クの新聞が11月に報道したところでは、デンマ−クでの労働賠償局は、空軍基地で働いていたレ−ダ−修理工がレ−ダ−のX線でがんになったという主張を認めた。

□米国で訴訟がなされるのは妥当
 退役軍人側の弁護人であるライナ−・ゴイレン(Reiner Geulen)は、米レ−ダ−メ−カ−が被害者への償いを引き受けるべきだと主張した。ニュ−ヨ−ク市のブルックリン法律学校のアンソニ−・セボック(Anthony Sebok)教授はゴイレン弁護士にアドバイスしているが、「米裁判所がこの係争を扱うのにふさわしい。その理由はレ−ダ−は米国で製造され原告はこの米国で訓練を受けたからだ。」と語っている。
 今回の訴訟の弁護団リ−ダ−はフィラデルフィアのバ−ガ−・モンタ−ギュ法律事務所のジョナサン・オ−アバッハ(Jonathan Auerbach)だが、彼は「電離放射線を巡って提訴された今回の訴訟の主眼は、昨年ドイツ政府が発表した報告書の直接の結果を実現することだ。そのことが訴訟に勝つ出発点だ。」とインタビュ−で語った。

□5kVの高出力レ−ダ−
 5kV以上という高出力レ−ダ−送信管からX線は出る。X線はシ−ルドが不十分である、と訴状は説明している。そして訴状はまた、「X線の有害性は兵士たちに知らされていなかったし、防護服も支給されなかった。レ−ダ−がフル稼働している時はメンテナンスは決まりきったこと以外はしなかった。」とも書いている。
 シ−ルドがされていない「クライストロン(速度変調管)マイクロ波管」から出るX線が健康にリスクがあることは10年前から知られていた。1960年にニュ−ヨ−ク州バファロ−の近くにあるロックポ−ト空軍基地で9人の技術者が高出力のFPS−7サ−チレ−ダ−の設置とテスト稼働でX線を浴び重い病気に罹った。

□ドイツ退役軍人はいつ被曝したか
 原告たちは1958年〜1994年に各地のレ−ダ−に従事していたことで被害に会ったと賠償を求めている。現在は集団訴訟となっているが、その前はテキサス州エルパソ近くのフォ−ト・ブリス(Fort Bliss)にある米独軍共同管理のレ−ダ−学校で訓練を受けた9人の退役軍人が原告であった。
 9人のうち5人は白血病・火膨れ・咽頭がん他の病気が進行した。残りの4人は健康だが医学調査をする金を支払えと要求した。

□約五百人の被害者
 約五百人のレ−ダ−従事者・技術者・機械工がX線や他の有害電磁波曝露で健康が害されたと信じている。そして「ドイツレ−ダ−被害支援連盟」も原告になっている。
 弁護団リ−ダ−のオ−アバッハ弁護士は米国やNATO(北太平洋条約機構)諸国の多くの軍人がレ−ダ−近くにいてX線を浴び、健康被害を受けていると考えている。インタ−ネットで被害を受けたと考える退役軍人は弁護士事務所と契約を結ぶようアドバイスている。
 1980年代のはじめ、米軍は白内障などの症状はレ−ダ−が原因だとレ−ダ−に従事していた人たちの訴えの多くを認め解決した。
 2002年9月、ドイツ連邦議会から委嘱され新設された委員会は、ドイツ放射線防護局責任者ヴォルフラム・ケ−ニッヒ(Wolfram Konig)の指揮の下、この問題について調査を開始した。

レ−ダ−訴訟の被告企業と製造レ−ダ−
企業名製造機種
ゼネラル・エルクトリックスAN/FPS−7
ハネウェル(ベンディックス)アジャックス・ヘラクレス
ITT産業/ITTギルフィランレ−ダ−・コンポ−ネント
ル−セント(ウェスタン・エレクトリック)ニッケ・アジャックス。ニッケ・ヘラクレス
レ−セオンホ−ク。パトリオット


電磁波問題市民研究会からのコメント:レ−ダ−技術を民生用に転化したのが電子レンジ。無線LANもその延長の技術。>


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