千葉県のJR四街道駅直近に東京電力変電所新設計画

□都心のベッドタウン・四街道市
 千葉県四街道市は千葉県千葉市に隣接する市です。JR総武本線の四街道駅は千葉駅から2つ目の駅で、千葉市に限らず東京のベッドタウンとして住宅開発が進んでいます。そのJR四街道駅の北口に近い一等地に東京電力が変電所の新設を計画しています。
 東京電力は新変電所計画について「四街道市は従来より都心のベッドタウンとして着実に開発が進み、その交通の利便性から、近年も住宅・マンション建設が着実に進められており、電力需要の過去平均伸び率は1.7%を示しております。中でも、JR四街道駅周辺は市の中心市街地を形成し、駅北側区画整理再開発等の進展により需要は顕著に増えてゆくものと思われます。現在、四街道市は四街道変電所[4万キロワット]・長沼変電所[5万5千キロワット]・若松台変電所[6万キロワット]より供給しております。今後の同地域の電力需要は、年1.0%と低く想定した場合でも、平成18年夏期には3変電所の供給力を超過し、電力が不足することが予想されます。この対策として、長期的な供給力並びに供給信頼度の確保が図れる『変電所の新設』を計画しました。」と計画バンフで述べています。


<東京電力が出した書類の内容(一部)>

新変電所の概要
○予定地:四街道市鹿渡934−33(中央保育所跡地)
○面積:約1600u
○供給能力:[当初]4万kVアンペア。[最終]6万kVアンペア
○電圧:高電圧側6万6千V。低電圧側6千6百V ○その他
・地域環境にマッチする概観とし、緑化を推進します。また機器類は遮蔽化し、周囲には外柵を設けます。
・騒音は規制値を十分にクリア−します。なお、振動規制法の対象となる機器類はありません。
・電源線の引き込みは地中ケ−ブルとします。

変電所建設における基本要素について
・変電所必要時期について
―需要の伸びにより決定します。
・変電所の位置の選定について(基本要素)
―電気をお送りする需要のほぼ中心であること
―変電所から引き出す配電線網(周辺変電所との連系)を有効に活用できること
―66kV電源送電線から近いこと(遠くから送電線を新設しなくて済むこと)
―面積600u以上の土地であること
―変電所機器類出入に必要な道路に面していること

この他に変電所の基本要素ではありませんが、変電所の建設を進めるための条件として〈変電所建設に伴う振動・騒音など地域環境への影響が少ないこと〉が挙げられます。


□基本要素に「安全性」がない
 上記の「変電所建設における基本要素について」を参照していただきたい。ここには電力会社側の都合しか書いてありません。住民が知りたいのは「変電所から電磁波は周辺にどの位出るのか」「地下ケ−ブルはどのような配置になっているのか。それは地表からどの程度の深さに埋設されているのか。そこから出る電磁波はどの程度か」「場所選定にあたって住民の声はどの程度反映されるのか」といったことです。こうした配慮がまったくない「建設の基本要素」とは一体なんでしょう。地域独占企業の電力会社の傲慢さの表れでしかありません。

<変電所建設予定地付近の地図>
<変電所のイメージ図>

電力会社の主張の問題点はどこにあるか


以下に電力会社の主張と問題点を列挙します。

[電力会社の主張]電力需要の過去平均伸び率は1.7%なので、このままでは電力不足になる。
[問題点]過去の平均伸び率が将来的にもそのまま右肩上がりで推移すると想定しているが、その根拠は甘い。それは(1)日本の長期にわたる不況は構造的なものであり過去のような成長はもはや期待できない、(2)今後本格的な少死化の反映で人口は減少期に入る、(3)電力の自由化が進み、いつまでも電力会社が電力を独占する時代ではない、(4)燃料電池の開発、各種自然エネルギ−(太陽光発電・風力発電等)開発で、エネルギ−源は多様化する(5)地球温暖化対策で省エネ化がさらにすすみ電力需要は減る、からだ。「電力不足」どころか「電力供給過剰」こそ問題になる時代がすぐそこにきている。

[電力会社の主張]変電所建設に伴う振動・騒音など地域環境への影響が少ない。
[問題点]地域環境でもっとも心配なのは電磁波の影響である。それに対する対策がまったくふれられていない。国立療養所下志津病院が隣接しているし、市立中央小学校の通学路だし、隣接する中央公園は市民の憩いの場所である。そうした地域環境への考慮がなく、電力会社の経済的、電力効率性といった企業エゴを前面に出した計画である。

[電力会社の主張]地域環境にマッチする概観とし化を推進している。機器類は遮蔽化し周囲には外柵を設ける。
[問題点]たしかに建屋の外観はクラシックで威圧感は減らしている努力は感じるが、問題は中身の電磁波対策である。「機器類は遮蔽化」しているというが、どのような電磁波軽減・漏洩防止対策をしているか、まったく説明されていない。一番大事な問題を説明せず、枝葉末節な事柄でお茶を濁すやりかたはフェアではない。

[電力会社の主張]電源線の引き込みは地中ケ−ブルとする。
[問題点]送電線の地中化は景観上の問題はクリア−するが、地表からどの位ケ−ブルを埋めているのかが問題である。地上送電線の場合はそれなりに高くするが、地中化は見えないだけに、地表近くに埋設化すればかえって電磁波漏洩は地上送電線より多くなる。また、どのような配線状態になっているか公表しないのは問題である。児童の通学路の真下を地下ケ−ブルが走っているのならば危険である。特に変電所から出ていく最初のケ−ブルは漏洩が大きいので要注意。

[電力会社の主張]WHO(世界保健機関は)は「50ガウス(5万ミリガウス)まで安全」と言っている。またICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)は「1ガウス(千ミリガウス)まで安全」と言っている。
[問題点]WHOが1987年に出した「クライテリア69」で50ガウスという数字を挙げているが、WHOの1996年に設立された「国際EMFプロジェクト」の最高責任者であるマイケル・レパチョリ博士(オ−ストラリア出身)は「クライテリア69で述べた50ガウスが単なる目安であり、いわゆる基準ではない」と言っている。1987年当時以後、様々な研究発表(たとえば1992年のカロリンスカ研究所疫学調査報告等)があり、「クライテリア69」では対応できなくなったとの認識から「国際EMFプロジェクト」がつくられたのである。またICNIRPは電磁波の熱作用を基にして1ガウスとしたのであり、現在国際的に論争している「電磁波の非熱作用」には対応していない。

[電力会社の主張]全米科学アカデミ−の見解は「電磁波の健康被害を科学的に証明する証拠は確認されていない」としている。
[問題点]1996年10月に全米科学アカデミ−内のNAS・NRC(研究評議会)が「居住環境における電磁波による健康への影響の可能性」という報告書を発表した。その結論は「電磁波の健康被害を科学的に証明する証拠は確認されなかった」であった。しかしこれはクロの証拠は確認されなかったと言っているのであり、シロ(安全性)の証拠もおなじように確認されなかったのである。むしろその報告書では、「小児白血病では1.5倍の増加を示している可能性」にふれている。つまり「可能性は示されているが、確固たる影響は確認されなかった」というものだ。1998年4月に発表されたICNIRPのガイドラインでは「全米科学アカデミ−研究評議会は、送電線周辺に住む子供たちは白血病発症リスクが高いようだ、と結論づけた」と記述しているほどだ。

[電力会社の主張]文部科学省の予算で実施した「全国疫学調査」内容は(1)症例数が少なすぎる、(2)交絡要因影響除去が不明、(3)症例対照例ともに当初予定を大幅に下回っている、等で健康リスク評価には不適切なので科学的価値は低い(評価は最低のオ−ルC)、という中間事後評価となった。すなわち電磁界の健康影響予測は「あいまいな調査結果」と結論づけている。
[問題点]3年間、7億2千万円かけた日本初の全国疫学調査の最終報告書は2003年3月に出た。結果は(1)調査規模は世界第3位、(2)1週間の連続測定期間は世界最長、(3)急性リンパ性小児白血病リスクは、4.73倍、小児脳腫瘍リスクは10.6倍で、ともに統計学的に有意である、といった具合に精緻な疫学調査だった。しかるに文部科学省は最終報告書が出る前の2003年1月に「中間事後評価報告書」を出し、「あいまいな調査結果だ」と意図的に捻じ曲げた“評価”をした。しかもいまだに海外論文発表もさせていない。

[電力会社の主張]計画策定については市民に事前ヒアリングは一切せず、東電内部で行なった。
[問題点]WHOの予防方策フレ−ムワ−クでは利害関係者の計画策定への参加を重視している。市民は当然利害関係者に入る。東電の公開度はゼロ。


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