<海外情報>

(抄訳:TOKAI)

携帯電話とガンの関係

英国放射線防護局プレスリリ−ス
2005年1月11日

 NRPB(英国放射線防護局)は携帯電話と健康に関する重要報告書を発表した。今回の見解は2000年に「英国携帯電話問題独立専門家委員会」(IEGMP 委員長ウィリアム・スチュワ−ト卿)が発表した報告書の最新情報による更新版である。結論の中心は、「携帯電話の使用による健康への一般的悪影響を示す確固たる証拠は現在までのところないが、不確実(灰色)な面も依然として存在する。したがってこの不確実な面がもっと明確になるまでは携帯電話の使用に関して予防方策(precautionary approach)が引き続き勧告される。

 予防方策の観点から報告書は次のような勧告を行なう。
●携帯電話の使用と中継基地局に関する最新かつ適切なすべての情報を市民(the public)が入手できるように改善がなされるべきだ。
●携帯電話中継基地局建設に関連する計画手続き(プロセス)は独立した検討に基づいてなされるべきだ。(訳注;独立とは企業の支配からの独立を含む)
●マイクロセル(訳注;駅やショッピングモ−ルのような通話の頻繁な所で通常の基地局を補完するサブ基地局)やピコセル(訳注;ビル内部のように基地局からの電波が弱くなる所で基地局を補完するサブ基地局でマイクロセルよりさらに小さなサブ基地局)に関する法的責任や規則についても明確化すべきだし、その配置に関する情報も市民が入手できるようにすべきだ。
●第3世代基地局による電磁波の被曝モニタ−(監視)についても、インタ−ネットで随時公開すべきだ。
●基地局周辺の立ち入り禁止ゾ−ンを明確に設定することを保障するための公的検査措置を設けること。
●各種携帯電話の熱吸収比値(SAR)の比較情報は、消費者が選択しやすいように事前に提供するようにすること。
●子供のような電磁波の影響を受けやすい人たちへの電磁波被曝を最小化するための最良方法を提供するよう特に留意すること。また無線波への感受性が特に強い人たちが存在する可能性があることを考慮することについても特に留意すること。
●携帯電話テクノロジ−の健康への影響に関する継続的な研究プログラムに大きな資金援助をすること。

 NRPBはまた、英国警察が使用するテクノロジ−を基にした「TETRA」の電磁波量(レベル)と生体影響についての知識を収集することが特に重要であるととらえている。さらに運転中の携帯電話使用の違反について、罰則点数を3点加点するとか罰金を60ポンド加金するといった罰則の強化を政府が実施することについてもNRPBは歓迎する。

 NRPBの最高責任者であるウィリアム・スチュワ−ト卿は次のようにコメントした。「携帯電話テクノロジ−についてのNRPBの主要なねらいは、一般市民の健康と幸福が携帯電話テクノロジ−によって悪影響を受けないようにすることにある。今日英国では5千万台以上の携帯電話が使われている。この数は10年前の450万台と比較しても大きいし、2000年と比べても2倍という数に達している。この事実は、携帯電話は企業活動や一般市民のの重要な通信手段としても、安全サ−ビスの面でも、 時としてファッションアクセサリ−としても、いまや日常生活の一部になっている。しかし、だれもが携帯電話を持っているからといって、そのことが必ずしも携帯電話が健康に有害ではないということを意味しない。」

 ウィリアム卿はさらにこうもコメントした。「携帯電話がこんなに普及したのは比較的最近のことだ。そして携帯電話の健康への悪影響は何年も携帯電話を人々が使ったころにあらわれるであろう。それが本当のところだ。まだ確信に至るに必要な証拠は集まっていない。いまの段階で言えることは、まだ一般市民に携帯電話の悪影響を示すはっきりした証拠は出ていないということだ。しかし不確実(灰色)な面がある以上、私たちは携帯電話技術(携帯本体と中継基地局)に対して予防方策を引き続きとるよう勧告する。この予防方策は、政府、携帯電話企業(メ−カ−とブロバイダ−)、携帯電話を購入する人すべて及びその家族や子供たち、すべてに適用されなければならない。」
<電磁波問題市民研究会からのコメント>
NRPBは英国内では権威ある機関である。2000年5月に政府から委嘱を受けた「携帯電話問題独立専門家委員会」(スチュワ−ト委員会)が欧州において携帯電話問題で火付け役を果たしたが、その後ウィリアム・スチュワ−ト卿はNRPBの最高責任者に就任し、今回の報告書発表に至った。今回のNRPB報告書は100ペ−ジを超す本格的なもので、これが今後イギリス政府及びイギリス社会にどのような影響を与えるか注目される。


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