<海外情報>

(抄訳:TOKAI)

高圧送電線の近くはやはり小児白血病多い

オックスフォ−ド大学ドレイパ−博士らの33年間約1万人対象疫学調査が発表される

Independent & Guardian
2005年6月3日

□200メートル以内で70%増加
 6月3日発行 British Medical Journal に、オックスフォ−ド大学の研究者が「高圧送電線の近くに住む子供は白血病発症率が高まる」という研究報告を発表した。
 それによると、送電線から600メートル以上離れた所に住む子供に比べて、200メートル以内に住む子供は小児白血病が70%も多く発症するという。また同じく送電線から600メートル以上離れて住む子供に比べて200〜600メートルの範囲に住む子供の小児白血病リスクは23%高かった。
 この研究は、1962年から1995年の33年間、イングランドとウェ−ルズの小児白血病患者9700人の住環境を調査したものだ。この研究をまとめるには8年要した。1950年代以来、英国内の高圧送電線網は4000マイルに拡大し電気を供給している。一般的な電圧は27万5千ボルトである。
 調査では、200メートルの住居で生まれ育った子は64人で、200〜600メートルの住居では258人である。送電線近くに住んでいる子の中で、1年につき5人が小児白血病に関係している。今回のオックスフォ−ド大学の研究グル−プ責任者である、ジェラルド・ドレイパ− (Gerald Draper) は「まだ科学的因果関係が確定した段階ではない」と語った。
 調査の初期段階では、高圧送電線は約60メートルの範囲まで弱い磁場を周辺に出している ことがわかった。その値は地球磁場の約1%だ。しかしそのデ−タからすると、送電線から200メートル離れた所に住む子供が送電線直下に住む子と同じようにリスクが生じることについてうまく説明できない。
 ドレイパ−博士は「送電線だけの影響ではなく、送電線がある地域と関係する何かが関係しているのかもしれない。あるいはどんな人がそうした地域に住んでいるのかということも関係しているかもしれない」と語った。

□600m以内に住む人は人口の4%
 送電線から600m以内に住む人はイングランドとウェ−ルズ全体の約4%である。
 「全国送電線網公社トランスコ」の科学アドバイザ−で今回の調査に参加し報告書の執筆にも関わったジョン・スワンソン(John Swanson)は「なにかが起こっているという証拠が強まった。しかし、なにかが関係しているとしても、なぜそれが関係しているのかはまったくわからない」と語った。
 ある仮説だと、大気中の汚染物が送電線の周辺に集まる。送電線周辺がマイナス電荷状態になるので汚染物が吸い寄せられるからだ。その汚染物が肺に溜まり、健康被害を引き起こすというのがその説だ。
 ドレイパ−博士は1997年に研究を開始したが、研究は完成しなかった。理由は、送電線によってできる磁場の測定をしなかったのと、送電線以外の電磁波発生源との比較をしなかったためだ。
 ドレイパ−博士は「私たちは環境市民団体から“研究結果を発表しようとしていない”と糾弾されたのと、昨年、研究結果の一部がリ−クされたため、今回結果発表を早めることにした」と語った。British Medical Journal の論説では次のように示している。「英国に張り巡らされている4500マイルに及ぶ送電線から出る磁場は弱い。その値は、私たちがいつも浴びている地球磁場の1%程度の量でしかない。だから、そんな磁場が白血病を引き起こすとしたら驚きである。」


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