高さ610メートルの新タワー建設は問題が多い

住民の声や電磁波健康問題に対する配慮はまったくなし

□2006年3月31日に決定
 在東京放送事業者6社(NHKと在東京民放5社)は3月31日、新東京タワ−を墨田区の押上・業平橋地区に建設することを最終決定した。
 新東京タワ−は、高さ610m、総事業費500億円で、2008年に工事着工し、2011年竣工を予定している。事業主体は東武鉄道で同社が中心となって新会社を設立して事業を推進する。すでに墨田区(山崎区長)は2006年度区一般会計予算で「新タワ−関連費」として約4000万円を計上している。

□本質的問題点はなにもクリアしていない
 今回の「決定」ははじめから“できレ−ス”で、新タワ−が抱えている本質的な問題点はなに一つクリアしていない見切り発車である。
 第1に、2011年の「地上デジタルテレビ放送」全面移行はいまだに国民的コンセンサスを得ていない。第2に、強力なデジタルマイクロ波による周辺住民への健康影響に関するアセスメントが全くなされていない。第3に、高さ610mの巨大タワ−は住民の景観を破壊する。第4に、本当にデジタル化に新タワ−は必要なのかの十分な説明はない。第5に、周辺住民の声は取り上げようともしていない。
 こんな計画はまったく支持できない。

□「時代おくれ」の新タワ−構想
 国土交通省はこのたび、「これまでの河川のコンクリ−ト3面張りと直線化」方針を改め、河川の自然化をめざすため、河川の両側と底面の3面を覆ったコンクリ−トを剥がし土に戻し、河川を蛇行状態に戻し氾濫させることにした。自然な状態が正常で、人工的な改造は誤りだということに気付いたのである。
 1960年代までの「高度経済成長政策」が公害やひずみを生み、生態系を壊し、環境破壊を推し進めてきたことは今日では明らかになっている。「東京タワ−」はその高度経済成長政策の象徴と言っても言い。しかし当時はそれが「時代の流れ」であったのも事実だ。
 しかし「21世紀は環境の世紀」である。こんな時代に610mの巨大タワ−を造ろうという時代感覚にまず驚く。

□「地デジ」は供給経済の“あだ花”
 5年後の2011年から「古いアナログ型テレビは映らなくなる」。地上デジタルテレビ放送(地デジ)に1本化しようと総務省が画策しているからだ。2011年以後は地上テジタル対応テレビか専用デジタルチュ−ナ−を買わなければテレビは見られなくなる。昨年(2005年)3月、総務省が全国約4000人を対象にした調査では2011年にアナログ波が停止されることを知る人は、わずか9.2%しかいなかった。
 レコ−ド市場が飽和になると強引にCDに切り替え新しい市場を開拓して売ろうとする。この方法と同じ方法で強引にテレビ市場を開拓しようというのが「地デジ」政策だ。このやり方は「実用主義」のフォ−ドに対抗し、自動車のマイナ−チェンジを施し「目先の新しさで消費者の購買意欲を駆り立てる」GM方式が編み出した方法の系譜に属する。消費者が必要だから商品を買うのでなく、企業側(供給側)が「消費者を煽り、買わせる」のである。その際の武器がコマ−シャルである。
 まだ使える車なのに4〜5年で「新車に買い替えさせよう」とマイナ−チェンジを行い「古い車」にさせてしまうのである。取りたてがあこぎなサラ金を、タレント使って「きれいで、親切な社員のいる会社」と思わせるのやり方と同根である。
 娯楽をテレビに依存する割合は、低所得層ほど高いという。地デジ対応テレビを購入できない人たちが1割か2割いても、強引にデジタル化に切り替えてしまい、ある日突然テレビが映らなくなる事態になった時、その人たちはどう思うであろうか。テレビはアナログ型でも十分なのに。
 新東京タワ−はその地デジ化の先兵なのである。

□デジタル波はアナログ波より有害なのに
 そしてなによりも、デジタルマイクロ波はアナログマイクロ波より人体への影響度が高いと言われていることだ。これは正弦波のアナログ波と違い、デジタル波は歯型のようなパルス波であることが関係していると見られている。
 こうしたデジタル波を24時間浴びることによる人体への影響は「未知な領域」であり心配である。
 ホッキング論文で、アナログ波でもテレビ波・ラジオ波はリスクありとされているが、ホッキング疫学調査の対象はシドニ−郊外のテレビ塔・FM塔で、東京タワ−の10分の1の出力だ。これからしても、新東京タワ−の人体への影響は懸念される。

□「考える会」と共に取り組む
 「新東京タワ−(すみだタワ−)を考える会」は文字どおり「考える会」で、明確に反対の立場ではない。ともかく、問題点は洗い出し整理していくことを基本にしている。
 今後、「考える会」は東武鉄道・墨田区・総務省・テレビ局等と交渉し、問題点を明確にしていく作業を行なっていくつもりである。


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