岩手県奥州市で保育所移転予定地が高圧送電線により変更

□園舎の老朽化による移転予定地に送電線
 岩手県奥州市は、旧水沢市・旧江刺市等が合併した人口約13万人の市であり、江刺区にある保育所(園児45人定員)が、老朽化に伴い移転し園舎を新築しようとしたところ、保護者や地域団体から待ったがかかった。その理由は、移転予定地に高圧送電線が走っていたからだ。

□WHOの環境保健基準発表で状況一変
 当初、市当局は日本に磁場規制はないので健康問題は心配ないと考えていたが、2007年6月にWHO(世界保健機関)がEHC(環境保健基準)を発表し、0.3〜0.4マイクロテスラで小児白血病発症リスクが2倍という疫学調査を支持したことで、状況は変わった。岩手県の地方紙は、この発表を1面トップで報じたため、保護者も関心を持った。
 面積が約6100平方メートルの予定敷地で市が調査したら、敷地の約3分の1で0.4マイクロテスラ(4ミリガウス)以上あることが判明した。
 保育所保護者会の会長は「不安が払拭できない以上、変更してほしい」と語り、地域振興会の会長も「住民の安全安心を確保する意味から、小さなリスクでも回避すべきだ」と語った。

□2007年9月に変更を決める
 2007年9月13日に、市当局は「電磁波による健康被害への住民不安に配慮し」、保育所の移転用地の変更を決めた。
 2007年6月18日発表された、WHO・EHCの効果が早くも表れた実例である。


<電磁波問題市民研究会の解説>
奥州市が環境省に照会したところ「電磁波は特に問題ない」との答が返ってきた。市当局は、国が明確な基準を示していない中で、市単独で危険と判断することはできないが、住民感情を配慮して対応した。評価できる対応だ。市長も「住民の気持に対応した結果である」と語っている。国は逃げ腰だが、住民の力に依拠すれば展望は開かれることが示された。


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