<海外情報>

インターフォン計画の概要

<総説>
インタ−フォン研究(INTERPHONE STUDY)とは、携帯電話使用と脳腫瘍発生リスクの関係を調査する国際研究です。日本語のインタ−フォンの意味と違い、この場合は携帯電話に関わる国際的なといった意味です。資金提供者はEU(欧州連合)と13ヵ国の携帯電話産業および政府、です。コ−ディネ−タ−(調整役)はWHO(世界保健機関)の研究機関であるIARC(国際がん研究機関)であり、この問題に関する最大規模の研究計画です。
 4タイプの脳腫瘍患者6500人を研究対象としています。4つのタイプとは、(1)髄膜腫(tumours of meninges)、(2)脳細胞腫(tumours of the brain tissue)、(3)聴神経腫(tumours of the acoustic nerve)、(4)耳下腺腫(tumours of the parotid gland)です。
 実施する疫学調査方法は症例対照研究であり、症例(患者)と非患者である対照(コントロ−ル)を同数選び、比較するという手法です。具体的には、携帯電話を使用して脳腫瘍を発症した患者と、携帯電話を使用したが脳腫瘍を発症していない人(対照)を同数比較し、脳腫瘍発症について携帯電話使用がどう影響するのかしないのかを研究する調査です。その場合、患者とコントロ−ルは、同性別同年令同タイプの腫瘍といった具合に、比較対称しやすいように条件をなるべく合わせます。このようにして、携帯電話をどの程度使うと、どのような脳腫瘍が、どの程度の確率で発症するのかを解明しようというのが、インタ−フォン計画のねらいです。

<到達度>
 これまでのところ、参加13ヵ国(英・仏・独・日・伊・加・豪・デンマ−ク・スウェ−デン・フィンランド・ノルウェ−・ニュ−ジ−ランド・イスラエル)の、それぞれの国内研究結果は発表されています。それらから導きだされた暫定的な研究結果は次のとおりです。
(1)プ−ル分析以外のすべての研究を総合的に分析すると、携帯電話を使うと腫瘍リスクは増加するとまではいえない。
(2)10年未満の携帯電話使用では、腫瘍リスクは増加していない。
(3)10年以上といった長期間の携帯電話使用では、聴神経腫あるいは脳細胞腫リスクが増大する可能性(may increase)がある。しかし、長期間使用者数は比較的に少ないので統計的には結論に達していない。実際に説得力のある結論は、比較的に多くの症例を集めたプ−ル分析結果が発表された時に導きだされる。
(4)同様なことは、頭部側面に関する分析結果でも言える。頭部側面分析とは、携帯電話を通常使用する頭部の側と腫瘍の位置を比較する分析である。国別研究では、携帯電話を通常使う側は使わない側に比べてリスクはより高くなる。しかしほとんどの研究結果は統計的に有意でない。結論はプ−ル分析結果が出るまでははっきりしないであろう。
(5)悪性の耳下腺腫を発症した携帯電話使用者研究は、対象数が少ないことがネックとなっている。

<研究資金>
 インタ−フォン研究予算は、総額で700万ユ−ロ(約10億円)以上です。負担分としては、EUが385万ユ−ロ、携帯電話産業界が350万ユ−ロ、残りを参加国の保健関係機関が提供しています。

<腫瘍患者数>
 4腫瘍タイプ別患者数は、(1)脳細胞腫(glioma)患者が2800人、(2)髄膜腫患者が2400人、(3)聴神経腫患者が1100人、(4)悪性耳下腺患者が100人です。それぞれのタイプに対応するコントロ−ル(対照)として、あらかじめ用意された8000人の中から、同数の同年令同性同地域の人を選択しました。

<問題点>
 インタ−フォン研究は、携帯電話の通常使用者を電磁波曝露群と区分していますが、この通常使用とは、1週間のうち少なくても1回は携帯電話を使用し、かつ半年以上使用を意味します。これより使用頻度が低い人や携帯電話を全く使用しない人を電磁波非曝露群と区分します。ここで疑問なのは、1週間のうち少なくても1回しか携帯電話を使用していない人を曝露群に算入すれば、リスクは出にくくなります。携帯電話の普及程度から見て、曝露群とは、少なくても1日1回使用以上とすべきです。  次に、コ−ドレス電話使用者を非曝露群」に算入しています。しかし、コ−ドレス電話はPHSと原理が同じであり、コ−ドレス電話で神経膠腫や髄膜腫の発症リスクが増加するという研究結果もあります。コ−ドレス電話を非曝露群に算入すればリスクは過小評価されてしまいます。
 さらに、日本の研究は10年以上使用者は一人しか対象者がいません。これではリスクは過小評価されてしまいます。

<電磁波問題市民研究会のコメント>
 インタ−フォン研究に参加した、13ヵ国の各国研究結果はすべて出揃いました。あとは、各国研究結果を基にしたプ−ル分析のみです。
 当初は2009年に発表と言われていましたが、2010年2月に至るも出ていません。携帯電話業界の暗躍による激しいロビ−活動が、水面下であるのかもしれません。インタ−フォン研究結果は、2013年のWHO高周波環境保健基準に大きく影響しますので、考えられないことでないと思います。
 携帯電話を長期間使用した場合に、携帯電話使用側の頭部に脳腫瘍ができやすいというのは、今回の各国政府研究結果から推測されます。
 インタ−フォン研究の一環とされた日本の研究が、10年以上使用者を一人しか調査しなかったのは、研究を実行した機関の企業寄り体質を物語っています。しかし、日本の研究を詳細に検討すると、影響ありというのが見えてきます。それなのに、総論として携帯電話と脳腫瘍に関連はないというのが、日本の研究の見解となっています。


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