<海外情報>
ロイド・モ−ガン博士による鋭い批判

インタ−フォン研究は欠陥あり

 電磁波研会報64号でインタ−フォン研究(脳腫瘍と携帯電話の関係をみる国際疫学調査)の内容を紹介しましたが、結論は、リスクありとも問題ないともとれる、あいまいなものでした。インタ−フォン研究については、資金を提供した携帯電話業界から、猛烈なロビ−活動があったことは知られていますが、はじめからリスクを少なく見せる方向に、『国際疫学ジャ−ナル』の執筆者が努力していたという批判がいくつも出ています。その一つとして、米研究機関「環境健康トラスト」のロイド・モ−ガン博士の見解を紹介します。同博士は、報告「携帯電話と脳腫瘍:懸念すべき15の理由」のチ−フ執筆者です。
□有毒物は10年経て影響が現われる
 今回のインタ−フォン研究は、携帯電話による脳腫瘍のリスクに関して信用できない欠陥を含んでいると私は批判している。つまり、インタ−フォン研究には、リスクを過小評価するような設計上の欠陥が11もある。それにもかかわらず『国際疫学ジャ−ナル』に発表された研究内容によると、10年間携帯電話を使うと、統計学的に有意に脳腫瘍リスクが増加するとしている。このことは不吉な前兆を示している。なぜならば、有毒物による腫瘍リスクが現われるのに10年を要するが、私たちも腫瘍リスクが出るのはちょうど10年だと見ているからだ。

□なぜ聴神経腫と耳下腺腫がないのか
 インタ−フォン研究における携帯電話使用年数は、大人も子どももそれほど多くはない。今回の研究結果報告では、結局のところ、携帯電話を当てている耳に一番近い腫瘍である聴神経腫や耳下腺腫について未発表だったことに何に説明もなかった。

□なぜコ−ドレス電話を無視するのか
 インタ−フォン研究には、207件の安全結果と29件のリスク結果が報告されている。
 選択バイアスは、リスク評価の上で10%の過小評価に相当する。インタ−フォン研究では、コ−ドレス電話を非曝露群に入れることで、電磁波リスクとしては無視したが、コ−ドレス電話は排除すると、選択バイアスよりも腫瘍リスクの軽視への寄与は大きい。
 (企業や行政から)独立した研究は、コ−ドレス電話は携帯電話同様、がんの原因になるとしている。

□なぜ4年も発表が遅れたのか
 インタ−フォン研究の設計(デザイン)は公表されていない。インタ−フォン研究は、13ヵ国すべての研究結果が発表されてから、4年も発表が遅れた状況を説明すべきである。今回発表された報告には聴神経腫に関わるデ−タは入っていない。すぐに聴神経腫の研究結果を公表すべきだ。

□出力が大きく若い人ほどリスクは高まる
 携帯電話は使い始めてからの使用年数が長ければ長いほど、脳腫瘍リスクは高くなる。出力が大きければ電磁波曝露量が多くなるので、出力が大きければ大きいほど、脳腫瘍リスクは高くなる。携帯電話を使い始めた年令が若ければ若いほど、脳腫瘍リスクは高くなる。携帯電話を10代とか若いうちに使うと、リスクは420%増加する。
 業界が行なった研究には、脳腫瘍が全く含まれていないし、脳腫瘍で死んだ人も含まれていない。コ−ドレス電話が原因の脳腫瘍と、携帯電話が原因の脳腫瘍とは関係がないとしている。

□デ−タはすべての研究者に公表すべき
「携帯電話から出る放射線は脳腫瘍の原因にならないのか?」
「すべてのデ−タは、13ヵ国の研究発表が終わった2004年以降利用可能なはずだ。それなのに発表されていない」
「独立した研究者にデ−タを発表すべき段階にきている」
「携帯電話と脳腫瘍の関係には、15の懸念すべき理由がある」
「携帯電話は脳腫瘍の原因になっている」
「携帯電話産業は次のように言う。『証拠の主流は、携帯電話を使用してもリスクはない、ことを示している』」
「携帯電話の使用通算時間が長ければ長いほど、脳腫瘍リスクは高くなる」

□インタ−フォン研究はフェアではない
 インタ−フォン研究は1999年〜2004年にかけて実施された。要した経費は3000万ドル。13ヵ国の48人の科学者と14000人が参加した研究だ。このインタ−フォン研究について、EU議会は、発表が遅滞していることは嘆かわしいと言っていた。
 電磁波問題に関わる活動家や独立した研究者はインタ−フォン研究の在り方に憤慨している。研究と実験に方法に疑問点があるからだ。インタ−フォン研究は欠陥がある。

□多くの科学者が同意見である
 脳腫瘍と白血病が電磁波との関係で有意にリスクを示すことは、米電力研究所の研究を調べればすぐに見つかる。生体電磁気学会、神経腫瘍学会、米環境医学会、英国疫学協会等の研究でも同様に見つかる。

ロイド・モ−ガン(米国)
エリザベス・バリス(米国)
ジャネット・ニュ−トン(米国)
アイリ−ン・オコ−ナ−(英国)
アラスデア・フィリップス(英国)
グラハム・フィリップス(英国)
カミ−ル・リ−(米国)
ブライアン・スタイン(英国)
(Interphone Study Design Flaws on Vimeo)

<電磁波問題市民研究会のコメント>
2010年5月17日に、『国際疫学ジャ−ナル』に発表されたインタ−フォン研究は、やはり不可解な内容である。まず、各国発表後に4年も置いた理由が不明な点だ。なんとかリスクが出ないように苦心していたという批判が当たっているように思われる。このことは、曝露群にコ−ドレス電話の利用者を入れなかったこと、さらに、1週間に1回以上の使用を曝露群に入れたことで容易に出てくる。常識的に考えれば、コ−ドレス電話は曝露群に入れるべきだし、せめて、1日1回以上が曝露群の最低条件であろう。ヘビ−ユ−ザ−を1日30分以上使用者としているが、ヘビ−ユ−ザ−というのならば、1日に2時間以上ではないだろうか。このようにおかしな設定をするから、携帯電話を使うと使わない人よりリスクが低下する(ケ−タイ使うと脳腫瘍にならなくなる)というような、変な結果が出てくるのだ。聴神経腫と耳下腺腫を発表した、独立科学者にデ−タを渡すことが必要だ。


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