電力過剰消費社会が原子力発電を生んだ

 1980年の年間発電電力量は4850億kWhに対し、2009年は10003億kWhで、この30年で発電電力量は2倍以上増加しています。一方、日本の人口は同じ30年で10%しか増えていません。これからは人口は減少を見込まれているにもかかわらず、2014年の推計では発電電力量は増加すると見ているのです。

 人口はそれほど増えないにもかかわらず、どうして発電電力量は2倍にも増えてきたのでしょうか、さらに今後も増えると見ていたのでしょうか。そこに問題の本質があります。つぎのような面白い話があります。ある大手ゼネコンの社員がこう言いました。「新しいビルを建てる際、電力を多く消費する設計でないと東電からクレームがつく」。言い換えれば、コンピュータにしても空調にしても照明にしても、24時間フル稼働するようなビルを作れと東電から圧力がかかるというのです。

 このような社会情勢が、人口は10%増電力消費は2倍という事態をもたらしたのです。電気のこぎりでバターを切るような生活は、電力会社の戦略だったのです。1980年といえば、そんな昔ではなく、その時代程度の暮らしなら、私たちは文化的な生活を享受できるはずです。原発がなかったら不便な生活を強いられると、九州電力はやらせメールをさせましたが、こんなデマに惑わされてはいけません。

 『週刊現代5月7日・14日号』には、一般家庭の消費電力(一日当たり)の目安の表が掲載されていました。それによると、消費電力の1位は3000WのIHクッキングヒーターで、2位と3位が温水洗浄便座とオープンレンジの1300Wでした。ただし、消費電力量は、使用時間の長いエアコンでが最高で13kWhです。

 いずれにしても、オール電化は過剰電力消費社会の代表であることがわかります。大地震と原発事故で、エネルギーの多様性の大事さを私たちは学びました。一つのエネルギー源に頼るのはやめるべきです。高層マンションやオール電化、特にIHクッキングヒーターにたよる将来は明るくありません。


会報第71号インデックスページに戻る