<電磁波私考>

電気と電波と電磁波と放射線、日常よく耳にするこれらの単語、皆さんはどこがどう違うかお分かりだろうか。私もすっかりごちゃごちゃになってしまった。私は文科出の一作家にすぎないながら、電波人間の修羅場をくぐりぬけて爾来十七年。もっと一般的、勉強的に、人間は電磁波の概念の何に苦しんできたのか、何度纏(まと)めても纏めすぎることはないので以下に纏めておく。

全ての最上位概念は、実に放射線である。あらゆる放射線は光や電波をふくめ秒速30万キロメートル(の波長と周波数ヘルツ)で空間を伝わっていく。放射線は周波数(一秒間の波の数)の大きいものから順に並べると;
(1)ガンマ線
(2)エックス線
(3)光(=紫外線+可視光線+赤外線)
(4)電波(光以下。=サブミリ波+マイクロ波+ラジオ波+……)
となる。

この順番はエネルギィの大きさの順番でもあって、原爆は猛烈な熱と同時に周波数のけたはずれに大きいガンマ線を出す。放射線が空気中や物質(身体)を通ると、通ったあとの空気や物質は電離作用によって電気を帯びる。さて電気(プラスとマイナス)の中には必ず電波(電磁波)がある。電気のあるところには常に電場と磁場があるが、電場は防げても磁場を防ぐことはできない。そして電磁波は、ふつう電波と同じだと考えていいという。

以上、主に平澤正夫の著書「電磁波安全論にだまされるな」(洋泉社97年刊)の第2章1節から纏めてみた。さらに具体的にいうならば、携帯電話やトランシーバーや通信衛星などの無線方面はマイクロ波(高周波)を出し、テレビや家電製品など電力会社の有線方面は商業周波(極低周波)といわれるものを出すのである。

せっかくきれいに纏めたのにまた掻きまわすようだが、放射線の境界融通について東大の高エネルギィ加速器研究機構の資料からすこし見ておく。代表的なものはアルファ線、ベータ線、ガンマ線だが、これらはラジオアイソトープ(放射性同位元素)を線源とし、なかでもベータ線の実体はマイナス電子、ガンマ線やエックス線の実体は電磁波の一種と現在ではいわれている。上記は電離する能力をもつ電離放射線だが、可視光線や赤外線や電子レンジはほとんど電離をおこさない非電離放射線である。なおアルファ線は実体が中性子2個陽子2個から成ってヘリウム原子核と同じであり、透過力が弱く空気中で数センチしか飛ばないが、人の中で体内被曝を起こすと莫大な電離励起の害悪が起こるといわれている。

被曝の観点からみると、医療用放射線と自然放射線による被曝が大きいウェイトを占めるが、自然、というその内訳は次の通りである。地球には太陽や宇宙から光や電波やいろいろな放射線が飛んでくるが、これらの放射線は別名「一次宇宙線」といわれる。その大部分は高速の陽子線である。これらが地球の大気圏の窒素や酸素と衝突すると原子核、電子、ガンマ線、中性子、中間子といった放射線になるが、これを「二次宇宙線」といい、私たちが直接あびているのはこれである。また大地に含まれる自然の放射性同位元素(金属、非金属)からも放射線が出される。地球は自らの地磁気と共に、そういう大気にどんよりくるまれてむしむししている。

このように大気そのものが電気的であり、そこに住み暮らしている私たちも脳波、心拍、その他の生体電気を有した電気的生き物だ。脳波の周波数は自然界のそれと同じアルファ線、ベータ線、その他の線であり、人は自ずから天然の(または被曝後の)放射線を生成放射している。そして生体電気の内訳は極低周波電磁波である。深海に太陽光は届かなくともこれなら届くという極低周波だ。

問題は外界からの変調介入であり、体内への侵入被曝である。近年とみに家電製品にまみれて通信電波を飛ばし、さらには法外な放射線療法をするので、私たちの被曝は日常茶飯事になってしまった。人の頭や体のなかの電線のめぐらし具合と似て、街や家のなかの光ファイバーケーブルは何で出来てどういう放射線を出すのか、ほかの電線はどうか。有線も無線も大気とくるめつつ考えてみたい。そして被曝してのち電波人間に変異したあとの、その後のサバイバルについて考えてみたい。


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