私はこうして携帯電話基地局計画を中止させました

困難な時期もありましたが、あきらめず取組んだことが功を奏しました

 平凡な専業主婦の私が、マンション屋上携帯電話基地局設置計画を中止にするまでの道のりをお話したいと思います。

□一度否決された設置案が総会で可決へ
 今年2月、私の住むマンション(約100戸の大型マンション)の臨時総会で、屋上基地局設置計画が理事会から提案されました。その時は反対が16世帯で否決となりました。ところが、その2ヵ月あとの4月に行なわれた定期総会で、理事会はまったく同じ内容の提案をしてきました。一度目の臨時総会は基地局設置計画だけを審議する場でしたが、定期総会は審議案件が多く委任状がほとんどな状態で、あまり論議もなく理事会提案は可決されました。納得がいきませんでしたが、設置工事は6月か7月には始まることになりました。

□やはり納得いかない、と立ち上がる
 しばらくの間は、すでに決まったことだからと諦めていたのですが、5月中旬、インタ−ネットで電磁波問題市民研究会の存在を知り、勇気を出して、「どうしたら良いのでしょう?」とメ−ルを送ったのだ始まりです。
 早速、翌日、電磁波問題市民研究会・事務局長さんと直接会って、相談させて頂きました。すると「マンション住民に呼びかけて、反対運動を起こしなさい。まずはビラを作り、住民に配り、勉強会を開いて、反対住民を増やすことだ」と教えて頂いたものの、正直、私にはそんな事できるはずがない・・・と戸惑いました。
 しかし幸運なことに、さらに翌日、ちょうど高田馬場で電磁波問題市民研究会の定例会があるというので、怪しい宗教団体だったらどうしよう・・・と不安を抱きつつ参加させて頂きました。(すみません!!)。そこで初めて、電磁波過敏症の方々のお話を直接聞かせて頂き、今までインタ−ネットの中だけの知識しか持っていなかった私は衝撃を受けました。目に見えない電磁波の危険について、実感が全くなかったのですが、いっぺんに考えが変わり、私たちのマンションに基地局を建てさせたら大変なことになる何とかせねば、と実行することにしたのです。
 まずはビラ作り。定例会に参加していて携帯基地局の反対運動をすでに行なっていた方が、ありがたいことに資料をたくさん送ってくれたので、参考にさせて頂きました。もちろん、電磁波問題市民研究会・事務局長さんの著書も。

□ここで問題発生、でも引き下がらない
 早ければ6月から工事が始まってしまうので急ぎましたが、ここで問題発生。主人は、私が基地局反対運動を始めることに猛反対だったのです。「35年ロ−ンでやっと購入したマンションで、余計な行動をして、今後、住みづらくなったらどうするんだ!」と。在宅時間が長い私を守りたいという主人の気持ちは良く分かります。しかし、電磁波問題市民研究会定例会で基地局や電磁波の恐さをさらに知った私は、何も行動を起こさず、基地局が建ってしまった方が、もっとす住みづらくなる!、と引き下がりませんでした。
 基地局のメリットは、KDDIからの月15万円という収入が100世帯のマンション修繕積立金の足しになることのみです。私は、そのメリットよりデメリットの方がはるかに大きい、という内容から説明すれば分かりやすいのでは、と考えながらビラを作りました。完成した原稿は、電磁波問題市民研究会・事務局長さんに添削して頂いて仕上げました。しかし、ここで2つ目の問題発生。主人が反対しているので、ビラには自分の名前は書かず、住民ポストに投函しようと思っていたのですが、電磁波問題市民研究会・事務局長さんから、名前を書かなければただの怪文書です、と注意されました。確かにその通りです。ポストに匿名のビラが入っていたら、私でも怪しいと思って、読まずに捨ててしまうでしょう。そして、資料を送ってくださった方からのアドバイスもあり、名前を書いて、一軒一軒手渡ししながら説明して回ろう、と決心しました。
 すごくドキドキしながら玄関チャイムを鳴らしても、土曜日の昼間はお留守ばかりだし、ちょうど廊下ですれ違った奥様に、初めてビラを渡し、手短に説明すると、うちは基本的に賛成よとそっけなく言われかなり落ち込みました。
 しばらく家に引きこもり、夕方また気合いを入れて伺ったお宅が、当初から総会で反対していたご主人様でした。私の活動に賛同してくれて「自分も諦めていたが、できることをやってみましょう」と、何軒か一緒にまわってくれて、とても心強かったです。
 とりあえず、全世帯の5分の1以上の住民署名があれば、臨時総会で再決議ができると聞いていたので、まずは20世帯集めようと頑張りました。途中、何度も挫折して、引きこもりましたが、当初、賛成と言っていた奥様が、私のビラを読んだ後日、「やっぱり反対したいわ」と来てくれたり、「頑張ってください」と声をかけてくれる奥様が増えて、励みになりました。そして何と言っても、猛反対していた主人も応援を始めてくれたのです。

□しかし4分の3以上必要と言われ
 ところが、今度は3つ目の大きな問題が発生しました。活動開始してから約1週間経った5月も終わる頃、20世帯の反対署名が集まったので、管理会社や理事会に臨時総会を開いてほしいと申し出ると、いくら臨時総会開いても、4分の3世帯以上以上の賛成により(賛成11名、委任状68名=委任状は全て賛成とみなす)総会で可決された案件は、逆に反対することに賛成の者が4分の3以上いないと有効ではない。だから、20世帯の署名ぐらいでは、このまま工事は始めることになると言われました。決議を白紙に戻して、もう一度やり直ししたらどうかと聞くと、管理規約で決まっているのでの一点張り。
 共働きが多く、何度伺っても留守の家庭が多く、まだ全世帯の半分の方にしか説明できていません。理事会メンバ−11名は全て賛成派だし、賃貸で住まわれている方も約10世帯いるらしく、臨時総会ではあくまで賃貸オ−ナ−の票が必要です。それを除いた、79世帯のほぼ全員を基地局反対にさせるのは私には無理かも、と自信を無くしました。管理会社や理事会のやり方が合法かどうか、2箇所のNPO管理組合連合会と弁護士に確認しましたが、3者とも、理事会の運営は良くないが、残念ながら合法であり、75世帯以上の反対派を集める以外ないですねとのこと。さすがに、この時は何日間か家に引きこもり、しまいには、気晴らしで旅行に出かけてしまいました。

□捨てる神あれば拾う神あり
 しかし、なんと空白(気晴らし旅行中)の6日間で、さらに反対署名がポストに入っていて、合計35世帯になっていました。驚きと嬉しさで、またやる気が出て、諦めずに75世帯以上の反対派を集めようと決心しました。その頃には、コンビニでコピ−を手伝ってくれたり、一緒に回ってくれる奥様や中学生の女の子がいてくれたので、心強くなり、理事会メンバ−のお宅も伺いました。
 理事会の人たちは、私が理事会メンバ−以外の住民全員のポストにビラと署名用紙を投函した結果、20軒のみの反対署名だけが集まり臨時総会を要求している、と思っていたようで、4分の3(75世帯)は集まるはずがないと、タカをくくっていたのではないでしょうか。実際は、私が一軒一軒手渡しで、全世帯の半分位しか伺っていないにもかかわらず、理事会の人に伺った時点で、44世帯の署名が集まっていたのです。この事実を知って、理事会の人たちは、半分の住民が反対しているのに、基地局を建てたら今後問題になるのではと慌てた様子でした。

□「相談がある」と理事会側から打診
 そんな中、臨時総会を開く予定で動いていた(臨時総会開催自体は5分の1以上の要求で開催せねばならないので)理事会が、今後の展開を相談をしたいと私を呼び出しました。私一人では心細かったので、反対の方3名を誘い、理事会側と話し合いをしました。この話し合いの時点で、署名は51世帯分集まっていましたので、その場で提出しました。
 すると理事長は、「当マンションの設計士が基地局設置に関する構造計算を断ったので、基地局建設は難しくなった。その上反対住民が約半分いるので、臨時総会は開かずに、建てない方向で決定したいのですが、どうでしょうか?」と言うのです。急に話が変わり、びっくりしました。幸い、基地局建設工事が始まる前だったので、KDDIも「半数の住民が反対しているのなら、建てたくない」とあっさり引き下がったというのです。理由はともあれ、基地局は建たないことに決定しました。

□後悔しないようやって良かった
 負け惜しみで、KDDIは近くで設置場所を探しますと言ったそうなので、まだ100%の安心はできませんが、とりあえずこれで私の引きこもりは治りそうです。
 今回の活動を通じて、多くの勉強をさせて頂きましたし、多くの住民の方とお友達になれました。事務局長さんをはじめ、貴重な資料を送ってくださった方、電磁波問題市民研究会の皆様、本当にありがとうございました。
 現在、電磁波で悩んでいて諦めている方がもしいれば、勇気を持って何か行動を始めてほしいと思います。こんな私でも皆さんのおかげで、諦めずに、できることを後悔しないようやってみようと、頑張れたのですから。


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