ソフトバンク基地局建設に対する取り組み

 栃木県大田原市で建設が進められていたソフトバンク電波塔(基地局)に対する取組みの報告です。

2011年1月28日正午前
 留守中にソフトバンクの下請け業者“きんでん“の担当者が我が家を訪問し、A4資料を4枚置いていった。

2011年1月28日夕方
 私は帰宅してそのことを知った。その資料を見ると、あたかも建設は決まったとする内容であった。資料はソフトバンクモバイルの名で出されており、事業主もソフトバンクモバイルと明記されている。
 ところが、その資料にソフトバンクモバイルの連絡先が一切書かれていない。
 問い合わせ先は“きんでん”の担当者名及び携帯電話番号である。
 とりあえず、地元の自治会長に連絡をとったところ、自治会長のところには何の連絡も無いことがわかった。自治会長と相談し、事前の詳細説明会がないことを抗議し、自治会として説明会を開催するように、ソフトバンクモバイルと“きんでん”へ要求することにした。

2011年1月29日
 基地局建設計画について、周りの人たちはどの程度知らされているかを知るため、近所を調査した。その結果、わずか3軒にしか説明はしておらず、建設予定地の地元自治会(私の所属する自治会の隣の自治会)にも、何の連絡もないことがわかった。

2011年1月30日午前
 基地局計画について、大田原市役所に問い合わせた。住宅市民課に問い合わせると、「規制する条例はないし、景観問題ならば担当は県である」と、事務的な回答しかしない。しかたがないので、今後起こりうる問題とこの問題に注目(注意喚起)するようお願いするに留める。
 次に税務課に問い合わせる。電波塔(基地局)が建っても、固定資産税評価の見直しは無いことを確認した。なぜ税務課に問い合せたかというと、固定資産税はそのまま払わされ、一方で土地家屋を売ろうとした時、価格下落の問題(電波塔の近くでは、買い手が見つかりにくい)が容易に予想されるからだ。また、“きんでん”のホームページを探し、そのホームページ上の問い合わせFormに、電波塔建設に対して詳細説明するよう要求した。特に、住民へのリスクとされる以下の点について、詳細説明するよう記載した。特に7番目を重要視した。

  1. 健康問題
  2. 景観問題
  3. 資産価値下落問題
  4. アンテナ倒壊の危険性
  5. 落雷
  6. 極低周波問題
  7. リスクコミュニケーションの欠如
2011年1月30日午後
 ソフトバンクの本社電話番号を調べ、問い合わせ先の確認を行った。本社から、ソフトバンクモバイルの電話番号を転送してもらい、その電話番号先に、大田原市の電波塔に関する詳細説明を要求した。その際に、きちんと話ができる担当者を出して欲しいとダメ押しすると、調べた上で返答するので2〜3日待っていただきたいというので、電話に出た受付担当者の言葉を信じ、その場はいったん電話を切った。

2011年1月31日
 “きんでん”が最初に家に置いていった、A4の資料4枚を1枚にまとめてコピーし、予定地周辺の家に配る。それと共に、そのコピーにソフトバンクモバイルの電話番号も記載し、ソフトバンクモバイルに直接問い合わせるようお願いする旨の文をつけた。

2011年1月31日夕方
 ソフトバンクモバイルに再度電話し、その後の進行状況の確認をお願いした。

2011年1月31日夜
 ソフトバンクモバイル・エリア建設課から電話連絡が来る。内容は、今回予定した場所は、電波状態が悪いので、建設しないことを決定したというもの。また、今回ご迷惑をおかけしたので、謝罪も兼ねて説明に伺いたいという。そこで、その際に下請けの“きんでん”でなく、ソフトバンクからもどなたか出席してもらいたいと要請する。
 結果として、私の要請は快く了承され、追って日程は連絡するということになった。
 さらに、¨きんでん“からも電話があり、内容は、同じく撤回と謝罪であるが、私の所だけでなく、地元自治会長の仕事先まで行って、撤回と謝罪をした模様。

2011年2月2日
 電話で、事業主会社も含めた謝罪のための面会日を決める。

2011年2月3日
 地元で関係した人たちに、面会日に共に参加されるようお願いした。7軒にお願いしたが、実際に集まったのは2軒と自治会副会長だけだった。住民運動の難しさを改めて実感した。

2011年2月10日
 地元の自治会公民館で、謝罪のための面会を行った。
 相手側のソフトバンクモバイル担当者は名刺は出さず、役職もいわず、説明も行わず、腕を組んで、ぶっきらぼうに自分の名前を口頭で言っただけ。
 “きんでん“は、東京技術統括部基地局建設部エリア建設課課長代理という長ったらしい肩書の人と中央支店情報通信工事第二課副長の3人。
 雑談形式で、面会は始まったが、建設予定地およびその近くでの電波塔建設は行わないとか、今後の予定はまだ未定だが近々に新候補地を見つけたいと回答。
 あくまでも、ソフトバンクモバイルによる場所の評価(電波状態)によって、白紙撤回を主張していた。
 今回連絡したのは3軒のみであったので、鉄塔の高さの2倍の半径に連絡するというソフトバンク社の内規の根拠を質問したが、ソフトバンクの担当者は「これは録音していますか?最初に断っておくが、裁判をしに来たのではない」と警戒する発言。そこで「気分を害したのであれば、謝ります」とこちらも発言。結局、内規については、その場で回答はもらえなかった。(後日、内規は携帯電話会社3社の慣例である、との説明があった)。
 帰り際に、名刺をくれるように頼むと、¨きんでん”の2人は名刺をくれたが、ソフトバンクの担当者は、ただいま作成中と、とってつけたような答だった。それでは、写真を撮らせてくれと頼んだが、それも固辞された。
 事業主は事業に関する責任と電波塔完成後の保証責任があると考えるのが常識だが、ソフトバンクモバイルの姿勢は、電波塔建設は業務委託先に委託しているのだから、責任は委託先の“きんでん”が負っているものであり、ソフトバンクはあくまで“きんでん”の客でしかない、と受けとれる対応だった。

<所感>
 電波塔(基地局)の事業主はソフトバンクモバイルであり、電波塔を必要としているのはあくまでもソフトバンクモバイルであるにもかかわらず、始めから最後までソフトバンクモバイルの担当者はとても横柄な態度だった。何をしにここに来たのかと聞くと、ここにいる“きんでん”の人に来いと言われたからだと言う。
 今回感じたことだが、業務委託先の“きんでん”は、与えられた仕事を誠実に実行しようとしていると見受けられた。それに対し、雇い主という看板を盾に、ソフトバンクモバイル担当者は、あたかも殿様か役人であるかのような、勘違いも甚だしい態度であった。ソフトバンクモバイルの社員が、この担当者と同じとは思えないが、ソフトバンクモバイルの印象は最悪になった。
 ソフトバンクのI-PhoneやI-Padは、今後は絶対に使わないことになると思う。反対に“きんでん”の方々に対しては、初期の印象とは違い比較的好印象を持ちました。これは彼らの作戦かもしれない。
 終わってみて、失敗だったの感じたのは、最後の説明会(面会)にもっと住民が集まるようにすべきだったことと、雑談形式に始めず、板書しながらきちんと確認しつつ進めるべきだったと反省している。
 住民運動は、あきらかに不利益を被る実感がない限り協力は得られにくい。
中心となって活動する方々に敬意を表する。もっと、個々の住民が電磁波に対する知識を入手して欲しいと切に願う。知らなかったで済む時代は終わっている。
 何よりも、一般市民が国の法整備、マスコミの情報操作(CMイメージ)の犠牲になってしまう、この国を何とかせねばならない。


寄稿一覧に戻る