<PHS基地局を撤去させて>

 毎日何故か眠気を感じて頭がすっきりしないのは、30代半ばになった年のせいかと思っていました。昨年春に流産をしたのは、4年半前に第一子を無事出産したころは健康に自信があったのに、思いがけないことでした。その後身体の不調は在宅翻訳の仕事ができないほどとなり、健康作りの為にスポーツクラブに入会しても改善されず、家では家族全員がげんなりとした日々を送っていました。
 そんな昨秋のある日、夫が会社の人からPHSの基地局アンテナの形状を聞き、4年前から自宅の隣地に立っているのアンテナがまさしくPHS基地局であることがわかりました。建設時に隣家である拙宅に説明はありませんでした。少し前に、雑誌「週間金曜日(10月1日号)」に「ケータイ天国・電磁波地獄」の特集があり、「ケータイやPHSの電磁波の影響は基地局の近隣住民が最も深刻である」との記事を読んでいたのを思い出し、怒りが沸いてきました。
 うさんくさいことに、アンテナに会社名が書いていなかったので、とりあえずNTTに電話したところ、アンテナの形状と所在地からDDIのものであることがわかりました。
 「現代用語の基礎知識」に【ガウスアクション】という団体が載っていたので、インターネットで検索したところ、「電磁波問題市民研究会」として活動されていることがわかり、基地局の危険性について問い合わせました。DDIが拙宅に説明に来ることを告げると、話し合いの進め方についてのアドバイスと資料を送ってくださいました。
 電話会社は電波防護指針遵守を盾に安全を主張し、数値を並べ立てる戦法でしたが、微弱電磁波の長期連続被爆の影響は未解明である。微弱であっても常時電磁波を拙宅に放出しているのは事実であり、それをタダで受ける義務は無い、と言ってやり、結局、安全説明は納得できないということで追い返しました。
 電磁波問題研究会は、今後病気になった場合は損害賠償するとともに全国のアンテナを撤去するという安全保証書を取ったらいいと指南してくださったので、DDIに申し立てました。社内で検討して作成するとのことでしたが、設置契約をした地主が解約を表明し、DDIもそれに応じることになったので、解約するから作成しても意味が無いから出さない、ということになってしまい、作成しなくて済んだDDIはほっとしたようでした。
 契約主は、基地局が人体に悪影響を及ぼすとの指摘が出されていることを全く知らないで契約しています。このようなことは、最近になって声が高まりつつあることです。ですから、撤去のお願いに行くと、驚いてすぐに解約を申し出てくれました。おそらく、ご自身も不調を体感されていたかも知れません。ですから、最近は地主が住んでいない貸しアパートや駐車場が電話会社の標的になっています。契約者自身が身体の不調を感じなければ解約に至る可能性が低くなるからです。
 拙宅の半径100m内には、これだけではなく何と5基〔アステル3基、DDIとNTT各1〕も設置されていました。3社はそれぞれに基地局を設置しており、互換性がありません。従って、公共性があるとは言えません。1社が設置すると、他社は電波の干渉を受けないようにその近くに追随して設置します。ですから、PHSに加入していない近隣住民は、複数の基地局から自分に役立たない電磁波を浴びせられることになります。これでは、個々の基地局が電波防護指針の値を守っていても、実際には住民は指針値以上の電磁波を浴びている可能性があります。
 これまで、5基のうち3基の撤去が成就し、いままでのうっとうしさが嘘のように晴れ晴れした感じが気分が戻りました。やっぱり、PHS基地局は有害だと実感しています。なかでも、隣地の高出力タイプのものは、強い影響を感じました。他の4基は既設電柱に取り付ける小型のものです。DDIの高出力タイプのものは解約意思表明後3ヶ月立たないと撤去できない契約になっていました。本当に長い3ヶ月で、最後の一週間は頭のしびれ感に我慢できず、実家へ避難していました。他に撤去された2基の低出力タイプの契約者は、一方は小さい子供のいる若夫婦、もう一方は市役所で、双方ともこちらが苦情を申し立ててから一週間で撤去されました。残りの2基については、契約者に資料を渡しておきました。ご自分の家族が最も影響を受けることですので、対処は今のところ本人に委ねてあります。
 とにかく、現段階では病気になったら「やられ損」です。DDIには「あなたの不調とウチのアンテナは関係ない」と言われる始末です。99年夏から行なわれている科学技術庁の子供の病気と家庭内電磁波との関係調査の結果が出るのが待ち遠しいです。
 3社の音質競争のせいで、最近、全国におびただしい数の基地局が立てられています。しかし、一般に基地局の形状は知られていません。ひとたび基地局の形状を知ると、自分の家の周りに必ず見つかります。
 大学講師をしているドイツの友人の話では、ドイツでは送電線や携帯電話の基地局は、法律で住宅地に建設できないことになっているとのことで、日本は原発にしても目に見えないものに対する危機管理については第三世界の国だと指摘されました。私の流産を知って、電場と磁場の不断の変動が脳の松果体から夜間に多く分泌されるはずのメラトニン〔睡眠、生殖などバイオリズムをつかさどるホルモン〕の分泌濃度が低下し、記憶力・回復力・免疫力の低下、不妊や異常妊娠・出産がもたらされるという資料を送ってくれました。契約者との人間関係に気兼ねしている場合ではありません。又、契約者の健康をも救うことになるので、撤去の声を上げることが大事です。電磁波は放射能と違って体内に残らないので、電磁波が除去されればメラトニンの分泌は3日ほどでもとに戻るとのことです。病気に至らないうちに行動すれば大丈夫です。
 私は、少子化と学力低下はPHS基地局によって加速すると考えます。不妊治療を受けている人のほうが、最初から子供を持たない選択をする人よりも多いと思います。行政は、PHSがサービス普及を開始した95年以降の出生数、先天性異常児数、流産数をそれ以前と比べてみるべきです。
 撤去を成功させるポイントは、契約主に罪は無いので相手を立てながらお願いすることです。その際、資料を渡すと、信憑性を感じてもらえます。私が使った資料は次の通りです。

1.横浜市小中学校関係者へのPHS基地局反対運動の資料
  〔電磁波問題市民研究会で入手〕

2.【ケータイ天国・電磁波地獄】〔99年11月、葛燉j日〕
   P11 電磁波の影響が指摘される病気のリスト
   P74−77 企業の基地局設置契約勧誘トリック

3.【週間金曜日】99年10月1日号
   P10-13 「もしもし」と話せるには理由がある

4.【週間金曜日】99年11月5日号
   拙稿投書【身体の不調、地主に訴えPHS基地局を撤去へ】

 PHS基地局は公害源です。不要電波を浴びせられない権利を主張しましょう。撤去してみると、頭の冴えが戻りますよ。

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