国際がん研究機関が、高周波電磁波の発がん性の再評価について「優先度が高い」と評価
国際がん研究機関(IARC)は、発がん性評価の優先度を決定するための諮問グループによる会合を2024年3月に開催、この会合の結論をまとめた論文が4月12日付で学術誌に掲載された。IARCが2025~2029年に行う評価・再評価作業で、高周波電磁波について「新たなヒトのがん、および動物のがんについての証拠から(発がん性の)分類の再評価が是認される」として「再評価の優先度が高い」と推奨された。専門家からなる諮問グループは、感染性薬剤、生物毒素、複合曝露、粒子と繊維、金属、医薬品、物理的薬剤、多種多様な化学物質を含む200以上の候補を検討。評価または再評価の優先度について「高い」「中程度」「優先度なし」の推奨を行った。(4/12 IARCの広報文、4/15 電磁界情報センター)
IARCは高周波電磁波を「ヒトに対して発がん性があるかもしれない(2B)」と評価しているが、再評価によって「おそらく発がん性がある(2A)」などへ変更される可能性がある。
文部科学省、GIGAスクールで「8割の学校で通信速度が不足」
文部科学省は「GIGAスクール構想の下、十分なネットワーク速度が確保されていることが重要である」ことから、各学校に対して通信速度を計測させる調査を実施。その結果、回答があった全国の公立小中高校30089校のうち、文科省の「推奨値」を満たしているのは6503校(21.6%)に留まっていることが分かった。文科省は「同時に全ての授業において、多数の児童生徒が高頻度で端末を活用する場合にも、ネットワークを原因とする支障がほぼ生じない水準」の速度を推奨、「各地方公共団体に対して学校のネットワークの改善を促し、その取組を支援していく」としている。(4/24 文科省の広報文)
インド政府、トラの生息地での携帯基地局設置を禁止
インド政府は、環境省の新しいガイドラインにより、国内のトラの生息地の中核となる重要な場所への携帯電話基地局設置を禁止した。同省は「周辺に住む人々への携帯電話の接続は優先されるべきだが、そのような設備によって野生動物の生息地の保護や保全が影響を受けることがあってはならない」と述べた。同省はまた、新たな基地局の建設が必要な場合は、鳥の飛行経路を妨げないよう、また、その地域のすべての基地局からの合計した電磁波が増加しないよう、細心の注意と予防策をもって建設されるべきである」と述べた。そのために同省は、携帯基地局やその他の電磁波を発する施設の位置や周波数を一般に公開し、地理情報システム(GIS)で管理して、基地局やその周辺、また保護区内やその周辺に生息する鳥や蜂の数を監視するのに役立てるべきだと述べている。(2/7 Communications Today)
世界自然遺産・知床半島への携帯基地局設置に反対
日本自然保護協会は、世界自然遺産・知床半島での携帯電話基地局の整備に反対する意見書を5月7日に、総務省など関係省庁および携帯電話各社へ提出した。2022年4月に知床半島で起きた観光船の事故を契機に、地方公共団体からの要望により、総務省など関係省庁と事業者が基地局の整備を検討。知床岬で携帯基地局の電源設備として太陽光パネルと蓄電池施設等を約7000m2(約84m四方)の規模で建設し、また半島東部のニカリウスでも基地局建設候補地を選定して今年建設し、観光船・漁船からの通信や現地の動画ライブ配信も可能にする計画。知床半島は、世界自然遺産に2005年に登録されており、特に半島の中心部から岬にかけては国立公園の特別保護地区に指定されている。同協会は意見書で「観光船の事故は、事業者の運営の過失。本来は観光船の業務無線や衛星携帯電話の搭載などにより安全管理の徹底を行うべきであり、携帯電話の通信強化の必要性には疑問」「国立公園及び世界自然遺産の生物多様性と風致景観の保全に大きな懸念があるため、携帯電話事業者は5月に予定されている早期の着工を見合わせるべき」などと訴えている。(5/7 日本自然保護協会のウェブサイト)
総務省が5G拡大へ新たな目標を示す
総務省は「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会 5G普及のためのインフラ整備推進ワーキンググループ報告書(案)」を5月21日に公表し、その中で5G基地局整備について新たな目標を示した。現状では4Gの低い周波数を転用した「なんちゃって5G」も多いが、5G専用「サブ6(3.7GHz帯、4.5GHz帯)」によるカバー率を、人口の多い都市部で、現在の30~40%から2027年度までに80%へ広げることを、全ての携帯事業者の目標とした。また、ミリ波については「ミリ波をうまく活用できている国は、現在のところ、まだほとんど存在していない」ことから「複数の携帯電話事業者から、ミリ波の整備目標を設定することは時期尚早という意見があった」ことを同報告書は認めつつ、それにもかかわらず、2.2万局(2022年度末)から2027年度に4社合計で5万局へ倍増させる目標を示した。ミリ波利用の促進のため、具体的な整備スポットや活用事例などが記載された「ミリ波活用レポート」の提出を毎年各社へ求めることも盛り込まれた。(5/20 日本経済新聞、5/24 同報告書)
JR九州が踏切のある路線で「自動運転」
JR九州が、西戸崎駅(福岡市)と宇美駅(福岡県宇美町)をつなぐ香椎線の全区間25.4kmで、運転士が乗車しない自動運転列車の営業運行を3月16日から始める。踏切のある路線としては国内初。加速や減速は自動で管理し、運転士の免許を持たない「自動運転乗務員」が踏切内での立ち往生や線路上に障害物を見つけた場合などシステムでは検知できないトラブルが発生すると緊急停止ボタンを押す。まずは香椎線を走る列車全体の2割で実施する。2020年12月から運転士が乗車する形式で自動運転の実証を続け、国からの承認を受けて運転士なしで最高時速85kmでの営業運行にこぎつけた。自動運転を支えるのがレール上の約400カ所に設置した「地上子」と呼ばれるアンテナと、車両に搭載した「自動列車運転装置」と呼ばれる走行制御システム。列車が地上子の上を通過すると、システムが現在地を認識。車輪の回転数から走行速度を把握し、適切な速度を維持する。国家資格の運転免許は取得までに9カ月程度かかるが、自動運転乗務員は社内資格で養成期間が2カ月ほど。(3/14 日本経済新聞)
井戸の水位低下でリニア工事中断
リニア中央新幹線の日吉トンネル掘削工事が進む岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町で井戸などの水位が低下し、JR東海は5月20日、掘削工事をいったん中断したと明らかにした。6月からボーリング調査を実施し、地質を調べた上で工事を再開する。大湫町区長会長の男性(67)は「まさかこんなことが起きるとは。ライフラインで最も大事な水。元に戻してほしい」と訴えた。男性は1月、日吉トンネルの工事を見学した際、トンネルからあふれ出る湧き水に、これは大湫町から流れ出ているのではと懸念した。その1カ月後にJRが設置している観測井の水位が減少していて、同町内の一つの井戸が枯渇していると連絡が入った。JR東海は16日の会見で、井戸などの水位低下について「トンネル掘削工事による影響が高い」として、集落のある盆地の手前まで掘り進めた上で一時中断し、ボーリング調査を実施する方針を示していた。17日から点検のため工事を止めていたが、20日以降も中断し、現在の掘削面からボーリング調査を実施することにした。瑞浪市は17日、住民の不安の声を受け、工事を一時中断し、原因究明を早急に行うことなどを求める意見書をJR東海に提出していた。また、JR東海は20日、日吉トンネル掘削工事で発生している湧水を低減させる薬液の注入を開始したと発表した。湧水は集落から数百m南西の日吉トンネルの工事現場2カ所で確認され、1カ所はほぼ止まっているが、もう1カ所では毎秒20リットル程度が発生しているという。(5/15, 5/21 岐阜新聞のウェブサイト)