中国電力がアナログメーターに交換 スマートメーター設置の経緯が不適切と認め謝罪

大久保貞利(電磁波研事務局長)

 「反対の意志を表明していたにもかかわらす、中国電力は家のアナログメーターをスマートメーターに強制的に交換した」と憤慨している会員の訴えに応じ、2024年12月11日(水)、電磁波研は中国電力ネットワーク岡山ネットワークセンターに出向き、交渉しました。その結果、「今回のスマメへの交換は行きすぎであり謝罪します。すぐに2年間有効なアナメに交換します」との回答を受けました。以下、詳しく経緯を含め報告します。

事の発端

 仕事の関係で、岡山県美作市に住む森ノ斑鳩(もりの・いかる=ハンドルネーム)さん(会員)は、岡山市にも住宅用の家があります。森ノさんは今から3年前に、岡山市の家に中国電力ネットワーク(以下中電)が断りもなくスマメを取り付けたため、元のアナログメーターに戻させた経緯があります。そのアナメは期限が3年でした。
 昨年(2024年)3月、中電の下請け業者から「電力メーターを交換するので予定日を決めてほしい」旨の電話がありました。アナメの有効期限は2024年7月なのに早めの交換促しに不信感を抱き、中電岡山ネットワークセンターに電話で苦情を申し立てました。このあと、3月中に何度か電話のやり取りがありましたが、森ノさんは「従来通りのアナメに換えるように」と主張しました。中電側は「アナメはもう製造していない、経産省から3月中にすべてスマメしないといけないと圧力がかかっている」と繰り返すばかり。
 森ノさんは、自身が飼っている鳥(インコ)の電磁波による健康被害の危険性、スマメを構成している半導体への不信感、まだ期限がある、と主張し、アナメを探してもらうよう依頼しました。その後も執拗に電話があるので、私(電磁波問題市民研究会事務局長・大久保)に連絡し、「スマメを強制する法律はない」旨のアドバイスを受け、中電側に伝えました。

担当者が変わり、より強硬な態度に

 電磁波研のアドバイスに返す言葉がなくなった中電からはしばらく連絡が途絶えました。ところが2024年4月の終わりごろから、中電のHを名乗る人から電話がありました。Hはこれまでのやり取りを引き継いだ様子もなく、「森ノさんの意向に配慮して取り付けるから」と話される。しかたないので、スマメを拒否する理由、スマメの法的根拠のなさ、期限を過ぎてもそのままアナメを取り付けている事例があること、を伝えました。Hは「期限切れのアナメを付けている人はいません(注)。アナメはもう製造していません。通信部を外したものに取り替えます」と言ってきます。Hは話術が巧みで、こちらの話を聞こうとしない態度で、丸め込もうとする姿勢でした(注:今回の交渉のため調べましたが、2022年度に、中電管内で福山市と倉敷市で期限切れのアナメで頑張っている事例がありました。交渉時に出そうとしていましたが、結局公表せずに交渉は終わりました)。
 2024年の6月中旬から下旬にかけて、Hから日々執拗に電話着信がありましたが、電話に出ないようにしていました。日々の生活の忙しさから対応する気力になれないこと、説得力ある返答をするのにまだ整理がついてないこと、こちらが話をしてもらちがあかないという思いがあること、もありきちんと話する内容を準備してから対応するつもりでした。Hの呼び出しコール時間は異常で、5分から10分くらいコールを鳴らし続けることを繰り返します。恐怖感と不信感が増しました。

通知文を郵送した3日後の留守中に交換

 7月12日17時57分に、私に電話しアドバイスを求めました。
 アドバイスを受け、5分後の18時02分にHに電話し、かなり強い口調で激しくHを問い詰めました。そしたらHは「7月11日(昨日)にスマメに交換した」と返答してきました。Hは「通知も出したし、7月9日に電話も入れたが(森ノさんが)電話に出なかった」という。森ノさんは驚き、抗議しましたが、Hは全く聞こうとしません。Hではらちがあかないので上司が対応するよう求めましたが、それも拒否されました。
 7月13日、家に戻ると確かに中電から郵便が届いていました。通知の発送日は7月8日。森ノさんは兵庫県美作市が居宅で、仕事の関係上、移動している時間が多く、岡山市の家にも不在な時が多い。それに最近の郵便事情から、発送して到着まで2日以上かかる場合もあります。7月8日付け発送では、スマメ交換工事の直前に通知が届くことになり、実質上抜き打ち工事を狙ったとしか思えません。しかも前からスマメに反対の意志は十分伝えていました。明らかにユーザーの意志を無視した強制でしかありません。

親会社に苦情を申し立てに行く

 7月16日午前中、発電・小売事業を含む持株会社である中国電力岡山支社に苦情を申し立てに行きました。持株会社中国電力から送配電事業を分社化した中国電力ネットワークでは、いくら直接言い続けてもらちがあかないので、親会社である持株会社中国電力に頼ろうと思ったのです。担当のKさんに対応していただきました。Kさんが言うには、期限切れのアナメを付けている人もいると教えてくれました。中電は人によって対応に差別があるのかと感じました。H個人がいい加減な対応なのか、中電という会社としての対応なのかを確認したくて上司と話せるように連絡をとってください、とKさんに依頼しました。
 同日13時02分、上司でなくまたHから電話がありました。Hでは話にならないので責任ある上司から連絡くださいと依頼していたのが伝わっていないこと、勝手にスマメに替えられたこと、3年前にも同じことをしていること、を訴えましたが、Hは上司と代ろうとしません。そこで、同日13時24分、午前中に話したKさんと連絡取りたいと依頼しました。9分後の13時33分、Kさんから電話が来たので、「Hから電話が来ました。こちらの要望は上司と連絡とりたいということなので要望を受けてほしい」とKさんに再度依頼しました。また同日16時39分には、中電の広島本社に苦情申し立てをしました。

東京の電磁波研定例会に参加

 7月17日、森ノさんは、東京で開催されている電磁波研定例会に初参加し概要を説明しました。私から「時系列で経緯がわかるように文書化してください。中電側で対応した人の役職とフルネームを把握するように。かなり悪質な例なので場合によっては岡山まで行きます」との発言を受けました。
 7月23日にようやく上司と話せる流れになり、7月26日、中電岡山ネットワークセンターに出向き、Hの直属上司である藪副長と会談。しかし、元には戻せないと藪副長は答え、結局折り合いがつかないので、アナメに戻してもらうまで抗議は続ける、と伝えました。
 7月30日10時14分、藪副長に電話で連絡をとったが、失礼にも電話途中で一方的に藪副長は電話を切りました。10分後の10時24分、藪副長に電話すると副長は着信拒否してきました。そこで岡山ネットワークサービスセンターのフリーダイヤルに掛けたら、藪副長から電話がありました。これはあくまでも森ノさんの推測だが、藪副長とHは共謀した上で無理やりスマメを取り付けたと森ノさんは考えています。Hの態度はひどいが、藪副長の態度もそれに輪をかけてひどいものがあります。
 森ノさんから事情を聴いて、私からは、「藪副長やHでは話にならないので、さらに上の人と話ができないか当たってほしい、上の人と会えるならば、岡山まで行きます」、と森ノさんに伝えました。
 9月になって、森ノさんから詳しい経緯が書かれた文書が電磁波研に来ました。

電磁波研が中電と直接交渉

 その後しばらく森ノさんから連絡が来ませんでしたが、12月3日、突然、森ノさんから電話があり、「12月11日(水)に中電岡山ネットワークセンターと交渉できることになりました。藪副長やHではなく、その上の上司が対応します」という内容でした。時間は当日午前11時から12時です。
 11日、岡山市内の中電岡山ネットワークセンタ―で、午前11時から交渉しました。
 当方は、私(事務局長)、網代編集長、森ノさんの3人。中電側は高原誠・岡山ネットワークセンター配電運営第一課長の1人。
 以下、交渉の内容です。

交渉での電磁波研側の主張

1 政府(経産省資源エネルギー庁)の見解
 「目標として閣議決定しているのは『2020年代早期にスマートメーターを全世帯全事業者に導入する』ということで、スマートメーターを強制する法律はない」(資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課電力産業・市場室、山田大樹課長補佐 2018年4月25日・衆議院第二議員会館での院内集会での発言要旨)
 「したがいまして、法律といいますよりも、(スマートメーターの)必要性ですとか効果を丁寧にご説明しながら設置へ向けてご協力を賜りたいというのが大きな原則でございます」(同課長補佐発言)
 「強制的にと言うよりも、どういう効果があるのかというところをご理解いただくことが大前提だと思っているところでございます。(同課長補佐発言)

2 同じ院内集会での東京電力の見解
 「私ども決して(スマートメーターの)強制を皆様に強いているというつもりはございません。(スマートメーターについて)ご説明を尽くして、設置をさせていただく」(東京電力パワーグリッド㈱スマートメーター推進室・山口哲生マネージャー)(同院内集会での発言)

3 「説明、説得は尽くすが、強制はできない」これが結論です
 経産省にしても、東電にしても、スマートメーターについて需要家に「設置の効果・意義」を説得するが、強制はできない、という見解です。
 今回の中電の森ノさんへのスマメの強制は、政府見解から逸脱した行為であり、不当です。

 これに対し、高原課長の回答は以下です。

高原課長の回答

 スマートメーターは強制できないと考えています。藪副長とHの今回の森ノさんへの対応に関して謝罪します。中国5県をとりまとめている広島の検定をしている所に話をして、2年間有効のアナログメーターを用意してますので、いつでも早急に設置できるよう対応します。今日にも対応可能です。
 2年間限定のアナログメーターですが、2年後は今回のような対応はしません。

 あっけないほどの解決でした。森ノさんの事前の感触では「中電とはまともな会話ができない」ということで、場合によっては「スマメ取替工事を家宅不法侵入で訴えることも辞さない」という決意で交渉に臨みましたが、よかったです。

補足の要求を出す


 電話でいいから、藪副長とHから森ノさんに対し、謝罪するように(当然課長は了承しました)。

交渉を終えて

インコのひなちゃん

 森ノさんはインコを飼っています。インコの名前はひなちゃんです。いつも車の中にケージに入れて運んでいます。賢いインコで森ノさんと意思疎通が図れるそうです。交渉後、岡山駅に向かう森ノさんの車内でひときわ、ひなちゃんははしゃいでいました。「私の気分がわかるのです。私がいまホッとしているのがわかるので、ひなも明るいのです」。

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