世界保健機関(WHO)が、高周波電磁波(電波)による健康影響の評価について見直しを行うため、これまで世界中で行われた研究をまとめて評価する系統的レビュー(システマティックレビュー)を行うよう、9分野についてそれぞれ研究者らへ委託しました。その結果は、ほとんどが、熱作用を引き起こすほど強くない電磁波で健康影響が起きる証拠は確認できないという、WHOの従来の見解に近いものとなっています。しかし、ベルン大学(スイス)教授であるMeike Mevissen(メビスン)らによる、がんの動物実験についてのレビューは、高周波電磁波と、脳神経膠腫および心臓悪性神経鞘腫という2種類のがんとの関連を示すエビデンスには高い確実性があると結論付けました(会報第155号参照)。独立系オンラインニュースメディアによるインタビューで、Mevissen教授は、自身らの研究についてWHOから妨害を受けたと証言[1]、電磁波問題についての英国の老舗サイトMicrowave Newsが今年(2026年)1月28日、このインタビューについての解説記事を掲載しました[2]。
研究は非常に政治的な側面が強い
日本の総務省などは「身の回りの電磁波による健康影響は確認されていないとWHOが言っている」ことを金科玉条にしています。私たちは、科学研究は常に中立公正に行われていると思いがちですが、決してそんなことはありません。Mevissen教授がインタビューで述べている通り、「研究は非常に政治的な側面が強」いのです。
Mevissen教授によるインタビューから一部だけを抜粋して以下に示します。【網代太郎】
-では、電磁波の熱的効果と非熱的効果の区別については、あまり重要視されていないということでしょうか?
前述の通り、事実として、電磁波が人間の健康に及ぼす影響のメカニズムは、これまで特定されていません。私たちは現在、健康に関連する人体への影響の可能性について研究を進めています。同時に、一般市民には現在の研究状況を知る権利があるはずです。私が気になっているのは、ドイツ連邦放射線防護局のような機関が、常にすべてを否定して議論を終わらせてしまうことです。たとえ発見された影響が小さくても、そのことはそのまま伝えることができるはずです。連邦局は、科学界に「影響はない」という結論を出してほしいと望んでいます。その結果、彼らは決定を下す必要がなくなるわけですが、たとえ影響が小さくても、明らかにそれは望まれていないのです。研究は非常に政治的なものであり、私たちは「健康リスクがあってはならない」という姿勢に常に直面しています。それが私たちの研究を妨げることがあります。
-世界的に注目を集めたWHOのためのレビュー研究で、あなたは最近、実験動物において電磁波が心臓腫瘍や脳腫瘍という形でがんを引き起こすことを報告しました。この研究も妨害を受けましたか?
はい。最もわずらわしかったのは、常に「研究をどう進めるべきか」と指示され続けたことです。当初、WHOのシステマティックレビュー担当の専門家(彼自身は動物実験の経験がまったくなかったのですが)が、対象とする研究のメタ分析を我々の代わりに行おうとしました。つまり、評価の対象となる研究を彼が選別しようとしたのです。しかし、それこそが私たちの重要な役割でした。私たちはこの分野で世界最高レベルの専門家を集めていたにもかかわらず、常に反論しなければなりませんでした。残念ながら、これがすべてを遅らせてしまいました。
-その理由は何でしたか?
第一に、WHOは私たちが選定したすべての研究をひとまとめにして、その平均値を算出することを求めていました。しかし、研究デザインは様々であり、対象となる動物種や性別も異なり、それらが結果に違いをもたらすことは周知の事実です。したがって、こうした差異を全く考慮しない方法論を用いるべきではありません。体系的なアプローチは重要ですが、その際、実験的がん研究や毒性学からの重要な知見を忘れてはなりません。
[1]https://www.infosperber.ch/politik/schweiz/unsere-forschung-wurde-behindert/
[2]https://microwavenews.com/news-center/they-kept-telling-us-what-do

