<ケータイ基地局設置事前近隣説明の陳情を行って>

 民間地における基地局設置について事前近隣説明および小学校・幼稚園・保育園付近の回避を求める市への陳情は、2000年3月、6月、9月の三回にわたる審議の末、「条例化」 、「勧告」、「指導」のいずれも、「有害性があるとの国の見解が定まっていなければ不可能」との結果になりました。市議会は、民民契約については介入できないとしながらも、「市有地に設置された基地局の撤去」や「郵政省など国の監督官庁に意見書を出すこと」など、「公」に対しての行動は営業妨害に当たることがないので可能性があるようです。
携帯電話の普及の背景にある基地局の存在については殆どの国民が無知ですが、陳情を提出することによって、市議会議員や市役所関係者にはもちろんのこと、市民にも陳情の件名が掲載される議会広報によって問題提起することができます。この点で、市議会への陳情は有意義であると思います。しかし、小田原市議会の前回の議会だよりでは、この陳情が継続審議中であるということが単に紙面の都合という理由で伏せられてしまいましたので、今回の審議に向けて市民の反応を得ることがでませんでした。
 地方自治体としては、「国の見解」が出ないうちは行政の介入が不可能との立場をとっていますが、現在国内外で調査中の電磁波の影響についての疫学調査は、あと3〜5年たたないと結果が出ません。現在、日本人全体が知らぬ間に電磁波被曝実験の中に置かれているのです。私は基地局の近くで頭痛を感じますので、基地局の電磁波は有害だと思わざるを得ません。「慎重なる回避」を奨励する有識者の意見があるにもかかわらず、電磁波を浴びない権利が保証されないのは不当なことだと思います。
インターネットの情報に掲載されていた熊本市の「託麻の環境を守る会」が郵政大臣に当てた陳情書の記述によると、郵政省は1999年4月の第145国会の参議院交通情報通信委員会で「周辺住民の方々の御理解を得るよう努めていただきたい旨、要請をしております」と答弁しています。市としても同様に対処することを求める陳情なら国の見解に沿ったことですので採択の可能性は十分にあると思われます。
 今から5年後、少子化と子供の学力低下の問題はどうなっているでしょうか。もし、将来、有害との見解が出たら、事前近隣通知どころではなく、撤去や損害賠償を強いられる問題になるのではないでしょうか。有害性が証明されるということは、多くの犠牲者を出すということです。輸入血液製剤や輸入硬膜に被害では訴訟沙汰になっています。新しい技術には、時間がたたなければ分からない有害性が伴う場合があります。ですから、先進産業を所管する官庁の役目は、情報をオープンにして国民個人の判断に委ねることです。有害性の懸念を隠せば後で責任を追求されます。郵政省には、WHO等の調査で基地局の無害性が確立するまでは、電話会社に電磁波被曝を不安に思う住民とのトラブルが起こらないような立地を選定させるために、宅地や学校、幼稚園近辺には設置しないよう勧告するとともに、郵政大臣宛てに基地局設置反対の陳情が出た場所には設置許可を与えないようにしてもらいたいと考えます。
 たとえ電磁波が無害であろうとも、電磁波を受ける人々には「知る権利」があります。郵政省はそれを保障しなくてはなりません。しかし、会社名すら書いていない基地局は多く、人の無知につけこんで電磁波を放出して金儲けをするのは許せません。
たまたま私の陳情と同日の審議のなかに、市民へのサービス低下を懸念するとの理由による「NTT小田原窓口センターの閉鎖に反対する陳情」があったことで、NTT東日本には窓口オフィスを335箇所から26箇所にする事業計画があることを知りました。NTTには次世代型携帯電話用の基地局を新設する計画もありますので、従業員がいなくなったNTTビルの上には基地局が立つのではないかと心配です。現に、既に閉鎖された神奈川県の国府津局の屋上には携帯電話の基地局が立っているのですから。

(寄稿者:神奈川県在住)

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