<携帯の健康リスク・・・メーカーの対応は疑問>

 電界強度は、送信出力をP、人体との距離をDとした場合、E=14.03×P^(1/2)/D となります。(Pはワット数、Dは距離、また係数<14.03>はアンテナの指向性により異なる)
 したがって、耳元で携帯を使う場合の送信機と脳との距離Dを3cm、ピンマイク方式の場合の距離を30cmと仮定すると、電界強度は10分の1となり、脳に与えるリスクは間違いなく小さくなります。
 しかし、携帯本体を胸ポケットに入れるとか、背広のポケットに入れるといった場合には、頭(脳)以外に人体各種への影響が想定できます。
 胸部X線撮影では頭ではなく胸部を中心に撮影していますが、その場合でも暴露量との関係で年間の撮影回数などにガイドラインがあるはずですので、頭以外の影響を考えればピンマイク、イヤホン方式で人体への影響が少なくなるとは言えません。
 もうひとつの課題は、郵政省のガイドライン値は安全係数がかかっているとはいえ、健康リスク算定においてしきい値をどう設定しているかです。低レベル放射線やダイオキシン類でもしきい値の存在を認めるか否かにより、影響レベルは格段に変わってきます。おそらく郵政省のガイドラインはしきい値を設定しており、それ以下の暴露を無視しているはずですので、今後、精度を高めた調査と評価を行えば、実質上の安全レベルが現状の1/10以下になる可能性もあります。
 いずれにしても、日本全体で5000万台以上普及したにもかかわらず、この種の情報が利用者に提供されていないとすれば、とんでもない事だと思います。最低限、たばこではありませんが「使い過ぎに気を付けましょう」と言ったことを、取り扱い説明書に明記すべきでしょう。
 電界強度計を使って、実際に携帯やPHSの人体近傍での電界を実測してみるとよいと思います。東京・秋葉原の有名なパーツキット販売店のカタログをみたところ、500メガヘルツまで使える電界強度計のキットが3500円でありました。もちろん、キットですから簡単な半田付けが必要です。携帯やPHSの周波数は500メガヘルツより高いので、上記のキットでは使えない可能性があります。LSIを1000メガヘルツまで使えるものにかえれば使えるはずです。プロ用ですとディジタル表示で何十万円もしますが、プローブ及び整流(極超短波を直流に直す部分)は、上記のキットとほぼ同じ構成となっているはずです。

(寄稿者:環境シンクタンク代表)

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