スイス連邦政府公衆衛生局(FOPH)の携帯電話に関する勧告・見解

携帯電話
 携帯電話(セルラーとかセルフォンと言う)は、基地局ネットワークを通じて、どこからでも通話が可能である。情報は、高周波電磁場を使って、携帯電話から基地局に送信されたり、逆に基地局から携帯電話に送信される。放射線強度は、発生源つまり携帯電話のアンテナ近くで、最大となる。放射線(電磁波)は携帯電話を使っている時だけ強く、使っていない時は弱い。携帯電話から離れると、放射線はただちに減衰する。
 通話中の放射線の曝露強度は、様々な要因で決まる。

 携帯電話から出る放射線が、健康に有害かどうかは不明である。脳機能や脳腫瘍の発生への携帯電話放射線の影響は、現在のところ調査段階にある。

インターフォン研究
 2010年5月に発表された、脳腫瘍と携帯電話使用に関わるインターフォン研究では、通常の携帯電話使用及び10年以上の携帯電話使用においては、リスク増大は見られなかった。携帯電話のヘビーユーザー(10年以上の使用で、さらに1日に30分以上使用の場合)については、脳腫瘍の発症リスクが増大した。データ収集と研究デザインにおける種々の不確実さ(信頼性の欠如)により、明確な結論には至らない。また、携帯電話使用と脳腫瘍の関係には、因果関係があるとは判断できない。それ故に、頭部への放射線曝露を最小化するために、FOPHは以下のような勧告を行う。

間接的な影響
 ペースメーカーのような、常時作動する医療埋め込み機器は、携帯電話の電磁波により(誤作動のようなマイナスの)影響を受ける可能性がある。
 運転中に携帯電話を使用すると、道路上で起こることに対して、運転手の注意をそらすおそれがあり、交通事故を起こすリスクを増大させる。

勧告

基地局
 基地局からの放射線に関する詳細な情報は、連邦政府の環境FOEN部局か州の担当部局から入手できる。

詳細情報

1、 技術データ
 GSM(欧州デジタル移動通信システム)は、デジタル型携帯電話による、通話やメールの統一標準プロトコル(規格)である。携帯電話はデータ送信やインターネット閲覧にも使用する。GPRS(汎用パケット無線システム)やEdge(国際的規模の高速データ通信)は高速でデータ通信を可能とさせるGSMの発展型である。UMTS(国際携帯電話システム)は次世代型(第三世代型)の携帯電話システムで、GSMより高速のデータ通信が行え、より品質が良くマルチメディアサービスが可能だ。また、それだけでなく通常の通話やテキストメッセージ(メール=SMS)も可能である。中期的には、UMTSがGSMに取って代わるであろう。

表1 GSMとUMTSの比較
GSM UMTS
送信周波数(MHz) 900/1800 2100
ピーク出力(mW) 2000/1000 125−250
最大出力(mW) 240/120 125−250
パワー管理(Hz) 1−2 1500
パルス反応周波数(Hz) 217 現行基準(パルスでない)
遊休状態送信パルス 12−240 5−720(普通は33)

ネットワーク・セル(繋がっていない状態)
 携帯電話(移動通信)ネットワークは、地域的セル(区分け)で分割されている。一つのセルの中には、携帯電話が無線でコンタクトできるように一つの基地局が設けられている。一つのセル内では複数の通話が同時に可能であり、都市部の基地局はセル内の通話数が多いので、地方の基地局より数多く建設する必要がある。小範囲規模のセル(すなわち町や市の)の基地局は、広範囲規模のセル(すなわち地方の)用の基地局より、出力は小さいのが通常である。

GSM:一つの基地局を介して、複数の携帯電話が同時にアクセスする時は、時間分割する。そのために、放射線はパルス化される。受信するときは、別の周波数に飛ばされる。複数のセルはグループ化される。一つのセル群から他のセル群に移動する場合は、現在繋がっている基地局と携帯電話は一時的に非接続となった後、新しいセル群と接続する必要がある。携帯電話を使用していない時、すなわち遊休状態においても、携帯電話は基地局からの情報は受信し続けるため、その携帯電話がどのネットワークセル内にいるのか把握されている。携帯電話が新しいセル内に入るとすぐに、その新しい基地局で登録されている短い信号を携帯電話自身が送信する。そうでない場合でも、12分から240分ごとに、携帯電話から短い信号が送信される。その間隔は携帯会社によって違う。

UTMS:基地局を通じて同時に通話する複数の携帯電話は、時間分割ではなく、コード分割方式で行われる。携帯電話は通話中(接続中)は、連続的に放射線を出している。その時の放射線はパルス化されていない。UMTSセルが最少接続出力の時は、最も良い状態の能力で稼働している場合である。この時の基地局は、エリアの外側の携帯電話とは接続しない(なぜならば、外側のエリアは高い出力で送信しないと放射線が届かないからだ)。その外側のエリアの携帯電話には、別のセルの放射線がカバーする。セルの範囲は送信データ量によって決まるので、範囲は様々である。携帯電話は、同時にいくつかの基地局に登録されているので、セルを変わる時(移動する時)に登録するかしないかの判断をする必要はない。GSMと同じで、携帯電話は常時登録されているのであり、それは遊休状態(電話を使用していない時)でも登録されているのである。

出力
 ピーク出力であるか最大出力もしくは実出力であるかを区別するのは重要である。ピーク出力とは、携帯電話が最大出力レベルにあることを示している。最大出力とは、平均的な時間経過において、ネットワーク内で最大出力レベルにあることを示している。現在出力は最大出力より通常は低い。携帯電話は、基地局と接続している無線状態が良好な時は、かなり低い出力で稼働している。基地局の出力レベルは、携帯電話が送信で使用している出力で大きさが決まる。

GSM:ピーク出力は1ワットか2ワットである(表1参照)。携帯電話は通話時間の8分の1(訳者注:時間分割)で送信し(表1参照)、しかも26パルスごとにオミット(省く)するので、最大出力は一回につき120ミリワットあるいは240ミリワットである。GPRS(汎用パケット無線システム)やEdge(国際的規模の高速データ通信)を使ってデータを搬送するための最大出力は、0.5−1.0ワットである。それは、そのデータ通信が、現在の携帯電話において、通話時間の1/4〜1/2で搬送できるからだ。データ通信は1000倍に圧縮できるので、1秒につき1〜2回の接続で十分なのである。出力をさらに減らすには、DTX(discontinuous transmission=非連続伝送)を使えば、およそ半分になる。DTXは話をしている間のポーズ(休み)の時間でもデータを搬送できるからだ。


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