山口みほさん(福岡県)
「デジタル時代における子どもの人権に関する国際宣言」を米国の団体などが提起し、署名を募っていることを、会報前号でご紹介しました。この団体などによるウェビナー(オンラインのセミナー)に参加した山口みほさんが、ウェビナーの内容をご報告くださいました。ウェビナーは、以下から視聴できます。https://www.thechildrensdeclaration.org/webinar
前回の会報で、「デジタル時代における子どもの人権に関する国際宣言(The International Declaration on the Human Rights of Children in the Digital Age)」について紹介されました。これはBroadBand International Legal Action Network (BBILAN=ブロードバンド国際的な法的行動ネットワーク)とAmericans for Responsible Technology(ART=責任あるテクノロジーを目指すアメリカ人)、そして医療、法律、精神保健の専門家からなる国際チームの共同プロジェクトです。
宣言には、子ども達が、意図的に中毒性を持たせた機器、プラットフォーム、アプリから解放される権利、有害な放射線(電磁波)被曝から解放される権利、そして商業的搾取から解放される権利が明記されています。
この宣言に関する第1回国際ウェビナーが2023年12月13日(日本時間は14日未明)に開催されました。
司会はDoug Wood さん(米国。この宣言のオーガナイザー/ARTの創設者でありディレクター)で、発表者は、この宣言の主要な著者であるJulian Gresserさん(米国)を始め、Frank Cleggさん(カナダ)、Shelley Wrightさん(カナダ)、Eileen O’Connerさん(英国)、Pernille Schriverさん(デンマーク)、Lyn McLeanさん(オーストラリア)、Jörn Gutbier(ドイツ)さん、Mary Anne Tierneyさん(米国)、Marlena Krugerさん(南アフリカ)、山口みほ(日本)です。
発表から一部ご紹介します。
★Julian Gresserさん(BBILANの共同創設者/国際環境公益弁護士/Big Heart Technologiesの共同創設者、チェアマンでありCEO)の冒頭のプレゼンテーションより抜粋、要約して訳
「『デジタル時代における子どもの人権に関する国際宣言』の目的は、子ども達や親と企業が平等に同じ土俵に立てるようにすること、そして安全性の証明責任を消費者に負わせるのを辞めさせ、子ども達を傷つけることで巨額の利益を得ている製品やサービスの提供者にその責任を負わせることです。」
「スクリーンタイム中毒については、ソーシャルメディア企業は子ども達を中毒させることを意図しています。コンピュータアルゴリズムは中毒を引き起こすように設計されているのです。中毒が深刻になればなるほど、企業の利益も大きくなります。親も子ども達も、同意を拒否する公正な機会が与えられていません。」
「携帯電波塔の提供者は常習的に学校の敷地内に携帯電波塔を設置しており、場合によっては遊び場や学校の建物の上にも設置しています。学校の管理者は、ワイヤレス企業から訴えられることを恐れている為、或いは、ワイヤレスの展開を加速する為の助成金を受け取っている為、このような状況を許しています。」
「アメリカや他の国々の連邦政府と州政府は、子ども達に対するリスクを大幅に増加させるワイヤレス依存のインフラを加速しています。」
「子ども達とその親たちには救済策が存在しません。信頼できる保険会社からの手頃な保険は利用できず、救済や補償を提供する行政システムもありません。親が訴訟を起こす財政的手段を持っていても、裁判所は受け入れていません。要するに、リスクの100%が子ども達とその家族に負わされているのです。」
「私の組織、BBILANは、ART、Children’s Health Defense(子どもの健康防衛)、及びその他のヨーロッパ、アジア、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカのグループと協力して、以下のような行動を支援する為に、世界中の当事者を支援する意志があります:
- アメリカでのスクリーンタイム依存症の訴訟に参加したり、意見書を提出したりすること、または他の国の当事者が同様の法的理論に基づいてこれらの訴訟を提訴することを支援する。
- 交渉における戦略的及び戦術的なアドバイスを提供する。
- 法令や法律の草案を準備するのを支援する。
- 当事者が国際裁判所で証言する為の準備をし、国際裁判所で彼らを代表して出廷する。
- 2024年3月に、国際的なスキル・トレーニング・プログラムを開始する。これは提唱者がこれらの難題に取り組む際の統合的なレジリエンス-活力-を強化するように設計されている。」
★Frank Cleggさん(元マイクロソフト・カナダの社長/Canadians for Safe Technology(C4ST)のCEOでありチェアマン)の発表より抜粋、訳
C4STとこの宣言の共通の目的は以下の通りです:
- 私たちは政府当局に対し、健康に基づいたNIR(非電離放射線=電磁波)曝露基準を確立し、特に子どもと妊婦の健康を守る最善の工学的解決策を奨励するよう求めます。
- 私たちは、子ども達が依存性のある有害なプラットフォームや潜在的に危険なレベルの放射線(電磁波)に継続的に曝露されること特有の健康リスクについて、広範な公衆教育を強く推奨します。
- 医師やその他の医療提供者に対して、スクリーンタイムに関連する行動上および身体的な問題、そして新たな医学分野である臨床電磁気学について情報を取得し、専門的なトレーニングを受けるよう訴えます。 この宣言の要望項目:
- NIRを放出する機器の製造者や提供者に、安全性の証明の負担を移すべきです(山口注:消費者側に負わせるのを辞めて製造者や提供者側に負わせるようにするべきという意味)。
- 人々の良心と認識における、この根本的で進化的な変化に資金を用意する為の革新的な方法を強く推奨します。
- 電気過敏(電磁波過敏症)の重篤な症状を示す子どもがいる家族への財政的な支援と補償
- 管理者がこれらの責任を果たす為の法的受託者義務についての広範な公衆教育を強く推奨します。
- ワイヤレス製品からのNIR放射を大幅に削減し、安全性で競争する為の技術提供者間の協力的な革新を支持します。 カナダ議会報告書の推奨事項 ‘RADIOFREQUENCY ELECTROMAGNETIC RADIATION AND THE HEALTH OF CANADIANS’(https://www.ourcommons.ca/DocumentViewer/en/41-2/HESA/report-13/)に注目を再度集める機会でもあります。
★Jörn Gutbierさん(工学士/電磁波問題に取り組むドイツの消費者団体diagnose:funkの取締役会長/ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州建築家協会認定フリーランス建築家/ドイツの「バウビオロギー+サステイナビリティ研究所」認定の建築生物学者)の発表より抜粋、訳
携帯電話の放射線のリスクを解釈する権限は誰にあるのだろう?
産業カルテルのキャンペーン、放射線防護連邦庁、ICNIRPについて:
2022年には、ドイツで4つのメディアキャンペーンが行われ、そのメッセージは「携帯電話の放射線は子どもや大人の健康にリスクをもたらさない」というものでした。 diagnose:funkは‘Brennpunkt (Focus)’(山口注:この組織のマガジン)において、これらのキャンペーンで人々が誤情報を与えられていたことを証明し、操作の戦術を明らかにしています。(山口注:2023.1.15の記事。https://www.diagnose-funk.org/download.php?field=filename&id=513&class=DownloadItemでPDFがダウンロードできます。時間の関係で詳しい話はありませんでしたが、詳細はこのPDFに書いてあります。)
★その他、Shelley Wrightさん(Canadian Educators for Safe Technology(CE4ST)のディレクター)、Eileen O’Connorさん(The EM Radiation Research Trustの共同創設者でありチャリティー・ディレクター/the International EMF Allianceの共同創設者であり取締役会役員)、Pernille Schriverさん(Europeans for Safe Connections の副会長/The Danish EHS Associationの国際コーディネーター)、Lyn McLeanさん(EMR Australiaの創設者でありマネージング・ディレクター)、Mary Anne Tierneyさん(登録看護師/公衆衛生学修士/電磁放射専門家/SafeTech NC(ノースカロライナ州)のディレクター/Blue Ridge EMF SolutionsのCEO)、Marlena Krugerさん(MindUnique EducationのCEOであり創設者/TechnoLife Wise Foundationの創設者でありディレクター)が電磁波の危険性や、それぞれの団体の取り組みなどについて話されました。
★私(山口)
電磁波問題市民研究会(Japan EMF Action)の、携帯基地局やスマートメーターに関する取り組みやその実績(295件の基地局の事前阻止や撤去など)について話しました。また、世界中の良心的な科学者のおかげで、電磁波の健康影響を示すエビデンスが増え続けており、それについて山口は国際学会報告としてまとめて日本臨床環境医学会の集会と学会誌で発表することができたことに言及しました。
さらに、学校でのWi-Fiの使用に関して、「いのち環境ネットワーク」の代表である加藤やすこさん等と、文部科学省の担当者と面談し、紙の教科書の使用は義務で、デジタル教科書の使用は任意であるとの回答を得たが、Wi-Fi使用については、総務省の判断に委ねる、という呆れた返事だったことも説明しました。
その他言及した事から抜粋、訳:
日本では、総務省はICNIRPの危険なガイドライン等を言い訳にして、無線周波放射(電磁波)の非熱効果を否定し続けています。 同じように、「電磁界情報センター(Japan EMF Information Center)」という組織が、日常的な無線周波放射(電磁波)被曝が無害であるかのように装い、この誤った主張を精力的に宣伝しています。センターは、所長と5人のスタッフで構成されており、この5人のスタッフのそれぞれが電力会社から出向しています。このセンターは、それが「中立的」な組織であると主張していますが、決して中立ではありません。
日本のメディアは、EMF(電磁場)の健康影響が増え続けている問題や、EMF安全詐欺(電磁場が安全であるかのように騙すこと)の問題について、ほとんど報道していません。
「デジタル時代における子どもの人権に関する国際宣言」は、親がEMF曝露のリスクについて知らされていないことを指摘していますが、日本においても同様で、子ども達は守られないまま置き去りにされています。
非常に心配な事に、ADHDなどの発達障害が急増しています。
さらに日本では、化学物質過敏症の子ども達の数が急速に増加しています。これも、環境中の無線周18波放射(電磁波)が急増していることと関連があるのでは、と私は疑っています。なぜなら、EMF曝露が化学物質暴露と相乗効果を持ち得ることが指摘されているからです。
私たち、世界中の市民が協力し合って、この深刻な問題に取り組まねばなりません。「デジタル時代における子どもの人権に関する国際宣言」を契機に団結を深め、EMFの健康影響についての真実、そして、プライバシーと人権の商業的搾取について、広く人々に伝えていきましょう。それぞれの地域、そして世界中で、世の中が大きく動き出す転換点(tipping point)を目指して闘いましょう。
私たちは必ず勝利します(We shall overcome)!
★Gresserさんのウェビナーの結びの言葉より抜粋、要約、和訳
「今回の皆さんの発表からもわかるように、ICNIRPが非常に力を持って効果的に戦術を駆使しているので、私達は、しっかりネットワークを構築してそれを最大限に生かす革新的な方法を研究して対抗していかねばならない。」
★Woodさんから、この宣言の署名は2024年を通して集め続け、順次様々な国際機関に提出していくので、引き続き宜しくお願いします、とのことでした。
宣言書と初期の署名者リストは、2023年11月20日の「世界子どもの日」に国連事務総長に提出されました。
今後の提出予定日は以下の通りです:
国連人権理事会:2024年2月12日
欧州理事会会議:3月21日
国連経済社会理事会:4月9日
WHO(世界保健機関)第77回世界総会:5月27日
世界子どもの日:6月9日
★署名フォーマットのアドレス
https://www.thechildrensdeclaration.org/become-a-signatory
「このフォームは全ての人々の為のものです! 医師、博士、弁護士は宣言の署名者としてリストアップされます。 他の専門家、教育者、親、子どもの擁護者、そして組織は支持者としてリストアップされます。」
署名で必須なのは、First name(名前)、Last name(苗字)、Email(メルアド)、Country(国名)だけです。皆様、ご署名・拡散、どうぞ宜しくお願いします。