電磁波について、あらためて知ろう 第1回

鮎川哲也(電磁波研事務局)

電磁波とは

 多くの人がスマートフォンやWi-Fiをするようになって、電磁波をついて耳にする人も多くなったのではないでしょうか。同時に私たちのまわりには電磁波発生源が増えています。先に記したスマートフォンなどを通話したり通信したりする電波(電磁波)があり家庭やオフィス、さらに電車の車内などにもWi-Fiで通信するための電磁波が飛び交っています。
 そこで、電磁波とは何かについて解説していきます。
 電磁波と一般的に使われるものの代表にはスマートフォンなどの携帯端末やWi-Fiなどで使われるマイクロ波や高周波と呼ばれるものと家庭用電化製品などに使われる超低周波があります。

図1

 これだけでなく私たちに一番身近な光(可視光線)も電磁波の一種ですし、テレビやラジオの電波も電磁波で、レントゲン検査に使われるX線も電磁波です。
 ただし、これらすべてを電磁波とは呼ばず、周波数の違いによって呼び方を変えています。少し難しい話になりますが、電磁波とは電気と磁気によって成り立ち、電気の力が発生する電界と磁気の力が発生する磁界が生み出しながら移動しているものです。電界と磁界は常にお互い振動しており、一秒間の振動数を周波数と言い(図1参照)、Hz(ヘルツ)で表します。 周波数の高いものにレントゲン検査のX線などがあります。その次の周波数の高い順に、光、高周波電磁波(電子レンジ、携帯電話、ラジオ、テレビなど)、超低周波電磁波(家庭用電化製品など)などと続きます(図2参照)。

(図2)電磁波の種類。出典・電磁界情報センター(主として電力会社からの資金で運営され,電磁波は安全だとPRしている機関)
電磁波の表し方と影響

 高周波電磁波の単位は電界をV/m(ボルト/メートル)、磁界をA/m(アンペア/メートル)で表しますが、波長が小さいため、電場と磁場が一体化しているので、まとめて、μW/c㎡(マイクロワット/平方センチ)、mW/c㎡(ミリワット/平方センチ)などの電力密度(電力束密度)という単位を用いることがあります。
 一方の超低周波電磁波は電界をV/m(ボルト/メートル)、磁界をμT(マイクロテスラ)で表します、かつてはmG(ミリガウス)を用いていたので、こちらの方が耳馴染みがある人もいるでしょう。
人体への影響は
 電磁波を受けたり、浴びたりすることで人体にどんなことが起こるのでしょうか。以下がすべてというわけではありませんが、いくつか紹介していきます。
 刺激作用:強い超低周波電磁波により、体が刺激されたり、目に閃光を感じたりするなどの作用のことを言います。
 熱作用:強い高周波電磁波による、体の温度が上昇する作用のことを言います。電子レンジは、この作用を利用して調理をします。
 非熱作用:刺激作用や熱作用を引き起こさない程度の強さの超低周波電磁波・高周波電磁波による、体に対するさまざまな作用のことを言います。
 刺激作用や熱作用は身体に痛さや熱さを感じるため、電磁波の影響があることが自分自身でもすぐわかります。しかし、非熱作用は痛いとか、熱いと感じないため、何も影響がないと思ってしまうでしょうが、電磁波を浴びているのは間違いないので何らかの影響があると考えています。

低周波音と低周波電磁波は違う

 最近、電磁波について一番耳にするのは携帯電話やスマートフォン自体や携帯電話基地局から発生する高周波についてではないでしょうか。一方、家庭用電化製品から発生する低周波について、よく低周波音と混同していることをよく耳にします。
 低周波音と低周波電磁波は違うものです。音も周波数のHz(ヘルツ)で大きさを示すので間違いやすのでしょう。しかし、低周波音は空気の微小な圧力変動です。高速道路の近くや風車、さらに変圧器などからブーンという音が聞こえるとか、耳には聞こえないが振動を感じるという場合は低周波音の可能性が高いです。これらの低周波音についてはここでは触れません。

私たちに身近な電磁波

 さて、これからは私たちに身近な電磁波について考えます。携帯電話が普及する前、主な電磁波発生源は高圧送電線や鉄塔、配電線、そして家庭用電化製品でした。
 これらからは超低周波電磁波が発生しています。これらは目に見える施設やモノであり、どこから発生しているかを知ることができます。そもそも、電磁波が問題になったのは、1979年、米国のワルトハイマ-らが「磁界が高いと想定される送電線の近くに住む子どもは小児がんのリスクが高い」という疫学研究結果を発表したことから電磁波に関心が高まりました。発生していた電磁波は超低周波です。
 その後の疫学研究でも、送電線の周囲での国際指針値よりも遥かに低いレベルの超低周波磁界への曝露であっても、小児白血病のリスク増加との関連を示す結果が報告されるようになりました。
 こうした状況から、世界保健機関(WHO)は 1996年、電磁波の健康リスク評価などを目的とした「国際電磁界プロジェクト」を発足させ、WHOの下部組織である国際がん研究機関(IARC)は「平均0.4μT(4mG)以上の低周波磁界の環境では、小児自血病の発症が2倍ほど増える」という各国の疫学調査に基づき、IARCは2001年、超低周波磁場を「ヒトへの発がん性があるかもしれない(グループ2B)」と評価しました。超低周波電磁波はこのように身体に影響があることを国際機関は認めています。
 このグループ2Bとは「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(Possibly carcinogenic to humans)」とされています。
 最近の傾向と電化製品の変化により超低周波電磁波を発生する機器は少なくなりつつあります。しかしながらIHクッキングヒーター、ACアダプター、インターフォンのコントロールパネルなどは比較的強い超低周波電磁波が発生しています。

多く発信されている高周波電磁波

 さて、昨今、一番身近な電磁波ともいえるのが高周波電磁波です。高周波電磁波の発生源として携帯電話本体やタブレット、携帯電話基地局、Wi-Fi、スマートメーターなどがあります。
 スマートメーターも大きな課題や問題がありますが、今回は携帯電話基地局について考え、スマートメーターについては次回、取り上げたいと思います。
 さて、高周波電磁波の携帯電話やスマートフォンの電波については変化が激しいのが現状です。そして、現在、携帯電話基地局からの高周波電磁波が大きな課題だとも言えます。
 最近ではスマートフォン向けの5Gが普及しつつあります。5Gは第5世代移動通信システム(5th Generation)の名称で、周波数が5GHzという意味ではありません。この点を混同されている人もときどき見かけます。4Gは第4世代で、3Gは第3世代。3Gは順次対応を終了しつつあります。
 少しややこしいのですが、家庭用のWi-Fiは2.4GHzの周波数を使っていましたが、5GHz対応の機器も広まっています。こちらの5Gは周波数の5GHzのことを指します。
 では4Gと5Gは何が違うのでしょうか。一番の大きな違いは使われる電磁波の周波数です。4Gは700MHzから3.5GHzの間の周波数が使われます。それに比べて5Gは3.7GHz、4.5GHz、28GHzという圧倒的に高い周波数の電磁波が使われます。5Gになることで各携帯電話会社は高速・大容量の通信が可能と謳っていて、メリットばかりが強調されています。
 しかし、5Gになったから危険なのではなく、3Gであっても、4Gであっても携帯電話基地局からの電磁波は問題があります。それにまだ4Gで通信しているところは数多くあります。
 携帯電話基地局からの電波は24時間、365日発信し続けています。そのため、とくに携帯電話基地局の近くに住む人は休みなく高周波電磁波を受け続けることになります。では、携帯電話がつながらない地域に行けば、携帯電話基地局からの影響を避けられるのではと思うことでしょう。しかし、携帯電話事業者からの報告に基づき、総務省がまとめた報告によると、2023年3月末の全国の5G人口カバー率は96.6%にもなっています。4Gも含めると人口カバー率はほぼ100%になることからも、避けることができない状況だということがわかります。どこにいても携帯電話がつながり、つまり、どこにいても高周波電磁波を浴びることになるのです。
 また5Gの28GHzというミリ波は、これまで以上にヒトが24時間365日、浴びることを経験していない周波数の電磁波です。アメリカのカリフォルニア州では消防署の近くに5G基地局が設置されたところ、消防士が頭痛、不眠などを訴え、5Gの範囲ではない地に移ったところ症状は治まったというケースもあります。まだどれほどの影響があるかは不明なところもありますが、これに限らず5Gによる影響は世界各地にあり、スイスやベルギーのブリュッセルは5Gの導入をいったん中止していました(現在は開始しています)。
 また、5Gの電磁波は周波数が高いため飛距離が短く、さらに直進性が強く障害物があると届きにくいので、基地局を多くつくる必要もあるのです。そのため、今後5Gの基地局がどんどん増えていく可能性もあります。中には道路の下のマンホールに基地局のアンテナを設置するということもあります。

発生源をなくす、離れる、弱めるが基本

 では携帯電話基地局などからの高周波電磁波から避けるには、どうしたらいいのでしょう。
 現代社会では携帯電話を使わない生活は非常に難しいでしょう。まずは携帯電話やスマートフォンの使用頻度を減らすことです。通話をする場合は可能なら直接耳に当てず、ハンズフリーを利用するなどの方法がよいでしょう。また、夜寝るときには頭の周辺には携帯電話やスマートフォンを置かないことで、それらの機器からの電磁波を軽減できます。
 基本は電磁波発生源をなくす、離れる、弱めるです。これは携帯電話やスマートフォンだけでなく、その他の電化製品についても同様です。寝る時に頭の近くにスマートフォンを置いて充電をしていませんか。それでは頭で電磁波を浴び続けることになります。ACアダプターを頭の近くに置かないことは非常に大切です。
 電磁波に限らないことですが、とくに電磁波については技術が変化(進化とは一概に言えないと考えるので進化とは表現しません)しているので、どうなっているのかをよく知る必要があります。専門的なことではなく、どうすればよいのか、何が正しくて、何が正しくないのかです。
 イングランドの哲学者は「知は力なり」と言い、原因を知らなければ、結果を生み出すこともできないとも言っています。正しく電磁波について知り、正しく対応することがとても大切だと考えます。
 次号では電磁波の対策などをもう少し詳しく紹介していきます。
 電磁波問題市民研究会では、今後もできるだけ正しい情報を提供し、続けます。(つづく)

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