電磁波について、あらためて知ろう 第2回

鮎川哲也(電磁波研事務局)

 私たちの身近には電磁波を発生するものが多くあります。携帯電話基地局、スマートフォン、そしてスマートメーターがあることについては前回紹介しました。今回はそれら以外にも気をつけるものと見落とされがちな電磁波発生源や対策などにについて解説します。
 スマートフォンなどが普及する前はテレビ、冷蔵庫、電子レンジが強い電磁波を発生する代表的なものでした。テレビ、冷蔵庫は低周波電磁波を、電子レンジは低周波電磁波と高周波電磁波を発生していました。「いました」と過去形で記したのは発生する電磁波が変わった機器があるからです。

体のすぐ近くから電磁波を浴びるIHクッキングヒーター
テレビの電磁波は低周波から高周波へ

 まず、テレビはブラウン管から液晶やプラズマ(※現在、プラズマは国内では生産中止されています)などの平べったい機器になりました。そのため低周波は弱くなりましたが、液晶から高周波が出るものになりました。初期のものより改良が進み、発生する電磁波は少し弱くなっています。大きな画面でも最低でも2mくらい離れれば電磁波の影響はゼロではありませんが、弱くなります。とにかく離れることが重要です。今ではかなり大きな画面もありますが、大きくなればなるほど離れることが重要です。
 電子レンジは正面はある程度は電磁波対策がされていますが、横からは高周波、低周波が出ています。電子レンジを使う際は、横や後ろからは離れることです。
 冷蔵庫はかつて強い低周波が出ていましたが、今では低周波はやや小さくなりましたが、高周波が出るものがあります。
 いずれにしてもこれらは「電磁波が強いもの」として注意が促されてきました。今は低周波から高周波へと発生する電磁波が変化しているものもありますが、要注意です。
 次は見落とされがちな電磁波発生源です。

IHクッキングヒーターは要注意

 一時ほど大々的宣伝はしなくなりましたが、オール電化住宅は少しずつですが増えています。大型のオール電化マンションにはガスが来ていなかったり、新しく建てられた住宅はオール電化でガスが通っていなかったりするものもあります。それらの住宅で調理などに使われるのはIHクッキングヒーターです。このIHクッキングヒーターからはやや高い電磁波が発生しています。またIHクッキングヒーターの電磁波は変調していて一定していません。さらにIHクッキングヒーターはすぐ近くで使うので、その影響は大きいものです。要注意です。
 IHクッキングヒーターに関して、電磁波には直接関係ありませんが、火を使わないので安全だと言われていました。しかし、そんな単純なものではないのです。例えば天ぷらを揚げていた場合、鍋の温度が上がり加熱されて火災になったケースがあります。IHクッキングヒーターは鍋底が変形していると、安全装置が正常に働かないケースもあり、加熱し続け鍋から出火してしまうということです。必ず「IH対応の鍋やフライパンを使用してください」とありますが、それは鍋の底が経年劣化でも変形しにくいものという意味もあるようです。そのためIH対応の鍋やフライパンはやや価格が高いことも多く、そういう理由を知らずに以前から使っていた鍋を使い続けて過剰な加熱を防げないことが起こるようです。

インバーター式蛍光灯からも強い電磁波

 最近はLEDが普及して少なくなったようですが、省エネタイプと言われた蛍光灯はインバーター式が多いです。それらからは低周波と高周波の中間(ここでは便宜上高周波と表記します)の強い電磁波が発生しています。電磁波の測定に夜に来てほしいという依頼があり、夜になると体調が悪くなるという人もいます。体調不良の要因はインバーター式蛍光灯が原因のケースが多くあります。
 これからの真下ではあまり長時間おらず、少し距離をとることです。電磁波に過敏な人はインバーター式蛍光灯を避けて、大きなスタンド式の照明を床に置くという方法もあります。ちなみに筆者は天井の照明は使わず、自宅では大きなスタンド式照明を使っています。
インターフォンも実は強い電磁波が出ている
 セキュリティの観点から液晶パネル付きインターフォンを設置する家も多いと思います。とくに受け手側のインターフォンは液晶パネルがあると強い高周波が出ている機種が多くあります。また、無線でつながっている場合は受け手側と玄関の発信側の両方から電磁波が出ています。
 まだまだ電磁波を発生する機器は数多くありますが、これらは見落とされがちな電磁波発生源です。
 携帯電話基地局からなどの電磁波を軽減するためにシールドカーテンで対応する人も多くいます。しっかりしたものできちんと対策をとれば、シールドカーテンは有効なケースも多くあります。
 ただし、昨今はさまざまなものの物価上昇の例にもれず、かなり高価なものになっています。また、シールドカーテンの匂いなどが気になる化学物質過敏症の人もいるでしょう。化学物質過敏症で電磁波にも過敏な人でシールドカーテンを購入後、数日間外で外気にさらして匂いが気にならなくなってから使っている人もいます。
 シールドカーテンをするには注意が必要です。外からの電磁波を防ぐために室内を全面シールドカーテンで覆う人もいますが、室内に電化製品がある場合は、その機器からの電磁波が室内でこもることになり逆効果です。携帯電話基地局の位置がわかっているなら、その方向だけシールドカーテンをして、仮に逆の方向に窓があるなら、そちらはシールドカーテンをかけるにしても、一部はカーテンがかからないようにしたほうがよいでしょう。
 また、シールドカーテンが電磁波を弱めるため、家電製品やインターフォンを直接覆えばよいのではと考えるかもしれません。確かに電磁波を弱めることができるでしょうが、それらの家電製品などは電気が流れています。電気が流れると熱を持つ可能性があるので、なんらかのきっかけで過剰に加熱され発火する可能性もゼロではありません。電気が流れている機器にシールドカーテンなどを直接かけることは絶対に避けてください。

Wi-Fi機器は遠くに離す

 今やかなり多くの人が使っているスマートフォン。スマートフォンがないと飲食店で注文がしにくくなっていたり、飛行機などに乗る際など手続きが難しくなっていたりする状況もあります。スマートフォンが手放せないという事態も今以上に広がるかもしれません。
 では、スマートフォンをどう使えば電磁波を軽減できるのでしょうか。これから紹介するのは一例です。
 前回も触れましたが、スマートフォンだけでなく、いわゆるガラケーであっても寝る際などには頭の近くには置かないことです。同様に頭の近くで充電しているスマートフォンを置かないのは基本中の基本です。夜、寝る前にスマートフォンを見ていて寝落ちして、朝まで頭の近くにあったということは避けるべきです。
 また、最近ではスマートフォンなどの携帯電話で音声通話をする人が減っていますが、携帯電話での通話は短く、可能であればハンズフリーなどにして頭から機器を離して通話をしましょう。
 家庭内でWi-Fiを使っているケースも多いでしょう。本来なら有線LANを使う方法の方がルーターなどからの電磁波の影響をほとんど受けなくてもよいのですが、家族がどうしてもWi-Fiを使いたいとのことで仕方なく使っているということもよく聞きます。その場合は夜、寝る際は電源を落とすことができたらよいでしょう。機器によっては電源を落とすと初期設定を最初からやり直す必要があるものもあります。その点を確認してからにしましょう。それがだめならWi-Fi機器から一番遠くの部屋に寝ることです。

電磁波対策のグッズは?

 また、電磁波を弱めるやなくすためのシールや置物、植物をはじめとしたグッズをよくインターネット上で見かけます。実際に購入して効いたとか、過敏な人におすすめしているものも見ます。しかし、それらのグッズのほとんどは効果がないと思われます。仮にそれらのグッズの近くにスマートフォンなどの携帯電話を置き、電波が届かなくなったり、そのグッズの近くでインターネットが見られなくなったりなど、電波が弱くなることはあるでしょうか。
 一度、測定を依頼されたお宅で電磁波グッズを紹介され、それらのグッズでスマートフォンを使い、通話をしたことがありますが、電話ができなくなるなどのことは起きませんでした。つまりは電波、電磁波は弱くなっていなかったのです。
 それらのグッズにお金を使うなら、健康的な食品に使うべきです。「いや、私には効果があったのです」という人も確かにいます。「だから、困っている人に勧めたいのです」ともいいます。「効果があった」という人は精神的によくなったと感じているのでしょう。しかし、弱くなったと他の人も感じるかは別です。なにより、電磁波を弱くすることができていないので、電磁波を浴び続けることになります。弱くなっていると信じているが実はそうではないことは逆に危険でもあります。
 電磁波への対策は自分が感じる、感じないということも大事ですが、冷静に論理的に対応することも大切です。そうすることで電磁波に的確に対応できるのです。
(次号へ続く)

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