網代太郎(電磁波研会報編集長)
家庭などに普及している無線LAN(Wi-Fi)は、電波を出すアクセスポイントや端末(PC、スマホなど)が体の近くにあることも多く、そのような場合には強い電磁波を浴びることになります。電磁波過敏症の方々を苦しめますし、過敏症でない方も、健康影響を予防するために、できるだけWi-Fiを使わないことをおすすめします。Wi-Fiを使わず電波への曝露をできるだけ少なくしながらネットを利用する方法について、あらためてまとめました。
まず、家の外からネットを引き込む方法については、大きく分けて、①携帯電話の4G、5G電波を受信してWi-Fiなどに変換する、②光ケーブルなどの固定回線を引く、という二つがあると思います。当然、電波でない②がおすすめです。
ルーターの選択、設定
次に、家の中でネットにつなぐ方法ですが、「Wi-Fiルーター」から電波を飛ばす家庭が、たぶん多数派なのでしょう(ルーターとは、端末をインターネットに接続するための装置)。Wi-Fiルーターは、機器の表面にスイッチ類がない製品が多いので、無線機能をオフにできないと思われがちですが、ルーターに接続した端末(PCなど)に設定画面を表示させてWi-Fiをオフにできる製品もあります(図)。Wi-Fi通信を行っていないときでも、ルーターのWi-Fiをオフにしなければルーターから電波が出続けるので、Wi-Fi通信を行わないときは必ずオフにしましょう。
Wi-Fiをオフにできないルーターの場合は、契約している通信会社に、Wi-Fi機能のないルーター、またはWi-Fiをオフにできるルーターと交換してもらってください。そのようなルーターは扱っていないと言われたら、別の通信会社に契約を変えてください。
新たに光回線を引く場合は、Wi-Fi機能のないルーターを提供してくれる通信会社との契約をおすすめします。
スマホなどで有線を使うためのアダプタ
スマホには、LAN(イーサネット)ケーブルの差込口がないので、有線LANで通信をするときには、LANケーブルとUSBとの変換アダプターを利用する必要があります(写真1)。
iPhoneはアップル社純正のアダプターを使うことで接続できますが、アンドロイドスマホの場合は、有線LAN接続に対応していない機種があります。「イーサネットテザリング」に対応している最近の機種であれば、おそらく有線LAN接続が可能と思われます[1]。
アンドロイドスマホの場合は、いわゆるサードパーティー(非純正品)のアダプターを買うことになりますが、機器との相性の良し悪しがあり、相性が悪いと接続してから通信が始まるまで時間がかかったり、まったく通信できない場合もあります。携帯電話会社はスマホを有線LANで使うことについて積極的に案内していないので、ユーザー側が試行錯誤しなければなりません。私の経験では「Anker USB-C to イーサネットアダプタ」が、多くの種類の機器に対して相性が良いという印象です。ネット通販で2500円程度です。
有線LAN差込口がないPCの場合もアダプターが必要です。WindowsPCの場合は、Windowsに対応している旨が表記されているアダプターであれば相性の心配はあまりなさそうです。
スマホは機内モードに
スマホに有線LANに接続すれば、電波を送受信しない「機内モード」にしても、ネット通信できます[2]。機内モード中は携帯基地局との間では通信しないので電話の着信などはできなくなりますが、電波の被曝を減らせるので、可能ならば「機内モード」にしておきましょう。ネット経由の電話サービス(通話アプリなど)を利用すれば、電波を出さずに通話することも可能です。
我が家の例
ご参考まで、筆者の自宅での有線LAN環境についてご紹介します。自宅は古い2階建ての木造住宅で、数年前、耐震改修工事をしたときに、壁の裏に有線LANケーブルを通してもらい、2階の各室の壁に有線LANケーブルの差込口を設け、1階に置いたルーター(Wi-Fi機能なし)と有線接続できるようにしています。
1階の部屋は、写真2のようにしています。ルーターとつないだスイッチングハブ(有線LANを分岐させる装置)に、巻き取り式の有線LANケーブル3本を取り付けています。ネットを使いたいときは、ケーブルを伸ばしてPCやスマホなどに接続します。子どもの友だちが遊びにきてオンラインゲームをするなど、どうしてもWi-Fiを使いたいときのために、小型の携帯用Wi-Fiルーター(「ホテルルーター」などと呼ばれて販売されています)も用意。Wi-Fiルーターにはスイッチ付きの電源コードを付けており、Wi-Fiを使うときだけオンにして、使い終わったらオフにするようにしています。【網代太郎】
[1]新しい機種は5G対応が多いので心配という場合は、5G対応でも5G通信をオフに設定できる機種を選ぶ。
[2]機種によっては機内モード中でもWi-FiまたはBluetooth通信が可能な設定にできるものもあるので、すべてが確実にオフになっているか確認が必要。