送電線で小児白血病・成人脳がん・ルーゲーリック病・流産のリスク増加

ニュージーランドの送電線反対運動
 ニュージーランドのワイカト大学で開かれた送電線反対派住民が開いた健康問題フォーラムで、アメリカの研究結果がビデオを使って報告された。その内容は電磁波曝露で流産リスクが80%増大するというものだ。
 米国の研究とは、米国オークランドにあるカイザー財団調査研究所のディ・クン・リ博士らが、3年前にサンフランシスコ市に住む969人の妊娠女性を対象に研究して行なったものだ。
 ニュージーランドのワイカト地区にトランスパワー電力が送電線建設を計画しているが、これに住民たちが反対運動を展開している。

40万ボルト送電線から50メートルの距離
 米国の研究では、1.6マイクロテスラ(16ミリガウス)以上の極低周波電磁波を浴びると、80%流産リスクが高まるだけでなく、小児白血病・脳がん・ルーゲーリック病(運動神経病)・うつ病、と関係する。この1.6マイクロテスラはトランスパワー電力が計画している40万ボルト送電線から50メートル離れた所で計測される値である。「ワカマル-オタフフ」間に送電線が敷かれる計画だが、送電線から65メートル以内の土地所有者は最大で7~8マイクロテスラ浴びることになる。
 ワイカト大学のフォーラムに約百名が参加したが、送電線に反対するロビー団体の「ニュー・エラ・エネルギー(新時代エネルギ-)」は電磁波新基準値として0.1マイクロテスラを提案した。この値は現行のニュージーランド基準値百マイクロテスラより1千倍厳しい値だ。「ニュー・エラ・エネルギー」の副代表ボブ・マックイーン氏は「もし電力委員会がこの値を採用すれば、現行では送電線から65メートルまでがトランスパワー電力が管轄する地役権の範囲であるが、それが送電線から6百メートルまで拡大し電力会社は土地を購入しなければならなくなる」と語った。そうなれば電力会社の経済的な負担は増す。

レイモンド・ノイトラの意見
 フォーラムにはレイモンド・ノイトラ博士が出席した。彼は、カリフォルニア州健康サービス課が7百万ドル(約8億円)かけて実施した電磁波健康影響評価研究に参画した研究者だ。彼は「この研究に3人の研究者が参画して電磁波評価をしたが、極低周波電磁波は小児白血病・成人脳がん・ルーゲーリック病・流産、を引き起こすリスクが大いにあるという結論を3人とも出した」と語った。
 南オークランドの外科医ロビン・スマートは送電線計画で影響を受ける土地所有者だが、「電磁波が健康問題と関係することは証明されていると考えている。1979年以来、多くの研究が行なわれたが統計学的にみても電磁波と健康影響の関係は十分証明されている。ニュージランドの現行基準は馬鹿げている程高い。現行基準値千ミリガウスというのは送電線からわずか30センチメートルのところで測定される値だ。そんなところに誰も住むことはできない」と語った。

攻防はつづく
 電力会社は「現行に基準を守って対処する。地役権は送電線から65メートルまででそこまでが買取りの対象だ」という線を1歩も出ようとしない。
 スマート外科医は「科学研究結果を重視し、送電線から周辺の人たちの健康を守ろうとするのであれば、1ミリガウス以下にすべきだ。そのために送電線から6百メートルまでを電力会社は買取るべきだ」とフォーラムで発言した。【抄訳・渡海伸】

原文:“Power line opponents say radiation standard too high” 2005年7月4日 The New Zealand Herald

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