電磁波過敏症って何? - 対処法を考える集い (上) 宮田幹夫先生ご講演

 miyata

 当会主催で2013年12月1日に都内で「電磁波過敏症って何?-対処法を考える集い」を開催し、64名が参加、ご講演、ご報告の後、活発な質疑応答が行われました。今号は、その「第一部」の内容を掲載します。化学物質過敏症・電磁波過敏症の臨床・研究の第一人者である宮田幹夫先生(北里大学名誉教授)によるご講演です。紙幅の都合で、一部省略等をさせていただきました。【会報編集担当】


 

 ただいまご紹介いただきましたが、第一人者ではなくて、他にやってくれる医者がいないので、少ない医者という意味でご理解いただければと思います。
 電磁波は、においも味もないので、その健康障害は、どうしても気付くのが遅くなります。電磁波過敏症の人は、電磁波に早く気が付く、いわばカナリア的な人ですから、その方々の警告を受け入れることが本当は私たちの使命なのですが、なかなか世の中はそうはいかないものです。

体に影響しない電磁波はない
 放射線から静磁場まである電磁波の中で体に影響しないものは何もありません。紫外線が当たると日焼けという痕跡が体に残ります。可視光線も電磁波ですが、網膜の感光物質が光に当たって変質した瞬間に電気が起こるから物が見えますす。タンパク質の変質という影響が起きているわけなのです。赤外線でも白内障が起こります。体に吸収されたエネルギーは原則として必ず何かします。

熱作用と非熱作用
 これまでは、電磁波の健康障害は熱作用によるものを中心に考えられてきました。熱作用とは、体に吸収された電磁波が熱を出すことです。電磁波の波長と全身や体の一部(眼球など)の長さが一致すると共振が起き、より発熱してホットスポットができたりします。
 ところが、熱作用だけではなくて、低周波の場合の非熱作用による影響もわかってきました。カルシウムの代謝異常や、活性酸素の発生などがあります。細胞の中の情報伝達はカルシウムがやっているので、代謝異常が起これば神経系に異常が出ますから、敏感な人に中枢神経症状が出ても不思議はありません。
 電磁波による影響については、このあたりまでわかっていますが、まだまだわからないことがいっぱいあります。
 国の基準は熱作用についてだけです。非熱作用に関しては、何の基準もありません。

健康障害の報告例

電磁波による主な障害報告

50Hz前後
 小児白血病、カタツムリの早死、脳腫瘍、先天奇形、乳がん、心拍数増加、不整脈、心筋梗塞、細胞からのCa流出、認知症、ベンゼンの毒性増強、電車運転手の認知症増加

超長波—IH調理器
 まだハッキリした報告がありません。

パソコン漏洩電磁波
 神経伝達物質の変調、白内障、調節障害、角膜ビラン、アレルギーの増悪、肥満細胞からのヒスタミン流出、血糖値の上昇

携帯マイクロ波(電子レンジとほぼ同様の周波数)
 脳腫瘍、脳血液関門の拡大、頭痛、神経細胞の減少、脳神経伝達物質の変動、脳血流変動、不定愁訴、鶏卵孵化障害、精子数減少、中継基地周辺で不定愁訴の増加、中継基地周辺のガンの増加 、母親携帯電話使用で発達障害増加

 電磁波による健康障害などについては膨大な研究報告がありますが、日本ばかりではなく、世界中がほとんど無視しています。
 スイスで電車の運転手は駅務員に比べて認知症が非常に多いという報告があります。運転手はモーターの上に乗っているようなものですから。
 IHヒーターについては研究報告がまだありません。
 パソコンの漏洩電磁波もけっこう多く、アレルギー憎悪などの報告があります。
 携帯電話が増えています。電磁波は細胞分裂が盛んなところほど影響を及ぼします。一番盛んなのは、睾丸と、妊娠初期の胎児の細胞です。ですから、精子が減少して不妊になる恐れがあります。母親が携帯電話を使用していると、生まれてくる子どもに発達障害が2倍多いとの報告があります。
 また、子どもは頭蓋骨が薄いので、電磁波が脳幹まで到達します。しかし、日本は一生懸命、子どもに携帯電話を持たせようとしています。とにかく商売が最優先されています。

電磁波過敏症とは
 電磁波過敏症は、弱い電磁波による不快な症状を訴える人たちです。電磁波を感じるけれど症状は出ないという「電磁波感受性」の人たちも、けっこう多くいそうです。過敏症と感受性の境ははっきりしておらず、一部重なっているかもしれません。

電磁波過敏症の症状

・神経症状
  頭痛、疲労、睡眠障害
・皮膚症状
  皮膚の刺す感じ、灼熱感、発疹、かゆみ
・粘膜症状
  目の灼熱感、口の粘膜の異常感
・その他
  筋肉痛、顎関節症状、耳鼻咽喉症状、消化器症状など

 これはスウェーデンの報告から引用したもので、電磁波過敏症の症状で一番多いのはこのあたりです。神経系に影響するのでどのような症状が出ても不思議ではなく、厄介です。また、化学物質過敏症の人もそうですが、過敏症の人には顎関節症が多く見られます。
 アレルギーの場合、原因の食物を食べた後などにすぐ症状が出る即時型反応と、ゆっくりと反応が出る遅延型の反応があります。電磁波過敏症も同様で、即発型、遅発型があるように思います。

電磁波過敏症は症候群
 電磁波過敏症は「種々の種類の患者が入っている。単一の疾患として研究しにくい(Scroettner 2007年)」。いわゆる電磁波過敏症候群ともいうべきで、いろいろな患者が入っていますということです。

電磁波過敏を訴える患者

・本物の電磁波過敏症
  即発型
  遅発型
  反応する周波数に差
・本物の電磁波過敏症と電磁波恐怖との混在
・電磁波恐怖症
・思い込み
・妄想などの精神疾患

 これは坂部貢先生が分類してくれました。電磁波過敏症の中にも、特定の周波数に反応する人もいるし、いろいろな周波数に反応する人もいます。また、電磁波過敏症があると、「電磁波恐怖症」が混在してきます。体に悪いものに恐怖感を持つことは、当然と言えば当然です。それから、本当は過敏でないけど、何となしに電磁波が怖いという「思い込み」の人もいます。ひどくなると電磁波を誰かに私は浴びせられているという妄想が出ます。
 もともと電磁波過敏症がある人が、恐怖感を募らせると妄想も出やすいので、境目がはっきりしません。この妄想のような人たちも、体調が良くなってから「以前、そういう(妄想のような)ことを、あなたは言っていましたが」と尋ねたら、「私はそんなこと言った憶えがない」と言われることもあります。

過敏症と健常者で感受性の差が小さい
 「電磁波負荷試験で、電磁波過敏症患者群と対照者群との間に感受性に重なり合いがある(Scroettner 2007年)」。電磁波負荷試験で電磁波過敏症を区別しようと努力されていますが、過敏症の人と「健常者」との間で、感受性の違いがそれほどないのではないかという問題があります。
 携帯電話の電磁波とだいたい同じような電磁波を曝露させながら作業をさせて、症状や作業効率を調べた報告があります。自覚症状は確かに過敏症の人にたくさん出ましたが、健常者にも出ました。作業効率は、過敏症の方よりも健常者のほうが落ちました。自分は健常者だと思っている人も、電磁波の影響は受けているのです。だから、電磁波の負荷試験で差がつきにくいのは、当然と言えば当然なのです。

検査機器も電子機器
 問診以外に、検査で異常が出れば、電磁波過敏症の患者さんの診断が確実になりますが、ほとんどの検査機械は電気器具です。だから、患者さんがその電気器具から出る電磁波に反応していれば、負荷試験をやってもあまりハッキリしないことになります。
 そこで、NIRO(近赤外線酸素モニター)という装置を使い、近赤外線で脳の酸素濃度を測って、電磁波が影響するかを調べました。近赤外線も電磁波ですが、通信用の電磁波などとは違います。この機器で、電磁波による過敏症の人の血流変動を確認できる可能性があることがわかりました。
 しかし問題もあって、先ほどの話と同様、健常者も変動する可能性があります。また、この装置は脳の表面から1cmぐらいまでしか測れません。それより奥へは近赤外線が通りませんから。だから、患者さんが一番訴える不定愁訴に関係が深い大脳旧皮質の検査には使えません。
 電磁波負荷試験は、これまで31の研究報告がありますが、そのうち24は過敏症と健常者を区別できませんでした。7報告は、負荷試験で異常が検出されましたが、うち2報告は実質同じ報告なので、6報告しかありませんし、この6報告も確実な結果とは言い切れません。私も電子機器を使わない方法などで試験したいと思っていますが、まだうまくいっていません。今のところはっきりした証拠がつかめないので、電磁波過敏症の診断書を書けないのです。
 ただし、私たちの体にはマグネタイト(磁鉄鉱)が散りばめられているので、負荷試験で「普通」の人も影響されるのは当然なのです。マグネタイトについては10年ぐらい前からわかっているのに、研究はなかなかその先へ進んでくれません。

電磁波過敏症の対策
 では、電磁波過敏症の人はどうすれば良いのか、ですが、過敏症の人だけでなく、「思い込み」の人も電磁波を浴びて何らかの不調になるのは当然ですし、その人たちも過敏症の人と同じような苦痛を感じているわけなので、やはり対応が必要です。
 電磁波曝露の軽減が大事です。しかし、なかなか大変です。電磁波は私たちの日常生活でそこらじゅうで飛んでいます。パソコンのLANも電波で飛ぶ時代になっています。携帯電話が通じない所も、山奥の谷筋など以外にはありません。山奥で暮らせば確かに電磁波は減りますが、土砂崩れやクマさんが怖いです。

電磁波対策住宅

  曝露を軽減する方法を図に示しました。 ベッドの下に金属製のものを敷いてアースをとる。私たちが脳波を調べるときも、周囲から電磁波の雑音に入ると調べられないので、細かい金網の上に患者さんを寝かせて脳波をとります。ただし、アースをとらないとだめです。

 電磁波には、電場と磁場があります。電波は、屋根にガリバリウム鋼板を張ったり、外壁に薄い鉄板を張ったり、金属製のブラインドを付けるなどで跳ね返せますが、必ず全部アースをとらないとだめです。
 磁場を跳ね返すのはなかなか難しいです。透磁率の高い材料(鉄が一番安くて透磁率が高いです)を厚めに敷くと、家の中の影響が少なくなります。
 私たちの家は、壁の中に電線が2~3kmは走っており、過敏症の人は影響を受ける恐れがあります。家庭内の配線は普通はプラスチックのチューブの中に走らせますが、鉄パイプの中を通して鉄パイプからアースをとると電磁波をカットできます。
 欧米のコンセントはアースがとれるよう三つ口ですが、日本は二つ口です。日本は100Vだから感電しても死ぬことはないとアースの口を落としたそうです。いつの日か三つ口にしてもらえると、過敏症の人も相当助かると思うのですが。
 そして、使わないときはコンセントを抜く。
 なかなか厄介で、全館でこれをやるのは大変ですから、1部屋だけでも対策をして、電磁波過敏症になった方はそこで暮らすのが良いかもしれません。
 鉄で棺おけを作って、その中で寝れば電磁波対策としては一番ですが、ちょっとドラキュラじゃあるまいし、そういうところで暮らすと鬱が出てきますので、やはり普通の環境で暮らすのが良いです。人間には適応能力がありますし、電磁波をゼロにするのは不可能ですので、減量作戦でやっていただきたいと思います。

電磁波過敏症と化学物質過敏症
 化学物質過敏症になっている方は、電磁波過敏症になりやすい。ところが、電磁波過敏から化学物質過敏症になる方は比較的少ないのです。欧米に比べて日本では、化学物質過敏症の方が電磁波過敏症になることが結構多い。電磁波環境が日本の方が悪いからなのかもしれませんが、理由はよくわかりません。
 電磁波過敏だけの患者さんは少ないので、そういう方々のデータを積み重ねることも非常に難しいのです。
 では、なぜ化学物質過敏症を持っていると電磁波過敏になりやすいのか。

kasanka 化学物質過敏症の発症についての一つの考え方ですが、体に入った化学物質は、普通は解毒されてどんどん体外へ出ます。ところが、解毒能力は人によってまちまちで、解毒がちょっとでも遅れると、体の中に酸化窒素ができます。これに化学物質が当たると過酸化亜硝酸ができる。過酸化亜硝酸ができると、活性酸素ができる。活性酸素ができるとまた酸化窒素が…という悪循環になります。そして、神経の過敏反応が起き、毒物の脳内進入がしやすくなります。

 そして、電磁波もやはり活性酸素を増やしますし、電磁波も脳内への毒物進入を促進します。毒物が脳内に入りやすくなりますから、電磁波を浴びせると、動物が死ぬ化学物質の中毒量も減ります。
 また、電磁波によって神経の過剰反応が出ると、化学物質過敏症で過酸化亜硝酸が出るのと同様の問題が出てくるのではないかと考えられます。

電磁波過敏症の治療(栄養)
 電磁波過敏症も化学物質過敏症も、結局は基本的に治療方針は似たものになります。
 まず、栄養です。

電磁波過敏症の治療と対策

栄養
 過酸化亜硝酸の捕集—ビタミンB12
 過酸化亜硝酸や活性酸素の捕集—ビタミンC、E、カロチノイド、フラボノイド、セレン、亜鉛、α-リポイック酸
 細胞の呼吸改善—酸素補充、CoQ10、L-カルニチン
 代謝改善—各種ビタミン
 
神経過敏性の抑制—マグネシュウム、メチル基、カルシュウム

 化学物質過敏症の方には薬をあまりお勧めしたくないので、食べ物からとるのが良いです。B12が一番多いのはレバーです。カロチンはトマト、ニンジン、カボチャなど。フラボノイドは大豆。豆腐より、おからが良いです。
 スウェーデンの報告では、電磁波過敏症の人に一番効くのはマグネシウムだそうです。一番良いのはにがりを少し多めにとっていただくこと。スーパーで安く売っていますし、お豆腐屋さんでも分けてくれます。
 カルシウムも必要です。ヒジキは非常にカルシウムが多いのですが、ちょっとヒ素が多いので、電磁波過敏症の人とか、妊娠中の方は、控えめにした方が良いかもしれません。
 私たちの医療はまだまだ非常に未発達で、体調を本当に回復する薬はほとんどないです。血糖値を下げる薬はあっても、糖尿病を治す薬はないです。血圧を下げる薬はあっても、高血圧症を治す薬はないのです。でも、マグネシウムにしても、電磁波過敏症に効くばかりでなく、筋肉の弛緩作用があるので、肩こりに効くし、血管が広がるので血圧が下がるとか、普通の人にもプラスの面があります。体の健康管理は、栄養が一番基本ですから、地味ですけども、電磁波過敏症を良くするには、こつこつとやっていくしかないのです。

フィンランドからの電磁波過敏症 治療報告
(2013年)

              有効例
 食事           69.4%
 サプリメント      67.8%
 運動の増加      61.6%
 精神的治療         0%
 投薬              0%

 フィンランドから電磁波過敏症の報告です。これが今年(2013年)の最新のニュースです。食事が一番有効です。ご自宅の地味な家庭のお惣菜が一番体に良いです。それから、サプリメントと、運動の増加。「精神的な治療」は精神病の薬や治療のことですが、電磁波過敏は精神病とは違いますから、これは効きません。
電磁波過敏症の治療(ストレス解除)
 ストレスが増えると、先ほど言った酸化窒素が非常に増えて、悪循環になります。電磁波を怖がることでストレスが加わると良くないので、できるだけ好きなことをやって遊んだ方が良いのです。電磁波過敏症になると、なかなか表へ行って遊びにくいかもしれませんが、その中でも多少悪くても我慢できる所があったら出かけた方が良いです。
 それから、昔ながらの養生です。早寝早起き、軽い運動、お風呂や温泉です。

電磁波過敏症の治療(歯科的対策)
 過敏症の方に多い顎関節症の治療によって、過敏症にも効果がある場合があります。
 また、歯の中にアマルガムがあれば、これは水銀の合金なので、もちろん取った方が良いです。
 また、歯の中にいろいな金属があると、イオン分解しますから、人によって電流が流れます。それによって患者さんに問題が出るかもしれませんけれども、その場合は歯科の先生と相談しながら治療していただければ良いと思います。

高周波と低周波
 「高周波による電磁波過敏症では身体的な反応が出やすい。低周波による電磁波過敏症は神経症的な反応が出やすい。(Johansson A, et al: 2010)」と、最近、精神科の先生が報告しました。「神経症的な症状」だから「思い込み」なのだと思われると困ります。電磁波は神経の伝達物質に影響するので、精神的な症状が出る可能性があります。
 もう一つは、高周波は、どこから出ているのか自分で見当がつくことが多いわけです。だから、ある程度は避けられるから精神的な不安感はあまりないのです。ところが、低周波で症状が出ると、家庭内に居場所がなくなります。だから、神経症的な症状が出ても不思議はないと思います。

電磁波過敏症と精神疾患
 電磁波で影響が出ない人を「健常者」と言っていますが、これは「電磁波鈍感症」なのです。健常者と思わないでください。体の中にマグネタイトがいっぱいあるのに感じないのですから。

seishin

 それから、先ほど言いました電磁波感受性の人たち。感受性と過敏症の間はハッキリしません。
 電磁波過敏症になると、電磁波が怖くなるのは当然ですよね。恐怖感があるからこそ、私たちは避けて、これまで進化の過程で生き延びているわけですから。だから、恐怖症が出てきても構わないと思います。
 ただし、恐怖症が行き過ぎると、妄想が出る方が出てきます。ここまでくると、なかなか治療が難しくなってきます。
 先ほど電磁波過敏症には精神的な薬は効かないと言いましたが、電磁波過敏症のうえに電磁波恐怖症があると、それがストレスになって過敏症が増幅しますので、恐怖症にもそれなりに対応していく必要があるかと思います。

電磁波恐怖症を悪化させないために
 妄想がひどいときには、やはり心療内科などの治療も必要になってくると思います。
 そこまでいかないうちに、ご自分でやれるのは、いわゆる行動療法です。行動療法とは何かというと、弱い電磁波を浴びてもらい、調子が悪くなったけれども、まあ、何とかなったということを、ご自分で経験、実感してもらうことです。電磁波過敏症は、つらいけれども、死ぬ病気ではない。そういうことをある程度実感して、恐怖症に打ち勝っていく必要があるのです。
 もう一つは呼吸法です。腹式呼吸です。健康管理に何が効くかというと、腹式呼吸が一番効きます。お寺の和尚さんが大声でお経をあげる、あれは腹式呼吸です。神主さんも、笏を抱えて大きな声で祝詞をあげます。あれも腹式呼吸です。牧師さんもマイクを使わずに大声でお説教します。禅宗のお坊さんも、座禅を組むときに腹式呼吸です。宗教関係者は、なぜか数千年前からこれをやっているのですが、腹式呼吸をやりますと、脳にアルファ波が出て、非常に脳が落ち着いてくるのです。
 だから、もしお宅に宗教のある方は、大声でお題目でも、念仏でも、賛美歌でも、何でも良いのですが、やっていただけると良いです。そうでない方は大きな声で歌を歌うとか、ヨーガや太極拳です。こういうごくごく地道な健康管理が一番良いのではないかと思います。
 それから、もう一つ筋弛緩法があります。ぐっと肩に力を入れて、ふわっと力を抜く。ちょっと調子悪いときに、これを数回繰り返すと、相当、恐怖感とか落ち着いてきます。
 女性の方は不安、恐怖が強く出る傾向があります。過敏症は女性の方が多いです。自己防衛本能が女性の方が高いですから。環境が悪いと言って女性より先に逃げ出すような男性は絶対女性に好かれませんから、男性の感受性は女性より悪くしてあるのです。そうでないと子孫が残せないですから。

情報にあおられない
 費用があまり高い治療法は、やらないでくださいね。電磁波過敏症は慢性疾患ですから、あまり高いとお金が続きません。
 まちで売られている電磁波防御グッズは、相当うそがあります。電気の専門家だったら、まちの電気屋さんでも電磁波のことはわかりますので、これが果たして有効なのかを、相談されると良いかと思います。
 それから、電磁波過敏になりますと、何か良い方法ないかとインターネットなどで探したりして、情報が入り過ぎます。申し訳ないのですが、患者の世界では、重症の患者さんが一番大きな顔ができる。だから、重症の情報がどうしても入りやすいと思いますので、そういう情報にあおられないことです。
 もう一つは、電磁波過敏症というのは、死に至る病でないと。だから、あっちこっちで支障が出ますけども、そういう点では安心して自覚しておいていただきたいと思います。
 回復までには時間かかりますけども、化学物質過敏症に比べると治りが良いのです。ただし、電磁波恐怖症から妄想まで来た人は、ちょっと治りが悪い人も出ますので、電磁波に負けないようにして頑張っていただかないとまずいと思います。

電磁波に集中しすぎない
 人間は、集中するとものすごく感度が良くなります。例えば味覚でも、ソムリエがワインを何年もの、どこの産地と言い当てられるくらい、味覚は訓練すれば発達します。調香師もそうです。
 電磁波に関してどんどん集中して、電磁波があるかどうか神経を練磨すると、電磁波に非常に敏感になる可能性があります。だから、できるだけ自分を訓練しないことです。集中すると、とんでもないことになってきますので。
 それから、電磁波に対する感受性を訓練すると、頭にどんどん記憶してしまいます。女性ホルモンは記憶のホルモンです。犯人が女性に顔を見られると致命傷です。男性は、見てもボヤッとしか覚えていません。だから、女性ホルモンを利用して電磁波過敏を頭にたたき込むと、男性に比べて非常に不利になってくるのです。頭の中でどんどん訓練しないということが一番大事です。

長期戦をズボラに
 この病気はいくら頑張っても、すぐ、1カ月でパッと良くなる病気ではないので、集中してどんどんやろうと思って真面目に考え過ぎると、体や精神的に参ってきますので、ズボラに治療することがどうしても必要です。また電磁波に遭っちゃった、まあ、ぼちぼち良くなればいいし、と。体は一本調子では絶対良くなりません。自律神経も神経系も、いつも波打っているのが普通ですから、あるときは良くて、あるときは悪いと。電磁波を浴びても、ある時ちょっと落ちても、またすぐ戻ってきますので、そういう点で、ズボラに加療して、長期戦を最初から覚悟していくということが絶対必要だと思います。
 ズボラになって神経を電磁波に集中しないために何が良いかといいますと、適当に遊んでもらうことです。過敏症になる方は、一般の人よりもはるかに優秀で、頭の良い人ばかりです。真面目人間が多いです。電磁波過敏になる人は、おバカさんにはならないということと、それから、感受性が高いので、芸術も鑑賞眼も非常に高いです。私も診療していますと、化学物質過敏症には、芸術関係者は非常になりやすいです。
 私のところ(そよ風クリニック)は診療費1万5000円もかかります。お出でいただく気があっても、できたらその分、健康管理の方に使っていただいたほうが良いと思います。受診していただいても、こういうことしか言えないし、栄養指導しかできませんので、できたら今日の話で満足していただければ一番ありがたいと思います。
 今日の講演のために、一応、過去10年間、最近の情報を全部読みあさってきたつもりですので、このあたりが今の最新情報じゃないかと思います。これで何とか満足していただければありがたいと思います。

質疑応答
 -CTやMRIは何回受けると危険ですか?
 どれくらいということは言えません。死ぬような病気など、どうしても必要な場合は無理してでも受けて、終わったらビタミンCやマグネシウムをとって沈静化するのが良いと思います。ビタミンCはアスコルビン酸の原末が添加物がないし、安いです。アスコルビン酸がだめな方は、天然ローズヒップからのものもありますが、良い物は高いです。それもだめなら、じゃがいも、さつまいもをモリモリ食べてください。
 -アスコルビン酸は、どれくらいとれば良いですか?
 毎食後に1gです。ビタミンCは吸収が良いので空腹時にとると、体がとりすぎたと思ってすぐ排出してしまうので、食後にとってください。飲み忘れたら、次の食後まで飛ばして良いです。過敏症はまじめな方が多いのですが「1g」も、だいたいで結構です。
 -電磁波過敏症の人は、先生がお話しされた白血病などの電磁波による健康障害になりやすいのでしょうか?
 それは、まったく違います。電磁波からの逃げ足が速いですから、むしろ鈍感症の人のほうがなりやすいです。
 -私は線維筋痛症なのですが、患者会で線維筋痛症と化学物質、電磁波は関係があると聞いたのですが?
 慢性疲労症候群、線維筋痛症、化学物質過敏症は非常に近い病気です。米国の化学物質過敏症の診断基準は、慢性疲労症候群、線維筋痛症と重なっても良いとされています。
 -孫は食事の時以外、おそらく1日7時間以上、スマホばかり使っています。いずれ健康障害が起こるのではないでしょうか?
 おっしゃる通りだと思います。私たちは適応能力があり、スマホの電磁波を浴びていないと体調が悪くなるスマホ中毒、携帯電話依存症になる子どもが増えるのではないかと思っています。中毒と過敏症は隣り合わせです。
 -太陽光発電を自宅に設置するのはどうですか?
 難しいご質問です。直流で発電して交流に変え、さらに電圧を上げるので、変換器、変圧器を使います。それらを体に影響をしないところに置くとか、鉄板で囲ってアースをとるなど用心したほうが良いです。太陽光発電で過敏症になった方もいます。
 -電車で隣の方が携帯を使うと特に右のひじが熱を持ったようになります。これは、どういうことですか?
 過敏症の方は症状の好発部位(ある症状や病変が発生しやすい臓器や組織)が必ずあります。そこが特に敏感ということだと思います。特に心配はないと思います。
 -蛍光灯に反応するし白熱灯は製造されなくなるので、LED照明はどうでしょうか?
 LEDを直流で光らせると電磁波が弱くなるそうです。白熱灯は国内で作らなくても輸入品がありますので、白熱灯を使っていて大丈夫だと思います。

※著作権の事情により、会報に掲載した図表の一部をウェブサイトでは差し替えました。

Verified by MonsterInsights