5Gサービス開始へ向け 国が電波防護指針改定案 ICNIRPも国際指針改定案

8月24日までパブコメ募集中
 第5世代移動通信システム(5G)の2020年サービス開始へ向け、総務省の委員会は、電磁波(電波)による健康影響についての国の基準である「電波防護指針」の改定案をまとめました。7月25日からパブリックコメントの募集を始めました(8月24日まで)。また、国際機関である国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)もガイドライン(国際指針値)の改定案をまとめました。両者の改定案の内容は、ほぼ同じです。
 電波防護指針は、携帯電話基地局のように遠くに発生源がある電波と、携帯電話端末のように体のすぐ近くに発生源がある電波について、測定方法の関係から、別々の基準を設けています。
 5Gでは、3.7GHz帯、4.5GHz帯、および28GHz帯の電波を利用する予定です。しかし、体の近くから発生する電波についての電波防護指針は6GHzまでしか定められていません。
 このため、総務省は5Gサービス開始前に6GHzより高い周波数についての指針を決める必要があるとして、「情報通信審議会情報通信技術分科会電波利用環境委員会電波防護指針の在り方に関する検討作業班」を今年2月に招集して検討を開始させました(会報第111号既報)。同作業班は半年にも満たない期間で改定案をまとめ、同作業班の“親委員会”である「電波利用環境委員会」が7月13日に改定案を盛り込んだ報告書案をまとめました

 同作業班は、6GHz以上の高い周波数の電波に被曝した場合、電波は体の奥まで浸透せず、影響は皮膚などに限られるとして、より低い周波数について現行の電波防護指針が採用している比吸収率(SAR値)ではなく、入射電力密度(mW/c㎡)で規制することとしました。
 そして、皮膚を熱傷などから守るため、実験で得られた皮膚を「5℃」上昇させない20mW/c㎡を安全のため1/2にした10mW/c㎡を管理環境(電波を取り扱う職場など)における指針値案とし、それをさらに1/5にした2mW/c㎡(2000μW/c㎡)を一般環境における指針値案としました。
 言うまでもなく電波防護指針は、私たち市民全員の健康に関わるものです。しかし、今回同作業班がまとめ、同委員会が決定した改定案は、避けるべき温度上昇がなぜ「5℃」なのかという説明が一切ないなど、市民が読んで理解できる内容からほど遠いものです。市民は国が決めたことにただ従えばいいという、この国の政府による(電磁波問題についてとりわけ顕著な)市民軽視の姿勢が如実に表れた改定案となっています。
 また、大前提として、電波防護指針は電磁波曝露によるヒトへの急性的な熱作用だけから健康影響を守ろうとするものであり、今回の改定によっても、それに変わりはありません。急性影響を起こさない、より弱い電波に継続して曝露された場合のがん発症などから守るための指針ではありませんし、電磁波過敏症の方々を守るための指針でもありません。
 さらに、ICNIRPによる国際指針値の改定案が7月11日に公表されました。電波防護指針の改定案と同様の内容になっています。同作業班のメンバーとICNIRPのメンバーの一部が重なることなどから、当然同様となると予想していました。【網代太郎】

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