ブリュッセルで5G導入一時停止 健康影響への懸念で

 携帯電話の新しい規格である5G(第5世代移動通信システム)の導入が、ベルギーの首都ブリュッセルでストップしていることを、ブリュッセル首都圏地域政府のCeline Fremault(セリーヌ・フレモー)環境大臣が3月31日に表明しました(ベルギーはブリュッセル首都圏地域や、他の2地域などからなる連邦国家です)。ブリュッセルは携帯電話の電波について、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の国際指針値や日本の基準値よりも、はるかに厳しい基準値を設けていることで知られています。米国カリフォルニア州で5Gを規制している自治体はあります(会報第114号参照)が、ブリュッセルのような大都市で5Gがストップしたのは初めてのようです。
 ニュースサイト「The Brussels Times」に掲載された記事「Radiation concerns halt Brussels 5G development, for now」をご紹介します。
 この記事を読むと環境大臣が自ら5G中止を決断したかのようですが、電波基準の引き上げに市民が反対したことを受けての中止だったようです(この後の記事で述べます)。
 [ ]内は訳注です。【訳・網代太郎、上田昌文さん(NPO法人市民科学研究室)】


フレモー環境大臣(Bruzzのウェブサイトより)

電波への懸念があるため、ブリュッセルでは今のところ5Gを展開しないことにしている

 報道によれば、ブリュッセルで高速5G無線インターネットを提供するパイロットプロジェクトの計画は、市民の健康への恐れのために中止されている。7月、ブリュッセル首都圏地域政府は3つの電気通信事業者とブリュッセルの厳しい電波基準を緩和することに合意した。けれども同政府によれば、このサービスのために必要とされるアンテナからの電波放射がどうなるのかを推測することは現在不可能だ。
 「市民を守らなくてはならない電波基準が尊重されないなら、5Gであろうとなかろうと、私はそのようなテクノロジーを歓迎することはできません」とセリーヌ・フレモー環境大臣(cdH[中道民主人道主義党])がBruzz[ベルギーのメディア]に語った。「ブリュッセルの人々は、私が利益と引き換えに彼らの健康を売り渡してしまえるようなモルモットではない。[健康に]疑わしい点があるまま放っておいていい、などということはあり得ないのです」と彼女は付け加えた。
 パイロットプロジェクトは現在の電波基準では実行可能ではなく、例外を作るつもりはないとフレモーはBruzzに言った。
 ブリュッセル地域は電気通信用途の特に厳しい電波基準がある。6V/mの基準値[10μw/c㎡。日本の基準値は200~1000μw/㎡]はすでに首都で4Gによる高速モバイルインターネットを提供することについて過去に問題を引き起こしている。
 先週、ベルギーのさまざまな政府は、5Gライセンスの競売に関する合意に再び失敗した。利益をどう配分するかで膠着したまま、文書はまとまらないでいる。この提案を処理するのは次期政府次第だ、とPhilippe De Backer通信大臣(Open VLD[フランダース自由民主党])は先週言った。

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