各地からの報告 住民の声を聞く気がない携帯電話事業者

基地局問題院内集会(2023年8月)

Aさん

Aさん宅近くに設置された基地局

 (東京都)板橋区での取り組みについて、お話をさせていただきます。2年前のある日、隣接する5階建てマンションの4階部分に突然、携帯電話の基地局ができました。私の家のベランダからは10mも離れていません。業者に確認すると、KDDIのものだということが分かりました。住宅地の真ん中にこのような大きなアンテナが2本も建つことに、とても驚きました。そこでKDDIの担当者の説明を聞いたところ「4Gも5Gも放射するが総務省の基準値を守っているので安全です。家から近くても体への影響は全く問題はない」ということでした。基地局が幼稚園の近くに建ってから、児童が頻繁に鼻血を出すようになった本の記事や、体調不良を訴える人が出ているという報告について質問してみましたが、「そんな話は聞いたことがない」と言われました。
 このまま設置を認めてしまっていいのかどうか、とても悩みました。しかし、電磁波について調べれば調べるほど、このままではいけないという気持ちが大きくなりましたし、何もしなければこれからずっと至近距離から電磁波が放射され続けることになってしまいます。基地局が建ってから具合が悪くなってしまった方の話を読んで、いったん体調を崩してからでは反対するための気力が出ないかもしれないとも思いました。また、電磁波の影響を何も知らされずに稼働が始まり、原因が分からないまま体調を悪くしていく人が周囲に増えていく可能性もあります。そうなってからでは遅いと思い、せめてこの状況を周囲の人に知らせたいという一心でチラシを作り、勉強会を開き、有志の方々と出会い、基地局の廃止を求める会を立ち上げました。皆さんのおかげで署名も277名集まり、区議会議員への訴えなどできることは全てしてきましたが、KDDIは私たちの要望を聞くことなく基地局を突然、稼働させました。
 なぜ、基地局が稼働したことが分かったのかというと、毎日、電磁波を測定していた方から、「午後になって急に数値が100倍高くなったので、KDDIに確認してください」との連絡があったからでした。電磁波は目に見えませんが、稼働した後、100倍も高くなったという事実を私は重く受け止めています。
 その後、KDDIの住民説明会が2回ありました。基地局設置についての事前の周知がなかったことや、電磁波の安全性への疑問を皆で訴えましたが、「電波防護指針を遵守しているので安全です」と繰り返すばかりで、住民の声を聞く気があるとは思えませんでした。
 皆さんにお配りした今日の資料にもあるように、板橋区のホームページの中に「アンテナ、電波塔を設置する方へ」というガイドラインがあります。目立たない場所への設置、街並みへの配慮としてアンテナの周りを緑で覆うことをお願いしていますが、それもできないとの回答でした。企業としての姿勢に大きな疑問を感じました。
 最後に、こうした活動をさらに難しくしている点として、通信会社と契約している地権者側がマンションのオーナーたちで構成される管理組合だということが挙げられると思います。私たち近隣住民が電磁波の安全性について不安に思っているということをいくら伝えたいと思っても、オーナーたちは現地に住んでおりませんので個別に会って話をするのは非常に難しい状態です。管理会社にだれが管理組合の理事長なのかということを聞いても、契約についての責任は全て通信会社にあるということで教えてもらえませんでした。そこで、今年になってからマンションの管理会社を相手に話し合いを目的にした民事調停を申し込みましたが、相手が出席しなかったため残念ながらこちらも話が進みませんでした。
 このように、いったん設置されてしまった基地局を撤去するということは本当に大変なことです。しかし、私たちと同じように不安や疑問を抱えている人、基地局設置後に体調が悪くなった人は全国にたくさんいます。今回の集会が、そうした人たちの声に耳を傾けるきっかけの一つとなることを願っています。

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