質問・要望への回答 総務省

基地局問題院内集会(2023年8月)

総務省の担当者

1 電磁波の熱作用を基にした現行の電波防護指針を改訂し、非熱作用を考慮した基準値を策定することを求めます。
 F電波環境課課長補佐
 電波環境課のFでございます。熱作用と刺激作用というものに基づいて、電波防護指針が作られております。それらが科学的に確立されている作用と分かっております。WHOが組織に熱が発生するよりも低いレベルで無線周波数の電磁界の曝露による健康への悪影響については研究により一貫性のある証拠は示唆されてないとの見解を示しています。また、電波防護指針のあり方の検討にあたって参照している、国際ガイドラインの作成者である国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)も健康への悪影響を生じる可能性のあるもっとも低い曝露レベルは熱的なメカニズムによるものであるとの見解を示しています。こうしたことから、携帯電話の電波からの人体防護については、現行の電波防護指針を遵守することで、非熱作用があるとしてもそれらに対しても防護し得るものと考えております。このため、現段階で非熱作用を考慮した基準値を設けることは考えておりません。
 大久保(司会) 後で会場からいろいろ反論あるいは意見を聞きます。

2 基地局設置および変更に際して、携帯会社と地権者間の合意のみで設置が決まる現行の方法を改め、周辺住民に基地局設置および変更について住民の意見を事前に聞くことを義務付けてください。
 T移動通信課課長補佐
 Tと申します。総務省では、電波法に基づきまして、基地局等について電波の強さが基準値を超える場所については、一般の人々が容易に出入りできないように安全施設の設置を義務付けております。また、総務省から2019年5月30日付で、携帯電話事業者等に対して、基地局の開設にあたっては、その開設予定の基地局が電波防護に係る規制を遵守するものであることを周知すること、また、その際には開設予定の基地局に関する問い合わせ先を併せて周知すること、また、住民から電波の安全性について説明を求められた場合には、電波防護に係る規制を遵守するものであることを説明することを、携帯電話事業者等に対して要請を行っています。

3 基地局設置および変更に際して、電磁波が届く範囲の住民を対象とした公開住民説明会を事前に開くことを義務付けてください。
 T 
先ほどの回答と同じになります。

4 基地局建設予定地に基地局に関する情報(会社名、出力、高さ、連絡先等)を建設前から看板等で表示し、周辺住民に周知することを義務付けてください。
 大久保
 4も同じですか? 看板がないんです、現実には。
  携帯電話事業者さんの問い合わせ先も、併せて周知すること、という要請を行っております。
 大久保 携帯会社は守っていますか。
  総務省の要請を踏まえて、各携帯事業者において適切に対応されてるものと承知しております。
 参加者 住民説明会がないじゃん。

5 基地局による健康影響の訴えが周辺住民からあったときは、当該基地局の一時操業停止も含めて問題解決に積極的に取り組むよう、通信業者を指導してください。
 T
 繰り返しになりますけれども、電波法に基づき、基地局等については電波の強さが基準値を超える場所に、一般の人々が容易に出入りできないように、例えば柵を設ける等の安全施設の設置を義務付けております。その上で、健康影響の訴えが周辺住民からあった場合には、まずは基地局を開設した事業者において、当該住民への説明をはじめ、丁寧に対応することが重要であると考えております。

6 全国の基地局がどの会社で、所在地はどこで、どのような出力か、をウェブなどで公開してください。欧州ではウェブで誰でも見られます。「テロがあるから」と携帯会社は公表を避けますが、テロは欧州でもあります。「国民の知る権利」を優先すべきです。
 F
 総務省では、電波行政の透明性を図るとともに、電波利用の一層の推進を図るため、平成14年度の電波法改正に基づき、無線局免許状等の記載情報をインターネットにより公表してきています。全国の携帯電話の基地局につきましても、会社名(免許人の名前)、市町村単位の設置場所、出力(空中線電力)等についてインターネットにおいて公表しております。これのもととなった考え方は、詳細な設置場所を公表すると、無線設備に対する物理的な破壊活動を誘発するという懸念の表明がなされておりました。また、携帯電話の基地局の設置場所は、営業情報に該当するもので、その公表については慎重な配慮をしてほしいという意見もいただいています。そういった観点で無線局の設置場所については、市町村単位の情報にしています。
 大久保 まったくおかしいよね。「物理的…」はテロの意味だと思うけど、じゃあなぜヨーロッパではそれ(公開)ができるのか。

7 キャリア毎に基地局を建てるのではなく、一つの基地局で複数キャリアの電波を賄えるように、現在の基地局を調整してほしい。景観的にも環境負荷軽減という面からも有効であるため。
 T
 総務省では、鉄塔等の設備を複数の携帯事業者で共有するインフラシェアリングが重要であると考えております。インフラシェアリングを活用した基地局整備を進めていくために、総務省においてはインフラシェアリングに関するガイドラインの作成等を実施してきたところで、今後ともインフラシェアリングを活用した基地局の整備を推進したいと思っております。

8 2003年4月発表のフランス国立応用科学研究所の「基地局周辺300m以内と301m以遠との影響比較調査」と同様の基地局の調査を日本でも行ってください。
 
 2002年から2003年にかけてフランスの国立応用科学院が公表した研究だと思いますけれども、基地局住民周辺であるかどうかを問わず、非特異的な健康症状についてアンケート調査を行ったものと承知しております。主な研究結果としましては、①基地局から300mまでの住民は、300mより遠いまたは基地局から曝露されていない住民と比べて疲労感の愁訴頻度が有意に増加していた、②基地局から200mまでの住民は、300mより遠いまたは基地局から曝露されてない住民と比べて、頭痛、睡眠障害、不快感等の愁訴頻度が有意に増加していた、③基地局から100mまでの住民は、300mより遠いまたはその基地局から曝露されていない住民と比べて、いらいら、憂鬱、記憶力の低下、めまい、性欲低下等の愁訴頻度が有意に増加していた。これに対して、2004年にフランスの環境衛生安全庁(現・食品環境労働衛生安全庁)は、問題点を指摘をしておりまして、基地局からの曝露と調査した症状の間に関連性があるとは結論付けられないとの見解を示しています。具体的な問題点としては、①自発的な参加者を対象に調査をしていて、参加者の募集方法は明らかにしてないことから、著しい選択バイアスがあり結論を一般化できない、②曝露測定が各個人とアンテナとの距離の評価に基づいていること、またアンテナとの距離にもバイアスがかかっている可能性があること、③ストレスでよく現れる主観的な症状を対象としていて、ストレスの状態を反映している可能性があること、④統計的手法が稚拙であること。総務省としましては、調査手法に問題があるとフランス安全衛生安全庁が指摘していることから、こういう調査を行うことは考えておりません。
 参加者 ストレスで皮膚はひりひりしません。発疹なんか出ません。

3省のうち総務省のみ書面での回答がありました。画像をクリックするとPDFファイルが表示されます。

9 2003年9月発表のオランダ3省(経済、保健、通信)実施の「第3世代基地局影響調査」と同様の影響調査を、「4G・5G基地局影響調査」として日本でも総務省、厚生労働省、環境省の3省合同で行ってください。
 
 2003年にオランダ応用科学研究機構の研究者が発表した研究、いわゆるTNO研究と呼ばれています。GSM=第2世代の携帯電話と第3世代の携帯電話のUMTSのそれぞれの疑似電波による被験者の幸福度と認知機能への影響について調査がされたものです。主な研究結果は、①GSMの疑似電波への曝露については、基地局からの電波に起因するとされる健康上の愁訴がある群と、対照群のいずれも幸福度に影響を及ぼさなかったが、UMTSの疑似電波への曝露については、両群における幸福度のスコアに、小さいけれども統計的に有意な差が示された。②認知機能試験の一部については、曝露の有無で小さいけれども統計的に有意な差が示された、といった結果となっています。これに対して、2004年にオランダの保健評議会が見解を示して、幸福度については、質問票の妥当性などからスコアの変化が幸福度の変化を示すとは結論できないと指摘するとともに、認知機能試験の結果についても健康上の意義があるかどうかについては不明であるとの見解を示しています。また、2006年にスイスのチューリッヒ大学などの研究だと思いますけれども、再現実験が行われて、TNO研究と同様の知見は確認されなかったということでございます。こうしたことから、調査の意義には疑義が示されています。また、再現実験でも同様の結果が認められなかったということで、同様調査を行うことは考えておりません。
 大久保 批判ばかりして、日本でどのように被害の問題に迫っていくという思想がないんだよね。

10 自宅の近隣に基地局が設置されたことで、電磁波過敏症を発症したという人が多くいることから、そうした訴えがありましたらすべてご教示ください。また貴省は電磁波過敏症についてどのようにお考えですか。
 F
 総務省が設置をしている電波の安全性に関する相談窓口(電話番号0570-021-021)に、電磁過敏症に関する相談はございますけれども、詳細につきましては相談者のプライバシーに関わることですので、回答できません。
 (参加者から、個人情報以外を公表できるはずという趣旨などの意見多数)
 参加者 回答のマニュアル聞いても、全く意味ないんですよ。要は、みんな具体的な悩みに持って、それをどうしようかってことで相談してるんですよね。その声どうやって、耳に届いてます?
 大久保 みんなが怒っているのは、プライバシーを出すんじゃなくて、傾向があるわけですよ。たとえば、頭痛を訴える人は何パーセントとか。
  続きになりますけれども、症状と電波曝露の因果関係について、確かな科学的証拠は現時点では確認されてないとWHOでは…。なので、個別の症状に応じて適切な医療、診療科を受診していただくということが適切な対応になるかと。
 大久保 過敏症についてどのようにお考えか、省として。
  先ほど申したとおりですけれども、WHOは、いわゆる電磁過敏症について人により症状が多様であり明確な診断基準がなく、その症状を電磁界曝露と結び付けるような科学的根拠はないといという見解を示しています。

11 貴省は過疎地の基地局建設を後押しするために、該当自治体に補助金を支給しています。この補助金の廃止を要求します。むしろ、電磁波過敏症の方々が安心して暮らせるように基地局のない「電磁波の少ないゾーン」を確保し、緊急避難地としてください。
 T
 過疎地などの条件不利地域については、電波が届かず事故や災害時における通報や情報入手ができない状況である箇所が存在するため、住民の安心、安全を確保することが急務であるとして、自治体から多くの要望がなされております。そのため、総務省においては携帯電話の不感地域解消対策として、これらの地域における整備について補助金による政府支援を行っております。総務省としては、自治体や通信事業者等で構成される地域協議会を開催しており、引き続き個々の地域の実情を踏まえた丁寧な対応を行ってまいりたいと思っております。

12 電磁波の非熱作用に関する研究はどの程度進んでいますか。進んでいないならば、研究促進の措置(予算含めて)を講じてください。
 F
 熱作用・刺激作用以外の健康影響についても、これまでに国内外で多くの研究が実施されているところですけれども、確定された影響はないと認識しております。他方、国内で実施している生体電磁環境の研究につきましては、その中で熱作用・刺激作用以外の作用に関するものとして、米国国家毒性プログラムの検証実験とか、新しい無線通信等による小児への影響に関する疫学調査、高周波パルス電磁界による生体作用に関する研究、といったものをやっております。ただ、現時点においては、有害な健康影響の可能性を示唆する報告は受けておりません。

13 貴省が「生体電磁環境研究」など、電波による健康影響に係る研究を主導している現状に鑑みて、要望します。電波による健康影響について検討する委員などに、非熱効果による健康影響を否定していない研究者や、電磁波過敏症の診療・研究を行っている医師なども加えてください。
 F
 熱作用、刺激作用以外の健康影響につきましては、先ほど申し上げたとおり、依然としてその存在を示す確たる科学的根拠は見つかってないという認識でございますけれども、熱作用、刺激作用以外の健康影響の可能性に関する研究も実施をしております。今後の生態電磁環境研究に当たっても、非熱効果を含めた健康影響の科学的な解明に向けて、再現性やメカニズムの分析などに関して客観的な評価ができるように研究すべき課題を設定した上で実施者を公募して、第三者の評価に基づいて適切に選定していきたいと思っております。また、そういった研究成果も含めて、国内外の研究成果を評価、分析することを目的として開催をしております生体電磁環境に関する検討会の構成には、電磁過敏症の研究者も含まれているところでございます。今後も電波の健康影響については適切な体制を検討してまいります。

14 旧郵政省で、電波の利用促進を勧める貴省が、安全基準値である「電波防護指針」を策定するのは本来おかしいと思いませんか。利用促進と規制を同じ官庁等が行っている国・地域があれば、具体的にご教示ください。
 F
 電波法におきましては、電波が人体に被害を及ぼさないようにするための安全性に関する基準を、通信方式などの技術基準と合わせて定めることと書かかれております。それに基づいて、携帯電話の基地局の免許等に際して、安全基準を満たすことを確保できるように、一体的に制度運用していくことが合理的であると考えております。それから、例えばアメリカ合衆国では、通信を主管している連邦通信委員会が電波の安全性についても規制を行っています。
 大久保 アメリカ以外は?
  ちょっと網羅的には調べてないんですけれども。
 A実行委員 総務省が出してますよ、資料。
  場内からお声がありましたけれど、調べているものについては、総務省のホームページで公表してます。だからと言って、すべての国について調べるっていうのは、なかなか難しい。
 大久保 ちょっと時間があるときでいいから調べてくださいよ。
  具体的に言えば、ブラジル、インドとかで、通信当局が整備してる。
 参加者 最初から言いなさいよ。
  国によって統治機構ってまちまちですので。例えば保健を主管してる省庁が(規制を)やってる所もあれば、環境を主管してる省庁が規制をしてる国はあります。ただそれは、それぞれの国ごとの考えに基づいてやってるところだと思います。
 参加者 日本はどんな考えてやってるんですか。
  日本は、先ほど申し上げたとおり、無線局の管理と一体的に運用していくことで考えております。
 参加者 それを利益相反っていうんだよ。
 参加者 (総務省の)上のほうの人、NTTから接待、受けてんじゃん。だから規制をする機関をきちんと作れって言ってんの。
 大久保 また後で質問の時間がありますので。

15 ミリ波の商用サービスが始まっているのは、世界的にも少数の国などと聞いています。ミリ波の商用サービスが提供されている国・地域はどこで、全部でいくつありますか。
 F
 令和4年11月時点になりますけれども、ミリ波の商用展開が開始されてるのは、日本、アメリカ、アラブ首長国連邦、イタリア、インド、インドネシア、ウルグアイ、英国、オーストラリア、マケドニア、ギリシャ、クロアチア、シンガポール、スウェーデン、スペイン、スロベニア、タイ、大韓民国、台湾、チリ、デンマーク、ドイツ、フィンランド、プエルトリコ、ブラジル、ベトナム、香港、マルタ、マレーシア、モンテネグロ、ロシアの31国・地域と認識しております。

16 総務省「デジタル変革時代の電波政策懇談会5Gビジネスデザインワーキンググループ(第3回)」で、ミリ波によるトラヒック(通信量)は4G、5G全体の0.01%に過ぎず(会報第第141号)、ミリ波はほとんど利用されていないことが明らかになりました。ミリ波は基地局から電波が飛ぶ範囲が狭いので通信業者の経済的負担も重く、各社がミリ波の全国一律的な展開方針を見直すよう求めているのはご承知の通りです。安全性についての疑問も出されているミリ波基地局の展開方針について、大幅な見直しが必要と考えますが、貴省の見解をお示し下さい。
 T
 高速大容量等の5Gの特徴を生かすためには、広い伝送帯域で高速転送が可能なミリ波の利用を進めていくことが重要であると考えております。5Gの周波数割り当てに当たって、各携帯電話事業者から5Gの周波数を使用する基地局の開設計画が提出されておりますので、各携帯電話事業者において、開設計画に沿ってミリ波に対応する基地局の整備を進めているものと承知しております。
 網代 携帯各社から、ミリ波の見直しの要望が出ているのは、事実じゃないんですか。
  ごめんなさい、私の不勉強で恐縮なんですけれども…。
 網代 そのワーキンググループで、ミリ波はほとんど使われていないと、楽天が資料を出してますよね。だからスポット的な利用に転換すべきであって、今までの一律の展開を見直してくれと、事業者側からも出てるはずなんです。
  ミリ波の活用に関しましては、各携帯電話事業者からも周波数の割り当てにおいて、開設計画が提出されておりまして、その開設計画に沿って設置が進められていると承知してます。
 大久保 もっと正直に、いろんな問題点もある、でもこういうメリットもある。そういうふうに答えるのが筋なんだよね。都合のいい話しかしないでしょう。それはまずいよ。ミリ波の問題点いっぱい世界中で出てるんだから。
 参加者 住宅地ではやめてください、ミリ波は。

【まとめ・網代太郎】

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