鮎川哲也(電磁波研事務局)
MRI検査を受ける際はよく考えて
これまで身近にある電磁波発生源や意外なところにある電磁波発生源について紹介してきました。これまで紹介したもの以外にも強い電磁波発生源があります。
よく質問を受けるものにMRI検査があります。
MRI検査は(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)といい、強力な磁石と電波を使って、磁場を発生させてトンネルのような機器の中で身体に電磁波を当て、縦、横、斜めなど、さまざまな角度で体の断面を画像を撮影するものです。
MRI検査はペースメーカーやインプラントなど外から見えず、取り外すことのできない金属類が体内に入っている場合は、検査を受ける前に医師に伝えなければなりません。入れ墨がある場合なども同様でいくつかの制約があります。
筆者もMRI検査を受けた経験があります。交通事故で手首を打撲したための検査でしたが、実はMRIなどする必要がなかったのがわかりました。
MRI検査の前には、先に紹介したようなペースメーカー、インプラント、入れ墨などについて質問を医師から受けました。それらは特にないが、筆者は電磁波に過敏なこともあるので、MRI装置からの電磁波が心配だと医師に伝えました。一瞬怪訝な顔をしたのですが、「国の基準以下なので安全です」と自信満々に医師は答えました。「いやでも心配で……」というと、「気分が悪くなったら、このボタンを押してください」とケーブルにつながったボタンを渡され、MRI検査がスタートしました。
経験のある方ならおわかりかもしれませんが、ゴーンゴーンと大きな音がして、すぐに気分が悪くなりました。でも、検査だからとがまんしたのですが、10分でギブアップしました。
15分くらいの予定でしたが、途中で終了。それでも検査の結果は出ており、手首には異常がないことはわかりました。しかし、体はだるく、気分がすぐれない状態が2日続きました。
MRI検査は強い電磁波が発生します。それの影響だと考えられます。MRI検査に似たようなものに、CTスキャンがあります。CTスキャンの場合はX線を使います。
MRIの場合もCTスキャンも筆者が経験したようなことが起こる可能性は十分あります。
ただ、MRI検査やCTスキャンで発見される病気もあります。もし、MRI検査やCTスキャンを受けることになったら、本当にMRI検査やCTスキャンが必要なのかをしっかり医師と相談してください。無意味なMRIもあるかもしれません。筆者がMRIを受けたのは、当方が交通事故の完全な被害者で治療費を加害者側が全額払うことになっており、何でもかんでも検査をしようと医師が考えていたことが後に判明しました。たがが手首の打撲で、この他にレントゲンを数回も受けました。費用は数十万円になったようです。昨今はこのようなことはないでしょうが、検査を受ける意味や意義を確認して納得してから受けましょう。費用の面というより、身体に何らかの影響があるからです。
リスクとベネフィットという言葉があります。医療機器や薬などを使うと何等かのリスクが発生するかもしれません、その一方、ベネフィットもあります。その点を踏まえて考えることが肝要だと考えます。
増え続ける携帯電話基地局
昨今はどこでもWi-Fiがつながります。もっともこれは日本だけでなく、世界でそうなりつつあります。
日本の場合は新幹線などの電車でWi-Fiがつながります。しかし、一部の電車内やコンビニエンスストアではフリーWi-Fiを終了するところも出始めています。
コンビニエンスストアでフリーWi-Fiを終了したのは、インターネットにつなぎ放題などの契約が増え、5Gが増え通信環境がよくなったので不要と考えたとされています。コンビニ側の本音は買い物もしないでフリーWi-Fiのために人が集まり、駐車場を占拠されるのを避けることだろうと考えられます。つまり売上につながらないからというところではないでしょうか。
逆に言うと、あらゆるところで高速通信ができてしまうようになったのです。それだけ電磁波はよりあふれるようになりました。
また、フリーWi-Fiは東京をはじめ大都市圏ではよくあり、訪日外国人のためにと捉えている都市もあるので、外国語がトップ画面になっていたり、説明もまずは外国語が表示されたりするようになっている場合もあります。
高速の通信を可能にするため5Gアンテナもどんどん増えています。まだ実際の姿を確認していませんが、地下のマンホールに基地局のアンテナがあるのです。
携帯電話からの電波を避けるには
電磁波の問題でとても多い相談はやはり携帯電話基地局からの電磁波に関してです。どのような電磁波が出ているかについては148号で解説したので詳しくはそちらをご覧いただければと思います。簡単に言うと高周波(マイクロ波)と呼ばれるもので、5G(第5世代)では一部ミリ波が発信されています。
携帯電話基地局から発信している高周波は周波数が高く、直進性が強いものです。そのため基地局と携帯電話の間に障害物があれば直撃は防げます。その障害物が大きく、コンクリートなどであれば、より強く遮断します。ただ、障害物で完全に遮断できるのではなく、壁の端などの切れた箇所などから電磁波が漏れてくるので、いくらかの影響は受けてしまいます。
そこで、携帯電話基地局の影響を避ける第一の方法は、直接基地局が見えない場所を選ぶことです。すでに、家や部屋から基地局が見えている場合は、見えにくい箇所や一番基地局から遠い部屋や場所を選ぶことです。特に日中生活する場所より、夜、就寝する場をより基地局からの影響が少ない場所にしてください。
これで大丈夫ということではありませんが、電磁波の影響を少なくする第一歩です。
では、オフィスや商業施設などが密集する市街地と家もまばらな郊外ではどちらが高周波の影響を受けやすいかは、発信源が多い市街地であるのは間違いありません。郊外や里山や山間部で非常に大きな基地局を見たことはありませんか。それらのような基地局があると、強い電磁波を発生している場合もあり、遠くでも強い電磁波を受けてしまいます。市街地=危険、郊外=安全ではないことをよく知っておいてください。
自分が住む地域の周囲にはどこに携帯電話基地局があり、どれくらいの大きさなのかを把握しておくのもよいでしょう。
またデジタル機器に囲まれ、スマートフォンなどで絶えず情報を取ろうする環境があるなか、デジタル機器から離れ、スマートフォンの電源を切るデジタルデトックスという動きもあります。特に若い世代にデジタルデトックスをする動きがあるようです。携帯電話基地局があふれているので、完全には解放されるのは難しいのですが、デジタル機器や電磁波から離れたいと考えている人も少しずつ増えていく動きではないかと感じます。
昨今ゲリラ豪雨や地震など、自然災害が多くなっています。安全に避難するには、自分が住む地域はどんな地形でどういう構造物があるか、避難所への道はどうか、どこに高台があるかなどを把握しておくことが大事です。一時期よく言われていましたが、災害時に備えてどこに何があって、何が危険であるかを確認しながら歩く「防災さんぽ」をするという考えがあります。
電磁波に過敏な人にはお勧めしませんし、長時間基地局周辺エリアにいることも避けた方がよいのですが、携帯電話基地局がどこにあるかを確認しながら、防災さんぽをしてみるのはいかがでしょうか。基地局の距離や場所がわかると、完全ではありませんが、自分の家はどこからの影響が強いかが推測できると考えられます。
携帯電話基地局の近くをどうしても避けたいと思うなら簡易型の測定器を持ち歩く方法もありますが、簡易型では限界があることと、簡易型とはいっても何でもいいというわけではなく、ある程度信頼性の高い機種を選ぶ必要があります。
実は知っている人が増えている電磁波の問題
データやアンケートを取ったわけではありませんが、肌感覚として電磁波に関して気にする人が増えているように感じます。背景にはスマートフォンの普及があり、国もあらゆる場面でデジタル化を進めていく、電磁波を発生する機器が増えて、電磁波に晒される機会が増えているからだと推測されます。先に紹介したデジタルデトックスをする人が増えているのもその現れの一つかもしれません。
電磁波について何らかの懸念を持っている人は、他人には話さないのですが、電磁波について自分でよく調べており、自分で対策をしているケースもよくあります。あるとき知り合いに電磁波の影響について話すと、非常によく知っていて、ある程度の対策をしていることを知りました。
その人が言うには、スマートフォンはハンズフリーで話すのは当たり前で、住むところは携帯電話基地局が近くにないところを探したとそうです。
筆者が契約している不動産会社の担当者は基地局の影響についてよく知っているし、できればそういう物件は避けた方がいいと内心思っているとも話しました。
当会の定例会も以前に比べ、格段に参加者が増えました。参加者が増えたのは直接、電磁波の影響を受けている人が増えたので、いいこととは言えません。ただ、参加した方が電磁波は影響があることをまわりに伝え知ってもらうようになったのは大きな変化です。
このように電磁波に関心があり、懸念している人が増えているとことは注目され議論が起こるきっかけになるのでよいことですが、一方影響を受ける人が増えていることでもあり、喜ばしいことではありません。
実は電磁波のことが気になっている人は、これを読んでいるあなたのまわりにもいるはずです。これまでの経験で、電磁波の懸念を抱いている人には、「危険だ」とは伝えず、影響があるかもしれない(影響はあるのですが「危険」「影響がある」と伝えると反発する可能性が高いです)と伝えていくのがよいと思います。
電磁波は何らかの影響があることを、お話する機会があれば、やさしく、そして丁寧にまわりの人にお伝えしてください。その機会が真に平和な社会をつくる一歩になります。