欧州評議会が電磁波規制強化を採択

 欧州評議会の議員会議の環境・農業・地域問題委員会は4月11日、「電磁波の潜在的危険性とその環境影響」という報告書を全会一致で採択しました。(1)
 欧州評議会は、人権、民主主義、法の支配という共通の価値の実現に向けた国際協調拡大を目的として設立され、EU全加盟国、南東欧諸国、ロシア、トルコ、NIS諸国の一部の計47か国が加盟しています。日本、米国など5カ国はオブザーバーとして参加しています。(2)
報告書は、現在の指針値以下のレベルの超低周波または高周波電磁波が、人間だけでなく動物、植物、昆虫に有害で非熱的・生物学的な潜在影響を及ぼしているかもしれないため予防原則を尊重すべきとして、以下のことなどを求めています。

  • 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)による国際指針値のもとになっている科学的根拠を見直し、ALARA(合理的に達成可能な限り低く抑える)原則を適用すること
  • 電磁波に特に不耐な(電磁波過敏症の)人々に対して、電磁波フリー地域の設定を含む特別な保護策を講じること
  • 携帯電話など無線装置からの長期的な曝露に対して、予防原則に基づき、全ての屋内について0.6v/m(0.1μW/cm2)の許容限界値を設定し、それを中期的に0.2v/m(0.01μW/cm2)へ引き下げること(日本の規制値は、数百~1000μW/cm2)
  • 電波を常に発しているデジタルコードレスフォンやベビーフォンなどの家電についての潜在的健康影響について啓発すること
  • 学校、教室内における携帯電話、デジタルコードレスフォン、WiFi、無線LANの禁止
  • 高圧線などの電力設備と住宅の間に安全な距離を確保する都市計画施策の導入
  • ALARA原則に従い、中継基地局からの電波の許容限界値を減らすとともに、全てのアンテナについての包括的、連続的モニタリングシステムを導入
  • 携帯電話基地局などの新たな設置について、自治体、地域住民、この問題に関心がある団体と協議のうえ決定すること
  • (健康リスクを評価する研究への)公的資金配分のために、独立委員会をつくること

 欧州評議会は、加盟各国への強制力は持ちませんが、各国代表による民主的手続きに基づいた結論としての意味は大きく、これらの点において、欧州議会の決議(3)と同様です。欧州市民の声に応える国は現れるでしょうか。【網代太郎】

(1)The potential dangers of electromagnetic fields and their effect on the environment
(2)外務省「欧州評議会」
(3)電磁波研会報第58号「欧州議会、電磁波規制見直し求める報告書を採択」参照

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