電磁波について、あらためて知ろう(第5回) 電磁波の情報について冷静に受けとめよう

鮎川哲也(電磁波研事務局)

 電磁波について相談を受ける場合や現場での測定で話をする際、その方々の傾向について感じることがいくつかあります。そこで今回は電磁波とどうつきあうかについて重要な事柄でもあるのでその件について記していきます。
 まず、電磁波について冷静に対応するということです。
 先にあげた方々は多くの方が電磁波についてよく調べ、よく知っています。電磁波について気になるので当会に相談されているので当たり前かもしれません。しかしながら思い込みが強く偏っていることもよくあります。これも致し方ないでしょう。
 困難な状況に陥っているときに冷静になれというのも難しいかもしれません。情報を得ることを否定しているのではありません。
 重要なことは客観的で出元が確かである情報を得ることです。客観的とはある個人が思い込みや個人的な経験のみから出来てた情報ではないことです。
 例えば身近な「誰々さんが言っていた」とか、「〇〇さんが話していた」などの情報は正しいとは限りません。その人だけが当てはまることもあります。「電磁波には〇〇が効きますよ」とか「〇〇のグッズを使うと良くなりましたよ」などもあります。
 さまざまアドバイスなどをするのは当事者である人への心配の気持ちがあるのでしょう。ただし、それを鵜呑みにしないで一度立ち止まって考えましょう。その人には効果があったかもしれませんが、自分がやってみても効果があるかわかりません。逆に悪化する可能性もあります。
 電磁波の影響を小さくするのは①発生源をなくす。②発生源から離れる。③発生源の電磁波を弱くする。が三原則です。
 もし疑問を持ったら当会に相談してください。当会はこれまで蓄積してきた知見とネットワークがありますので、何らかの回答をします。身体的なことだけでなく、基地局などへの対応も同じです。
 というのも、基地局反対の人からの相談で地権者にアプローチする作戦を考えていた際に「〇〇さんがこうしてうまくいった」という言葉を信じて、まわりに相談せず単独で先走りして話がこじれたケースを経験したことがあります。この基地局反対のケースはにっちもさっちも行かなくなってしまいました。
 特に昨今はSNSなどの広がりで怪しい情報が氾濫しています。例えば「電磁波」「危険」「怪しい」などで検索すると怪しげな情報もピックアップされます。そこで怪しいサイトに行くと、それがアルゴリズムで似たようなサイトを表示し、それがどんどん深い情報に迷い込んでしまいます。ついには電磁波陰謀論までいくこともあります。一般の人が電磁波で狙われるなどはありえません。
 インターネットサイトは便利なように見えて、こちらが気になる情報へと誘導されていくようにできているのです。インターネットサイトだけの情報を過信するのではなく、最初に記したように客観的な情報から判断するようにしてください。
 電磁波に効くという商品や食品、グッズなどはありません。せいぜいシールドカーテンで電磁波の影響を多少少なくする程度です。それもただかければいいというものでは本当はありません。
 電磁波に関して特効薬はありません。ただ、社会は少しずつ理解が深まり、電磁波について知る人も増えています。理解してくれる人がきっといるはずです。客観的な情報を得るようにしてください。

電磁波情報に過敏になり過ぎないように

 さて、もう一つのテーマはこれまで紹介したことに関連しますが、電磁波の情報に過敏過ぎる人がいることです。筆者は電磁波「情報」過敏症と称しています。先にも記しましたが、電磁波について知ることは大切です。ただ偏った情報だけに支配されるのはよくないことです。また、実は電磁波の事にあまりに過敏になるのはよくないことです。
 仮に体調が悪くなったら、それは電磁波のせいであるとか、不都合なことが起こればそれらをすべて電磁波のせいにしてしまう。また、外に出ると携帯電話基地局ばかりに目が向いてしまう、などがあります。
 その例の一つとして、「狙われている」という人もいます。携帯電話基地局からの電磁波に過敏な場合、日本のあらゆるところに基地局があるので、そこからの電波を常に感じてしまうことになります。そのため狙われていると感じるのでしょう。
 また、携帯電話基地局からの電磁波が気になり、基地局から365日24時間電磁波がで続けていると聞くと、その影響を心配し、外出するとつい基地局を探してしまうこともあるでしょう。そうすると基地局ばかりが目に入ってしまうことになります。
 これは赤い車が気になりだすと、世の中に赤い車が増えたと感じる心理現象と同じで一度何かを意識すると、日常生活の中で自然とそれらに関する情報や物が目に入りやすくなる現象です。基地局に限らず電磁波のことが気になるとらあらゆることが電磁波の影響ではないかと考えてしまうのです。
 以下のような問い合わせがありました。「家の上に丸いアンテナがあるのですが、電磁波の影響はないでしょうか」。それに対して以下のように答えていました。「あれは衛星放送(BSなど)を受信するためのアンテナで、受信するだけです」。
 また、「信号機が近くにあるけど大丈夫でしょうか」「最新、電気自動車が増えていますが、電気自動車だらけになると、走っている電気自動車からの電磁波は大丈夫でしょうか」なども聞かれることもあります。信号機は高い位置にあるので、その影響はほとんどありません。電気自動車については車内では何らかの影響はありますが、走る車からの影響が電磁波よりも事故にあう危険性のことを考えた方がいいでしょう。ただし、自動運転車や、運転支援システムを搭載した最近の車は、周囲の障害物などを検知するためにミリ波レーダーを使っている場合があります。その場合、周囲の歩行者などへの影響があるかもしれません(会報第127号参照)。
 電磁波について知ることは大切なことです。ただし、何もかも電磁波の影響があると考えないで、この場合も冷静に考えた方がよいといえます。あらゆることを知ってしまうことで電磁波「情報」過敏症になってしまうのでしょう。
 生活環境にあって、私たちの健康に影響しうるものは、電磁波だけではありません。柔軟剤の香料、農薬や殺虫剤、PM2.5などの大気汚染物質、新築の建物から揮発する化学物質など、そしてカビやダニもあります。また、新たな症状が出たとき、その原因は、電磁波と関係ない疾患かもしれません。何もかも電磁波のせいにして本当の原因を見逃したら、より深刻な結果となるおそれがあります。
 最近、インターネットやSNSを介した詐欺が多発しています。詐欺が多発するのはだます方のやり口が巧妙化しているしていることが理由の一つですが、受ける側が冷静な判断ができなくなっていることもあると言えます。受ける側を混乱させるのも詐欺の手段の一つです。
 これから携帯電話の電波は5Gが普及し6Gなどと言われていますし、社会ではインターネットを介してあらゆる手続きや金銭のやり取りも増えてきます。電磁波に関しても一度立ち止まって冷静に考えることがこれからより重要になってくると考えます。

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