第5世代移動通信システム(5G)用の新しいミリ波(26GHz帯と、40GHz帯)の利用について、前のめりな国と携帯電話事業者の慎重姿勢とが対照的になっています。
総務省が昨年12月に公表した「周波数再編アクションプラン(令和6年度版)」に、携帯電話の通信量の増加に対応するために、26GHz帯と40GHz帯について、2025(令和7)年度末を目途に条件付オークションを実施し、携帯電話事業者に5G用として割り当てることを目指すことを盛り込みました。
しかし、同プランについてパブリックコメントを募集したところ、楽天モバイルは、将来的には特に通信量が多い場所でスポット的にミリ波を使うことが重要になるが、現在はミリ波対応端末の普及が順調に進んでいるとは言いがたいこと、ミリ波でしかできない使い途があまり想定されていないこと、電波が飛ぶ距離が短いことを補完する技術開発などの課題があることから、26GHz帯と40GHz帯の割り当てを2026年度以降に延期することを求めました。KDDIも同様の理由から2026年度以降にするよう要請。ドコモも「時期の再検討」を求めました。ソフトバンクは延期は求めませんでしたが、明確な賛意も示しませんでした。
再検討を求める意見に対して、総務省は「令和7年度末を目途に実施することを念頭に、利用ニーズ調査の結果や既存無線システムの運用状況等を総合的に勘案しながら、適切に判断してまいります」と回答し、2025(令和7)年度の割り当てにこだわる姿勢を示しました。
5Gのミリ波帯は現在、28GHz帯が利用されています。5Gのサブ6(3.7GHz帯など)に比べてさらに高速ではありますが、一般のスマホユーザーにとって、サブ6と比べたミリ波のメリットはあまり感じられません。携帯電話4社の通信量(4G、5G)に占めるミリ波の割合はわずか0.01%です(会報第141号)。
ミリ波は電波の直進性が強く障害物に弱く、届く距離も短いので、基地局を高密度に設置しなければなりません。コストがかかるだけで、利益につながっていない現状では、これ以上ミリ波を増やすことには、営利企業である携帯各社は慎重にならざるを得ません。健康影響の懸念が指摘され利用もされていないミリ波は、即刻廃止すべきです。【網代太郎】

