電磁波について、あらためて知ろう(第6回)電磁波相談でよく聞くこと

鮎川哲也(電磁波研事務局)

 電磁波のことが気になって、いろいろと相談先を調べて当会に行き着いた方も多いと思います。電磁波は直接は目には見えないので、どこにあるのか、どんな問題があるのかなど、わからないことが多いと思います。
 今回はいろいろと相談を受け、よく聞かれることで、注意したほうがよいと感じたことなどについて紹介しつつ、対策や考え方などを記していきます。繰り返しになっている内容もあるかと思いますが、重要なことなのでご理解ください。

「電磁波の制限や基準は国が決めているから問題ない」

 これは国の方針をそのまま鵜呑みにしている方で、そう信じている人は当会へアクセスしていないと思います。日本は国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が定めたガイドラインをもとに定めています。ほとんど国がそうなのですが、規制値をきびしくする以外の方法で対策を行っています。
 日本はどこを見て基準を決めているのでしょうか。国民のこと、企業のこと、あるいは自分たち(政治家や官僚)のこと、さまざまな状況や電磁波で大変な思いをしている人たちのことを考えるとわかるはずです。
 これは電磁波に限ったことではありませんが、まずは安全や大丈夫などという言葉や状況を鵜呑みにしないで、それは本当だろうかと疑問を持ち、なぜ大丈夫と言えるのか、本当に安全なのかを考え、調べてみることが大事です。
 SNSが拡大してまことしやかな嘘が散見されるようになっています。インターネットで情報を見ていくと、アルゴリズムで自分が気になったり、同じような意見やこうあってほしいという情報が次々と出てくるようになっています。電磁波について調べたとしても安全と安全ではないの情報が大量に出てきます。安全という前提で調べていくと安全な情報ばかりが出てきます。その情報によって電磁波=安全と信じ込んでしまう可能性が高いのです。
 常に客観的に見て考えるようにしましょう。最近では「リテラシー」という言葉で表現されるようになりました。リテラシー(英=literacy)とは、元の意味は「読解記述力」を表していましたが、現在は文字や映像などで表現されたものに対して適切に理解・解釈・分析するなどの意味で使われることが多くなりました。
 この機会にリテラシーについて考えてはいかがでしょう。

「電磁波は見えない」

 先の稿で「電磁波は直接は目には見えない」と記しましたので、矛盾するかもしれません。直接は見えませんが、間接的には確認するができます。その方法は電磁波測定器で数値を測定することです。そうすることで、ここはどの程度の電磁波暴露があるかがわかります。
 別の方法で電磁波を見るには電磁波発生源を確認することです。携帯電話基地局、Wi-Fi送受信機器、スマートフォン、送電線、配線線など高周波電磁波、極低周波電磁波を発生する機器が私たちのまわりに数多くあります。それらの機器の存在を確認し、測定器で数値を見ることで電磁波を「見る」ことができます。
 その結果、電磁波の影響を下げることもできるのです。ただ、測定器は私たちが入手できる程度のものは簡易であり、あらゆる電磁波を測定できるものではありません。そのことを念頭にある程度の影響を避けることができると考えていただきたいです。
 目に見えないから大丈夫や、見えないから危険と決めつけることは避けたほうがよいでしょう。ただし、発生源が見えたからといってすぐ危険というわけではありません。

「電磁波は低周波が問題である」

 これはある方から相談を受けた際に、電磁波に関することを扱う団体が「電磁波は低周波だけが問題である」と聞かされたので、それは本当なのですかと問い合わせがあり、判明したものです。
 かつては電磁波=低周波電磁波でした。というのもその当時は携帯電話はほとんど普及していなかったときのお話です。
 電磁波を発生するものといえば大きな高圧送電線、各家庭に電気を行き渡らせるための配電線、家庭内の冷蔵庫、電子レンジなどの電化製品で、中には強い低周波が発生するものありました。これらから発生する低周波電磁波は距離の自乗に反比例して小さくなるので距離を取るという対策が取れました。
 しかし、携帯電話が普及し、高周波電磁波を発生する機器が出現し、一方家電製品が省エネ化して低周波の発生が小さくなりました。家電製品は自分たちで使う、使わないをコントロールできるため、強い低周波電磁波が発生しても避けたり、影響を小さくすることができます。携帯電話も本体は同様に自分で使う、使わないを選択できます。ただ携帯電話を通信するための携帯電話基地局は自分は使わないから電源をオフにするなどはできません。自分はあまり使わないのに近くに基地局が建ってしまうことも起きています。
 さらに最近ではスマートメーターの問題も起きています。携帯電話、携帯電話基地局、スマートメーターの共通するのは高周波電磁波です。低周波電磁波の問題は解決したわけではありませんが、高周波電磁波への対策がより重要なのです。

「これを使えば電磁波は防げる」

 電磁波への対策でどうすればいいですかとのお問い合わせは多くあります。また、電磁波に対してすでに対策をしている方に聞くと、電磁波を吸収するサボテンを置いているとか、携帯電話に電磁波を跳ね返すシールを貼っているなどを聞くこともあります。
 それらは精神的な何らかの効果はあるかもしれませんが、物理的には電磁波に対しての効果は期待できないと考えられます。電磁波を軽減へ期待できるのは信頼できる会社が扱う高周波対応のシールドカーテンくらいです。低周波電磁波に対してはシールドカーテンはあるようですが、その効果は不明です。

「外からの電磁波の影響だけを気に掛ける」

 これも相談でよくあるのですが、自宅のまわりから電磁波の影響を受けているというケースです。その流れでお話しを聞くと、近くに携帯電話基地局や送電線があるということです。
 確かに携帯電話基地局や送電線が近くにあると、その影響はもちろん考えられます。その一方室内にある電磁波発生源についてはいかがでしょう。
 電磁波に過敏で困っていますといいながら、スマートフォンで通話している人は多くいます。同様に携帯電話基地局が気になるんです。でもWi-Fiは大丈夫だと思いますし、寝るときは目覚まし時計代わりにスマホを頭のすぐ近くに置いています。
 自分が発生している電磁波は大丈夫で、知らない誰かが発生している電磁波は危険という考えに基づいているようです。周囲の環境が気になるのはよくわかります。しかし、その前に自分のまわりのことを見つめ直してみましょう。自分たちのことは自分でコントロールできます。
 電磁波対策はまずは自分の身の回りからです。

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