特集・電車内のケータイオフ(2) 民鉄協と当会が会談

「総務省の新指針へ対応」

民鉄協

2012年12月12日、携帯電話オフ車両導入などについて、日本民営鉄道協会の小林圭治参与(右)らと、当会大久保事務局長(左)らが意見交換

 電磁波問題市民研究会は、特集(1)で報告した通り、日本民営鉄道協会(民鉄協)あてにも要望書を提出しました。後日、民鉄協と当会による意見交換を申し入れたところご快諾いただき、2012年12月12日、東京・大手町駅近くの民鉄協で、参与・運輸調整部長・地方交通室長の小林圭治さん他1名と、当会事務局長大久保、事務局網代とが約1時間、意見交換を行いました。

満員電車のみオフに?
 まず小林参与から、民鉄協としての取り組みが説明されました。心臓ペースメーカーなどと携帯電話などとの離すべき距離(離隔距離)について、総務省は新しい指針(特集③参照)をまもなく決める予定であり、それを受けて鉄道事業者としての対応を決めるとのことでした。
 現行指針の離隔距離「22cm」を新指針案は「15cm」に緩和。また、満員電車等の離隔距離を確保できない場所では、現行指針は「電源を切るよう配慮」を求めていますが、新指針案は「電波を発射しない状態に切り替えるなどの対処」を求めています。小林参与は「電波が弱くなり離隔距離が緩和されるのに、対策が『配慮』から『対処』に強化されるのは、一般論としてヘン」と指摘しました。
 また、新指針案に「身動きが自由に取れない状況下等」との文言が加わったことから、小林参与は「身動きが取れないのは乗車率200%以上で、通勤時間帯の一部電車や非常時に限られる。(満員電車以外でも優先席付近で)電源を切りますか、という判断になってくる」とも述べました。
 民鉄協の方針はまだ未定と強調していましたが、参与のお話からは、通勤時間帯の一部電車以外は電源オフのルールをやめる可能性もあるようにも受け止められます。
 当会からは「200%以上の混雑でなくても、急ブレーキなどの揺れで体が動けば15cm以下になる恐れはあり、安心して乗車できない」「通勤時間帯は優先席付近に限らず全面的に電源オフにしては」と指摘しました。また、「今までの対応を後退させることだけはしてほしくない」との訴えに、小林参与は「対策を後退させるつもりはないが(民鉄協としての検討)結果がどうなるのかはまた別の問題なので、ご理解いただきたい」と答えました。
 また、離隔距離が短くなるのに「配慮」を「対処」に強化するのはヘン、との主張について、当会から「現在、優先席付近でも多くの乗客が平気でスマートフォンなどを使用している。ないがしろにされているルールを、実行可能にさせるチャンスではないか」と指摘しました。

「ケータイオフ車両は難しい」
 携帯オフ車両導入について参与は「お客様に説明してご理解を得るためには、さらに合理的な理由が必要であり、今の状況ではたいへん難しい」との認識を示しました。
 携帯オフ車両を導入している阪急電鉄について参与は「たぶん全国で阪急だけで、追随するという声は今の段階では聞いていない。阪急としても第3世代以降は電波の影響が少なくなるということもあるので、それを踏まえて今後の対応を検討したいとは内々に聞いている」と明かしました。
 海外での対応について、小林参与は「離隔15cmはグローバルスタンダードだが、満員電車等での電源オフは日本オリジナルのルールだ」と説明しました。
 一方で「我々も今がベストだと思っていない。バリアフリー化も10年前はいろいろな意見があったが、スタンダードになった。10年たっても同じだとは想定していない」とも述べ、社会情勢の変化には対応していく意向を示しました。
 また、マナーの問題としても重視している旨、参与は述べていました。

発がん性、過敏症
 当会から「電磁波は心臓ペースメーカーへの影響だけはなく、国際がん研究機関が2Bに分類した通り発がん性の疑いがあり、電磁波過敏症で苦しんでいる方々もいる。また、電車内のような金属で囲まれた空間では、電磁波が反射、集中し、局所的に強くなることがある」と指摘。小林参与は2Bや過敏症、局所的に強くなる研究も承知していると応じたうえで「総務省に訪ねたら、科学的因果関係が立証されていないと言われた」と説明。当会は「確定していなくても、公共交通機関として率先して安全、安心へ一歩踏み込むべき」と訴えました。
 総務省の新指針案はパブリックコメントの募集を経て1月中にも決定される予定であり、決定後、民鉄協の方針をまとめて、2月末日を目処に、改めて当会の要望書へご回答くださることになりました。
 小林参与のお話には、他にもいくつか気になる点がありました。たとえば「離隔距離は科学的には3cmだが安全マージンをとって15cmとしたものであり、本来3cm離れていれば安全」という趣旨のことを繰り返し述べていました。しかし、3cmは特定条件下での実験で影響が出た距離であり「3cm超なら影響は出ない」ことを保証するものではありません。安全を確保するための「科学」の世界では「安全マージン」をとるのが当たり前です。
 とは言え、小林参与をはじめ民鉄協側は、電磁波についてたいへんよくお調べいただいており、非常にご丁寧に対応くださいました。今後とも電磁波に悩む方々の声に耳を傾けていただきたいと思います。【網代太郎】

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