携帯電話基地局の撤去求め裁判中 健康悪化が進む延岡

 携帯電話基地局からの電波で健康被害を受けているとして、宮崎県延岡市大貫町の住民30人がKDDIを相手取り、基地局の撤去を求めている訴訟の第11回口頭弁論が10月12日、宮崎地方裁判所延岡支部で開かれました。原告側証人として、那覇市の医師、新城哲治さんが証言しました。
 新城さんは住んでいたマンションの屋上に基地局が設置された後、自分や家族に深刻な体調悪化が起こりました。転居後に症状が改善したことから、マンションの他の住人の健康調査を行い、基地局設置後に数多くの症状が現れ、基地局撤去後に症状が大幅に減ったことを突き止めました(本会報63号、64号参照)。

新城医師が証言

 報道によると、この日の法廷で、新城医師は自分たちの経験と延岡市の状況が一致していることを証言し、「基地局が及ぼす健康被害について聞いてほしいと思い出廷した。電磁波が蔓延する環境で育った子どもたちがこのまま生きていたらどうなるか…。何とかしてください」と裁判官へ涙ながらに訴えました(『夕刊デイリー』2011年10月13日付)。
 裁判は来年2月15日に結審します。判決は、来春以降になると予想されます。

転居で重い経済負担

 この基地局が稼働してちょうど丸5年となる10月30日、筆者は延岡市の現地に初めておじゃまさせていただきました。基地局の低さにまず驚きました。わずか3階建てのアパートの上に建っており、都内ではあまり見られない光景です。原告団長である税理士の岡田澄太さんの自宅兼事務所(3階建て)から基地局までは約40m。3階から、ほぼ真横に基地局が見えます。
 岡田澄太さん、洋子さん夫妻をはじめ、近隣住民の方々にお話をうかがいました。 基地局が稼働して約半月後から洋子さんに耳鳴りなどの症状が現れ、その約10日後に澄太さんにも耳鳴りや顔の表面がビリビリする症状が現れました。お二人は不眠、耳の痛みなど症状が悪化し、自宅兼事務所に居られなくなりました。
 現在は、基地局から離れたところに自宅と事務所を借りているため、体調がかなり回復したとのことです。しかし、元の自宅兼事務所に長時間いると症状が出てしまうとおっしゃっていました。元の自宅兼事務所のローンも残っているため、現在の自宅、事務所とで三重の支出となり、経済的負担の重さはかなりのものです。

住民の健康がさらに悪化

 経済的理由などで、転居できない方は、設置後の5年間で、症状がさらに悪化しているとのことでした。基地局から約5mの店舗で保険代理業を営む方は、移転しようと不動産業者に相談しましたが、健康問題が出ている状況で店舗の売却や賃貸は無理だと言われました。基地局からの距離が特に近い店舗の2階部分に40万円かけて電波を防ぐアルミシートを壁に貼り、窓にフィルムを貼りました。それでも店舗で長時間は仕事ができず、売上が落ちてしまったとのことでした。社員の中にも健康影響が出た者がいて、他の社員から「社長、ここで働いていて大丈夫ですか?」と尋ねられるのが辛い、とおっしゃる口調に、事態の深刻さがにじんでいました。
 また、基地局から約40mに自宅がある別の方は、経済的理由から転居できず、その自宅に住み続けています。基地局稼働前は花粉症以外は健康だったのに、稼働後は、結核、膀胱がん、高血圧が次々に現れました。基地局からの電波により免疫力が落ちたためではないかとおっしゃっていました。
 結核発症時などに自宅から離れた病院に入院していると、いつも悩まされている耳鳴りや肩凝りがなくなり、自宅に戻ると、それらが出るとおっしゃっていました。
 今も耳の痛み、眠れないなどの症状があり、効果が一晩持つはずの睡眠薬でも眠れず、眠くなる作用がある花粉症の薬を併用しているとおっしゃっていました。携帯電話が「圏外」になる山などへ行くと体がスッキリするとのことでした。
 このように大勢の方々が苦しんでいるのに、基地局が5年間も稼働している現実に、憤りを禁じ得ません(延岡裁判については本会報63号もご参照ください)。【網代太郎】

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