スイス上院、電磁波規制緩和を否決

訳・加藤尚子さん(会員、神奈川県)

 スイスの全州議会(上院)は2016年12月8日、携帯電話基地局からの電波の規制値緩和を盛り込んだ法案を、反対20票、賛成19票、棄権3票で否決しました。この法案は、現在の規制値4~6V/m(4.2~9.5μW/c㎡。ICNIRP国際指針値450~900μW/c㎡の約100分の1)は厳しすぎるとして、国民議会(下院)が連邦参事会(内閣)に提案。スイスの連邦会議は、両院とも賛成しなければ否決になるので、規制は緩和されないことになりました。連邦議会のウェブサイトに掲載されている報道文を、加藤さんに訳していただきました。原文はSTÄNDERAT GEGEN HÖHERE GRENZWERTE FÜR MOBILFUNKANTENNEN


2016年12月8日木曜日12時52分配信 ベルンにて

全州議会が携帯電話基地局アンテナの規制値引き上げに反対

(sda[訳注:スイス通信社(非営利の株式会社形態の全国報道機関)])携帯電話基地局アンテナの規制値は引き上げられるべきではない。全州議会が徹底議論の末、反対を表明した。この話題は物議を醸している。多くの議員が、かつて無いほど多くの住民からの投書を受け取ったと言った。
 僅差の議決で終わった。全州議会が20票対19票、棄権3票で、この攻勢を拒否した。これをもって、その発議に決着が付いた。国民議会は、連邦参事会に非電離放射線防護規制の改正を委託することを望んでいた。国民議会は、現在の規制値は過剰な制限であるとの見解を示している。
 全州議会の中にも、そう見なす議員は多かった。賛成派は、「モバイル通信網は、可能な限り迅速な近代化を要するものだ。」と主張した。常任委員会の長を務めるハンス・ヴィッキ(Hans Wicki)議員(急進民主党/ニトヴァルデン州)は、「モバイル通信の良好な質は、競争の重要ファクターの一つだ。スイスは現時点で最も近代的な通信網を備えているものの、引けを取る恐れはある。」と述べた。
 ヴィッキ議員は、「多くの基地局が現行規制値では不足の状態にあるだろう。もし規制値が引き上げられれば基地局の多数の増設をしなくて済む可能性がある。その方が、電磁波過敏の人にとっても良い状況だ。それに、スイスの現行規制値は欧州の中でも比較的厳しい。」ということを考慮すべきだと挙げた。

懸念を真剣に受け止める
 反対派は、健康影響が出る可能性を警告した。「現行規制値を大幅に下回る放射においても生体が反応することが実証されている。グラスファイバーケーブルなど、他の方法でも目的は達せられる。」と言った。
 ブリギッテ・ヘベルリ=コラー(Brigitte Häberli-Koller)議員(キリスト教民主党/トゥールガウ州)は、「国会は、多くの人の懸念と健康問題を真剣に受け止める必要がある。」と主張した。「非電離放射線の健康影響は不明であり、疑わしい中にあっては健康のほうに重きを置く必要がある。」と述べた。「今日ではまだ、引き上げた放射強度で問題ないと確証する十分な長期研究が全く無い。世界保健機関(WHO)によれば、電磁波には発がんの可能性がある。」とも述べた。
単なる思い込みではない
 ジェラルディン・サヴァリ(Géraldine Savary)議員(社会民主党/ヴォー州)は、「電磁波被曝が原因で健康問題を抱えている可能性のある人たちは、単なる思い込みの患者ではない。」と断言した。オリヴィエ・フランセ(Olivier Français)議員(急進民主党/ヴォー州)は、「疑わしきは回避する」の原則を挙げ、「ここには疑いがある。」と述べた。
 トーマス・ミンダー(Thomas Minder)議員(無所属/シャフハウゼン州)は、「限度値は今は不明だ」とさえ言った。彼は、ほとんどの議員と同じく自分は専門家ではないが、「何らかの影響」、少なくともひとつまみの真実があると述べた。彼は、苦しみ怒る人たちからの投書からその結論に至ったという。彼は、「誰にも放射による長期的影響は分からない。主張すべきは、規制値を低くしても悪影響が出ないというわけではなく、重度にならないだけということだ。」と述べた。「これについては、すぐにでも占い師のマイク・シヴァ(Mike Shiva)に電話して聞くしかない。」と[訳注:よくテレビに出て真実を言うことで欧州で有名なスイス人の占い師です。長期的影響は分からないから占い師に聞くしかないという意味で使ったと思われます]。

iPhoneで送信
 コンラート・グラーバー(Konrad Graber)議員(キリスト教民主党/ルツェルン州)も、多くの投書を受け取ったと答えた。その内のかなりの数がiPhoneやiPadで送信されてきたものとのことだ。「統合失調症」の特徴が示されているという。「モバイル・コミュニケーションの利便性を誰もが高く評価したが、その悪影響は誰も望まない。スイスではデータ送信量が年々倍増している。」と述べた
 クロード・ヤニアク(Claude Janiak)議員(社会民主党/バーゼル=ラント州)は、このテーマは連邦予算や老齢年金よりも物議を醸しているようだと言明した。彼が限界に思うほど、議員たちは頭を悩ませているという。彼はこの発議に賛意を表明した。パスカーレ・ブルーデラー(Pascale Bruderer)議員(社会民主党/アールガウ州)も、この発議を支持した。「その代替策が基地局アンテナの増設になるのが心配だ。」と述べた。

クリスマスに最新機器
 ドリス・ロイトハルト(Doris Leuthard)連邦参事は、社会の矛盾を指摘した。「多くの子どもがクリスマスに最新機器をもらった。平均的なユーザーは、電話を5分、インターネットを1時間使っている。」という。
 彼女は、「皆、インターネットをスイス・アルペンクラブの山小屋[訳注:スイスアルプスの絶景が見られる山小屋]に行ってさえやりたがる。しかし、電磁波被曝は誰も望まない。」と述べ、「被曝被害の90%は端末に由来し、携帯電話基地局からではない。」とも指摘した。「それを多くの人は知らない。国民への情報提供の改善が必要だ。」と述べた。


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