Wi-Fiの健康影響 最近の研究報告から

 国が普通教室の「無線LAN(Wi-Fi)整備率100%」を目指していることによって児童生徒への健康影響が懸念されることから、当会は文部科学省に要望書を提出し、さらに同省の担当者と意見交換をしました(会報前々号、前号既報)。政府機関や企業から独立した10カ国29名の著名な科学者によるグループが発表した「バイオイニシアティブ報告書2012」が、低周波及び高周波電磁波の曝露は自閉症の発症リスクを高める可能性を示す強力な証拠があると指摘(1)するなど、電磁波による子どもへの影響を指摘する多数の指摘があります。無線LANについて、その電波による健康影響の可能性を報告した、最近の研究をご紹介します。【網代太郎・訳も】


歯のアマルガム流出を促進
 シラーズ医科大学歯学部口腔顎顔面放射線学科(イラン)のPaknahadらが昨年(2016年)報告しました(2)。
 抜歯したヒトの虫歯のない小臼歯20個の頬側側面に5級窩洞(かどう=虫歯の治療のために削って作った穴)を作ってアマルガムで修復し、10本を曝露群、10本を対照群にしました。曝露群には2.4GHzのWi-Fiルータを30cmの距離に置き、
ルータから20m離したラップトップPCとの間で通信させて、ルータからの高周波電磁波を20分間曝露させました。実験後、歯を人工唾液に浸して溶け出た水銀濃度を比べたところ、対照群の水銀濃度0.026±0.008mg/Lに比べて、曝露群は0.056±0.025mg/Lと統計学的有意に高かった(P=0.009)とのことです。

ラット実験で慢性腎臓病の可能性
 スレイマン・デミレル大学医学部小児腎臓学科(トルコ)のKuybuluらが昨年報告した、オスのラットを使った実験です(3)。
 胎児期群、出生後群(ともに2.45GHzの無線インターネット電波を長時間曝露)、
および擬似曝露群の3群を比較しました。胎児期群は、酸化ストレスの指標であるマロンジアルデヒド(MDA)と全酸化状態(TOS)のレベルが高く、活性酸素分解酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)のレベルは低かったです。また、スポット尿(1回の排泄で採取される尿)のNAG/クレアチニン比(尿細管障害の指標)が胎児期群と出生後群で統計学的有意に高かったです。
 これらのことからこの研究は、胎児期及び出生後の無線インターネット電磁波への曝露は慢性腎臓病を引き起こす可能性があり、妊娠期間と出生後まもない時期に電磁波発生源を減らすことは、腎臓についての弊害を減らすかもしれないと述べています。

精子運動への悪影響
 トゥルグト・オザル大学医学部泌尿医科(トルコ)のユードゥルム(Yildirim)らが一昨年、報告しました(4)。
 この研究では、論文著者が所属する不妊症外来を受診した男性から精子を提供してもらうとともに、携帯電話と無線インターネットの使用頻度を尋ねるアンケートに回答してもらいました。1082名からアンケートが集められ、うち無精子症の51人が研究対象から除外されました。
 携帯電話の使用と、精子の数、形態との間には統計学的有意な違いはありませんでしたが、精子運動には有意な違いがありました(それぞれp=0.074、p=0.909、p=0.05)。全運動精子数と前進運動精子数はインターネット使用の増加に伴って減少し(それぞれp=0.032、p=0.033)、また、無線インターネット使用者は、有線インターネット使用者よりも減少していました(それぞれp=0.009、p=0.018)。無線インターネットの使用時間と全精子数の間に逆相関がありました(r=-0.089、p=0.039)。

(1)NPO法人市民科学研究室「『バイオイニシアティブ報告書2012』について」
(2)Maryam Paknahad et al.2016.Effect of radiofrequency radiation from Wi-Fi devices on mercury release from amalgam restorations
(3)Kuybulu AE et al.2016.Effects of long-term pre- and post-natal exposure to 2.45GHz wireless devices on developing male rat kidney.
(4)Yildirim et al.2015.What is harmful for male fertility: cell phone or the wireless Internet?


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