各地からの報告 基地局2基を撤去した戦略

基地局問題院内集会(2023年8月)

村上梅司さん

報告する村上さん

 写真1枚目の基地局、これは(神奈川県二宮町の)住宅にポンと建ったやつです。私の家から近いです。もう一つが、(二宮)町が100パーセント持ってる土地、公園ですよ。公園の中に基地局が建ったものです。子どもが遊んでる。
 基地局の場合は、戦う相手っていうのは、二つです。
 一つは携帯電話会社ですよね。もう一つは地権者です、地主さん。それで、戦略を立てるときにこの二つに対して、どうやって個々の戦略を立てるか。これで決まります。
 写真の二つの基地局は、運動を始めてから6カ月と7カ月で撤去できました。その戦略を皆さんにお話しします。
 まず、携帯電話会社さん、法律がありますから法律の場でいくら議論しても無理です。この会は、それをよく熟知した大久保さんが仕立てたものです。法律の不備が今、わんさと出ている。じゃあ、どうするか。科学的にも疫学調査ですよね。だから、これをどうやって(実現させて)いくかっていうのをスタートさせたのが大久保さんです。
 私の目的は、被害が出るだろう、出ているというのを、はよう撤去せないかんと。そんな2年も3年も待てない。当たり前のことですよね。それで、どうやって電話会社を攻略する戦略を練ったかっていいますと、法律ではないですよ、不祥事を、スキャンダルを見つける。合理的にビジネスやってるか、ちゃんと。やってると皆さん思うでしょう? ところが違いました。
 もう一つは地権者。地権者に、どういうふうにアプローチするかと。最初の例(住宅地の基地局の地権者)はね、一般市民。契約を解除しろというわけにはいかない。自由があります。不労所得も得てます。名誉も持ってます。自分がそんな悪いことに加担してたのかって。だから、こうしました。地権者のアプローチは、よろしいですか、外堀を埋めて社会正義に訴える。これがポイントです。これは言葉で言うと簡単なんだけども、じゃあ、どうやって外堀埋めるか。社会正義を地権者にやってもらうかということです。

撤去された二宮町の住宅地の基地局

 実例で言います(会報第141号参照)。住宅に建っている場合は、こうやりました。楽天モバイルさんなんですけども、調べました、何をやってるのか。基地に関してどうやってるか徹底的に調べました。
 地権者に対しては、こういうことやりました。まず、ここに住もうとしてましたから、この町がどれだけ大騒ぎしてるかというのを肌で感じてもらうように示したんです。最初は署名運動です。許される時間は私の場合、1カ月しかない。1カ月の間に、結果的には280名の署名を集めたんですけども、集める方法論ですよ。議員さんと相談して、こうやったら加速的に広まるんじゃないか。バーッと広めて1カ月で280人。だから地権者さんの身にしてごらん。どんな感じします? 自分が住んでる所の住民300名が、ウワーッと「これ、問題ある、不安だ」っていうのを一斉に声を上げたわけですよ。
 次にやったのは、これが町で認められてるものかと。それでこうやりました。陳情しました。議員さんお願いして、どうしても楽天さんに住民説明会をやっていただきたいと。私は個人的に言いましたよ、「お願いします」。(でも)聞かないです。それで、陳情という形でやりました。もちろん、予備の準備があったんですけれども、陳情は全員賛成で採択されました。これ、地権者さんから見たらどう感じます? 町も全員一致で(説明会に)OKなんだと。問題あるんだと分かるでしょう?
 その次、住民説明会するのに通常やったって「法律で認められてるんでしょ? 健康に全く問題ないですよ」。何十年もかかって、これを繰り返しやってるんですよ。分かる? そんなことやったって仕方ないから策を練りました。住民説明会の第1幕は騒動を起こすと。さっき、大久保さんがおっしゃってましたけども、けんけんがくがく、プリントにできないような言葉ね。「何やってんだ、おまえら!」。そういうのが、ワーッと出て。地権者がそこにいるんですよ。どう感じます? 町のほとんどの人が納得してないと。
 それで普通は住民説明会終わっちゃう、「はい、皆さん、よく頑張りましたね」(だけで)。ところが、こんなんで何もなりませんから第2幕を用意してたんです。何かというとアンケートです。その場でシークレットにしてたのを、ばっとアンケートを出席者に出してね。今の楽天さんの説明で分かりましたか。丁寧に説明しましたか。これ、総務省が住民に対して、質問あったら丁寧に説明しろっていうふうに言ってるんですよ。アンケートの結果は75パーセントが(丁寧に)説明してない。その結果を数字にして総務省と楽天さんに送付しました。これが第2幕ではないんですよ。第2幕は何かというと、そこにいる地権者が「楽天さんは総務省が指導してることを守ってない。町民がこれだけ怒るのは無理がない」、こう納得します。
 この住民説明会で一番困ったのは、さっき、飛ばしましたけども集客です。楽天さんは「せいぜい300人の署名来たら(その中で集まるのは)10分の1か20分の1だよ。そんなんでポショッとなっちゃうよ」と言ってたんです。参加者が70人超えで用意したこういう部屋かな、満杯です。それも地権者が見てるんです。分かりました? 地権者に対する外堀を埋めて、社会正義を実施してもらうと。結果、やってくれましたよ。もう更新しないと、契約をね。すぐに撤去されました。

撤去された二宮町の公園の基地局

 今度、こっち(公園内の基地局)。こっちは地権者は町です。分かる? 町です。町の役場であり、町長です、代表はね。私の場合、二宮ですから。じゃあ、この団体をどうやって外堀を埋めて社会正義をしてもらうか。詳細は、皆さんにお配りしている冊子(当日配付資料)に書いてあります。こんなテレビドラマみたいなことやったんかと。
 もう一つの、さっき言いかけたんですけども、楽天さん、スキャンダルではないですけども、正当なことをやっていませんでした。これも、じゃあ、どうやってそれを見つけたんかと。全員、知らなかったんですよ、町は。分かります? 町長も知らない、職員も知らない、議員さんも全員知らない。なんで私は分かるんですか。戦略です。最初から多分、こうだろうというので徹底的にヒアリングしました。パズル。人間の行動というのは、皆さんもきっとそうだと思いますよ。紳士、淑女ですけれども徹底的にヒアリングして、事実を書き出してパズルをもう一回、集めると、入らないパズルがあるんです。皆さん、ふんふんって言わないね。すねに傷のある人は分かると思うんですけども、必ずやらかしてるのがある。この場合は、楽天さん、それをやっちゃってた。で、ひた隠しにしてた。職員も、ひた隠しにしてた。なんでそんなこと私が分かるの。それは冊子の資料に書いてますから。
 これで最後なんですけど、言いたかったのは戦略です。ストラテジーって言いますけども、ゴールは騒ぐことじゃないでしょう? 住民説明会で、おまえらアホやって言って、それはスッとするけども、それはゴールじゃない。健康被害を強いられて泣いてる人がいる。人生変わった人がいる。それを助ける。この場合は撤去です。撤去しかない。もちろん、方法あるんですよ。方法あるんですけども、私ができたのは撤去です。

当日配付資料

稼働している基地局を、撤去に至らしめた経緯と結果 その2:中里公園内の基地局

村上梅司さん

 村上さんが上でご報告くださった2件の基地局撤去のうち、公園内の基地局の件についての院内集会の当日配付資料「その2:中里公園内の基地局」を転載させていただきます。

こどもたちが遊んでいる公園の中に基地局が建っていた!
 二宮町が所有する公園(中里第1遊園地)のなかに、あろうことか基地局がそびえるように立っていた。電磁波による健康被害は、こどもたちが最も深刻な影響を受けることがわかっているにもかかわらずである。
 基地局設置の手続きはスムーズに進んでいた。2020年10月、楽天モバイル(株)から公園内に基地局設置の申請があり、二宮町はすみやかに許可を出した。楽天モバイル(株)は、許可をえて、8ヶ月後にようやく稼働を開始したようだ。
 ちなみに、稼働まで時間を置くのは、近隣住民の健康被害の訴えがあった場合の対策にもなる。稼働の情報は、周辺住民には知らされていない。したがって、稼働日のまえに「基地局がたって、健康を害された」と住民側から訴えがあった場合は、住民側の嘘だと判定し住民運動を簡単につぶすことができる。
 稼働後にどれくらいの電磁波が出ているか測定した。公園の中心部にある滑り台の場所で、電磁波の強さを測った。予防原理に基づく国際基準をはるかに超える状態であった。この電磁波が子供の頭の上から、休むことなく降り注いでいる。
 測定中は週に数回、数時間程度の電磁波をうける。公園の基地局が撤去されるまでは、軽度だが回復しない疲労感で体調不良になった。望んではいなかったが、電磁波による健康被害を実体験することができたわけである。

基地局の撤去。でもどうやって…
 公園に遊びにきたこどもの頭の上から、危険水準をはるかに上回った電磁波がふりそそいでいる。このままだと、脳に損傷を生じ、子供たちの将来は台無しになる可能性が多いにある。一刻も早く、この状況を改善しないといけないという想いが、からだ中を駆け巡った。早急になんとかしないといけない。でも、具体的にどうやって…。
 楽天モバイル(株)は、国から基地局設置のおすみつきをもらい、二宮町の条例等に従って、公園内に正式の設置許可をとっている。国と町の行政機関を相手に、1町民に何ができるのだろう。
撤去に向けて、方針を立てることにした
 西も東もわからない者が、基地局撤去の方針を立てることなどできるわけが無かった。そこで、今回も、「その1:二宮753基地局」で報告したように、基地局問題の解決に極めて優れている人物にSOSを送った。
 「電磁波問題市民研究会」の事務局長である「大久保貞利」氏である。

住民の方々に、基地局の問題点を知ってもらうことから始めた
 「その1:二宮753基地局」に詳細を報告したように、住民の方々に、基地局の問題点を知ってもらうことから始めた。
 基地局の周辺にすんでいる住民の人々、そして公園にあそびにきている子供たちの父兄に、基地局が立っている公園の問題点をまとめたチラシを手配りし、一人一人口頭で説明した。
 ところが、「その1:二宮753基地局」のケースとは違って、今回は不思議なほど人々の反応は、いまひとつ手応えがなかった。そこで、地域を統括する自治会の代表に、相談に乗っていただくように打診した。数日後、電話があり「この件を取り上げないことにした」と連絡があり、理由の説明はまったくなく、相談さえも拒否された形になった。
 このように住民たち、自治会へのアクセスは、最初から頓挫した。これにくわえて、地域を掌握する担当の町会議員もいなく、おりから町会議員の選挙がちかづいていることから、町会議員との接触を回避せざるを得なかった。

“必ず失敗する”基地局撤去の方針。
 電磁波問題にかんする大久保貞利氏の一連の著書、及び電磁波問題市民研究会の会報などから学んでいた「厳しい現実」があります。住民運動が軌道に乗っても、また住民説明会を要望する陳情が採択され、住民説明会が実施されても、一種の高揚感は得られるものの、肝心な基地局撤去というゴールは、この延長上にあるとは限らないということです。
 たたかうべき戦場を「法律を軸にした話し合い」にしているからです。基地局設置側は、話し合いと称して、住民をいつのまにか法律の場にひきこみます。基地局を設置した側の主張「わたしたちは、国が安全だと決めている電波防護指針にしたがって基地局を運営しています。安全性に問題はありません。」という法律を盾にした話し合いです。
 基地局を設置した側の人たちが、「安全に問題がない」と信じているのかといえば、思考停止の人は別にして、すくなくとも会社の経営に携わっている人たちは、安全性に問題がないなんて、まったく思ってはいません。その証拠に、自分の家族親戚を基地局の場所、とりわけ危険水準を超えた場所に住まわせることなど決してありえないからです。まして、中学受験を控えている子どもさんなどがいれば、そこに住まわせることなど絶対にしない。基地局の電磁波による健康被害の悲惨さの実情を知っていれば、「安全です」などと言えるはずがありません。「あなたの幼い子どもたちを、あなたが表向き“安全だ”という場所に住まわせてみますか?」。基地局設置者たちに、一度聞いてみれば即座に本音がわかります。
 基地局反対派が、いくら大変な勉強をして予防原則をもちだし、疫学の事例を示しても、さらにいくら大変な目をして得た測定値を出しても、係争の場が法律になれば、法律にまもられている基地局は、びくともしません。議論はすすみません。事実上の終了です。これを何十年も繰り返しているのです。
 意外と思われるかもしれませんが、住民運動を指導している町会議員のなかには、このことにまったく気づいていない人たちが事実います。これらのリーダーたちは、政治的な高揚感、政治的なメリットがありますが、住民運動で助かると期待している健康被害者たちは、撤去をめざした
ゴールがうやむやに消えてしまい、疲弊感のみが重くのしかかります。大変迷惑な話です。形だけふりをしているリーダーたちには、本来ならしかるべき責任を取ってもらわないといけません。

基地局撤去の戦略を立てる。
 そこで、何よりも先に、基地局撤去に特化した戦略を立てることが重要になります。
 戦略は、2つからなります。この戦略は、「その1:二宮753基地局」でも、決定的な効果を出しました。
(1)楽天モバイル(株)対策:

基地局の最近の動向を把握します。何が問題になるのかを特定し、そこに集中して攻勢をかける。おもに基地局関連の「不祥事」を見つけ出すか、基地局による健康被害になにも対策を講じようとしない楽天モバイル(株)を、外堀を埋めた後で「社会正義」の旗のもとに追求します。
楽天モバイル(株)は、「このままだと会社の利益に悪影響が出てくる。傷口が大きくなる前に幕としよう」と決断させるのです。

(2)地権者対策:

地権者が「望んでいること」、「望まないこと」をリストアップし、細心の注意をしながら対策をたてる。地権者に、現在起こっていることを目に見えるようにしてあげて、肌感覚まで感じれるようにします。そして、外堀を埋めた後で「社会正義」を自ら決断できる状況を速やかに作ってあげるのです。

 以下に、戦略にしたがって実際に実施した内容を具体的にのべます。できるだけ、個人情報を出さないようにしています。一部、飛んだ箇所があるかもしれませんが、できるだけ再現できるように説明します。

楽天モバイル(株)対策
 公園の中にそびえたつ基地局について、毎週の調査と電磁波の測定を実施。基礎的なデーターを入手し、楽天モバイル(株)の行動を数字化して、基礎データーにしていった。次に、楽天モバイル(株)が出した許可申請書を中心に調査した。
 結論から言いますと、2件の「不祥事」があきらかになりました。
 1件目の「不祥事」は、2021年に楽天モバイル(株)が設置した基地局は、申請は4Gアンテナであったにもかかわらず、初期の段階から4Gにくわえ、契約外の5Gアンテナが設置されていたことをつきとめました。あきらかに契約違反で「不祥事」にあたる。
 2件目の「不祥事」は、明らかな契約違反をしているにもかかわらず、楽天モバイル(株)は、町からの問い合わせに5Gはつけていないと、半年間も事実でないことを主張していた。偽計業務妨害の可能性のある「不祥事」にあたる。
 しかし、もっと大きな問題は、誰一人としてこれらの不祥事に気が付くことができなかったことです。二宮町のなかで、トップの町長から、担当部署の全員、町会議員の全員、だれ一人としても気が付く人間がいなかったことです。このまま放っておいたら、楽天モバイル(株)の不祥事は、この先、何十年も永遠に気がつかれない仕組みになっていたのです。
 なぜ気が付けなかったのかを説明します。
 1 二宮町役場にいる全員、一人残らず基地局の基本的な知識がなかったこと。
 外部の人間が、楽天モバイル(株)が提出した許可申請書の情報を見ても、ほとんで全て黒塗りで、内容がわかりません。肝心の申請書はやみの中でした。後になって、あるルートから申請基地局の図面を偶然みることができました。「ミラクル」です。すぐ、4Gアンテナの基地局申請であることがわかりました。
 ところが、この図面を担当者たちに見せても、チンプンカンプンでどんな意味があるのかわからない状態でした。そこで、はじめてわかったことは、関係者全員が4Gと5Gアンテナの違いすら知らなかったことです。知らないにも関わらず、「5Gアンテナの設置は、許可することは問題であり、楽天モバイル(株)から将来要望が出てもそのまま了承するわけにはいかない」と息巻いていたのです。実際は、既に5Gアンテナがついているのです。滑稽というより、責任問題につながります。自分達に基本的な知識がないことから、設置事業者の言い分を鵜呑みにし、自分達で確認することがなかったわけです。
 2 担当者全員が自分で確認する意識さえなかったこと。
 わたしが、中里公園のなかに設置されている基地局をはじめて調べた時、4Gと5Gアンテナを設置していることは、最初に見た時点でわかっています。しかし、二宮町の担当者全員がこの事実に気がついていませんでした。担当者たちは、楽天モバイル(株)に設置許可をだし、公園の基地局を定期的に見回りに行っているにも関わらず、気が付かなかったのです。担当者の一人でも、申請書通りかの確認していれば、問題が起こらなかったのです。
 3 担当者は、業者任せで確かめることさえしていなかったこと。
 予算委員会で、公園の基地局に5Gアンテナを設置しているかどうかの質疑があったとき、担当者から、「楽天モバイル(株)に確認しており、設置していないとの返事をもらっている」と回答している。このあとも、このまま確認せず放置のままだったわけです。
 以上のように、これだけの過失が重なっていれば、楽天モバイル(株)の不祥事は永遠に外にでることはありません。
 それではなぜ、この2件の不祥事をみつけることができたかです。これがわからないと、稼働している基地局の撤去が実現できた真相の半分がわかりません。
 次の2つです。
 1 「人物像」を描くため、必要なまでのヒアリングを繰り返したことです。最初から不祥事があるとは、実のところ分かりませんでした。ちいさな矛盾でも、たしかめるまで止めることがなかったヒアリングのおおきな効果です。
 関係者全員から直接面談するヒアリングから、たくさんの情報がでてきます。これらをならべかえてみると、かならずはみ出てしまうパズルがみつかります。人間の営みは、こうゆうものです。はみ出たパズルを考え合わせると、突破口がみつけられるわけです。
 2 電磁波問題市民研究会の大久保貞利氏の豊富で的確な情報が下地にありました。氏による基地局電磁波による健康被害の疫学調査の情報は、大変有用でした。これに加え、二宮町近郊の基地局電磁波の事例研究を通して、関連の生の情報をもっていたことです。

地権者対策、その1 町役場担当者たちのヒヤリング
 「その1:二宮753基地局」の場合の地権者は、基地局を設置する土地を貸している一般住民です。一方、中里公園の基地局は、地権者に相当するのは二宮町であり、代表の町長(以下「町」と表記)です。
 公園の基地局撤去の戦略を立てる上では、「一般住民」か「町」かの違いだけです。「その1:二宮753基地局」の撤去で、効果を実感できた戦略は、そのままつかえると判断し、実行しました。
 地権者である「町」は、対象として公園の中の基地局設置を許可した担当部署と町長からなっています。したがって、担当部局の「人物像」を引き出し、何が問題であるか調査しました。
 上述したのは、楽天モバイル(株)の「不祥事」ですが、ここからは、担当部署の「過失」についてです。町の公園内基地局の担当部署の担当者たち、並びに前任者たち全員にヒアリングを実施しました。単身、町役場に乗り込んで待ったなしのヒアリングを続けました。
 予期しなかった“ミラクル”も手伝って、明らかにしたい「人物像」について、これでもかというほどの「過失」がぼろぼろと出てきました。
 町がおこなっていた「過失」とは:
 (1)楽天モバイル(株)が、町に無断で4Gアンテナに5Gアンテナを設置していた件は、楽天モバイル(株)の「不祥事」であると指摘した後も、「契約の土地に設置した基地局の上部につけているもので、契約違反にならない。」と、自分達の過失を、このまま揉み消す発言をしていた。再三の契約書を再確認させると、担当者たちは、楽天モバイル(株)の契約違反を見逃していたことをみとめた。
 (2)楽天モバイル(株)が町に無許可で5Gアンテナを設置したことは、「5Gは、ささいな変更で、契約書の変更にあたらない。」と、自分達の過失を揉み消す発言。
 ところが、予期していなかった情報が空から降ってきた。“ミラクル”は一連の事例研究をしている中で、たまたま手に入れていた鎌倉の情報公開資料の一つです。楽天モバイル(株)自身が認めた大きな契約変更である5G追加の設置許可申請であった。この事例を担当者たちに提出。楽天モバイル(株)の契約違反を見逃していたことをみとめた。
 (3)前任者は、当初から5Gも設置されているという重大な情報を早い段階から得ていた。過去の責任問題につながることから、現在の担当者に報告しなかった。このことが、基地局の撤去を大幅に遅らせていた。
 (4)基地局設置の工事において、すべき初期動作をまったくしておらず、設置当時の写真、情報が欠落していた。これにくわえ、基地局についての知識がないものが、契約を許可した担当責任者になっていた。これが基地局の撤去を大幅に遅らせていた。

地権者対策、その2 町長へのヒヤリング
 次に、町の行政責任者である町長に、今までのデーターをしらせ、この現状をどのように解決するのかどうかヒアリングした。
 順番としては、町長に「社会正義」を実行してもらうために、戦略上、外堀を埋めることが必須となる。つまり退路をたって、社会正義の決断を速やかにしてもらうことです。
 まずは、「社会正義」を実行する舞台づくりです。
 (1)公園で遊ぶ子供たちの頭の上から、基地局からの電磁波が降り注いでいる様子を写真にしたものを提示。…自分の決断で子どもたちの健康をまもることができる!
 (2)子供たちが日々遊んでいる滑り台に設置した電磁波測定器とその値を写真で示したものを提示。…自分の決断で、こんな危険な状態をなくすことができる。
 (3)この値は、予防原則をもとにして勧告されている欧州評議会の値をはるかに超過している事実を表で提示。…自分の決断で、国際的な予防原則の遵守を実現できる。
 (4)世界的には、基地局から照射されている電磁波は、健康被害を引き起こしていることを科学的にしめす疫学調査が既に30年以上も積み重なれていることを提示。…自分の決断は、科学に裏打ちされたものである。
 (5)日本では、基地局から照射されている電磁波による健康被害への不安があり、事業者と基地局周辺の住民の紛争を防ぐ目的で条例が制定されていることを提示。…自分の決断で、二宮町に電磁波問題を予防するすぐれた条例を生み出すきっかけになる。
 これら材料から、町長の立場でできる表舞台の選択肢は、
 (1)直ちに楽天モバイル(株)の設置した基地局を撤去する。撤去の手続きは、楽天モバイル(株)側の契約違反による撤去。
 (2)楽天モバイル(株)との契約更新をしないことによる撤去。
 どちらの選択をしても、町長の社会正義を事実上実行したことになる。
 退路をたつために外堀をうめる。
 一方、町長は、社会正義を実行しない選択肢もある。このまま、問題を先送りして、うやむやにし、契約更新を自動的にすることである。
 しかし、一連の外堀を埋めることは、すでに早い段階でおこなっていた。基地局の電磁波を常に測定し、危険性をまとめたチラシを近隣住民に配布し、また公園にあそびにきている子供たち、そして保護者たちにくばりつづけた。このことから必然的に、公園内の基地局について、疑問をいだきはじめている住民がでてきていた。
 そして、「電磁波から健康を守る会」は、楽天モバイル(株)を裁判でうったえる準備をはじめた。2件の不祥事があるからである。これは、町としても穏やかなニュースではない。さらに町にも、それなりの「過失」が複数あり、この情報は、すでに6社の新聞社へのプレスリリースにして送っていた。外堀が埋められ、先送りの退路を立たれた状態になっていた。
結果
 町長は、更新延長をしない通達を、楽天モバイル(株)に出した。町長は、実質上の「社会正義」を実施したわけである。
 その結果、楽天モバイル(株)の基地局は、2023年3月に中里第1遊園地から撤去された。

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