各省庁へ過敏症対応を訴える

東麻衣子さん(アナログメーターの存続を望む会)

 アナログメーターの存続を望む会の東麻衣子さんらが6月、電磁波過敏症(ES)の方々が抱えている問題に関して6省庁に質問・要望を投げかけ、各省庁からレク(説明)を受けました。東さんは昨年4月にアナログメーター存続を求める経産相あて署名5370筆を提出した際にもレクを受けています(会報第100号参照)。東さんが今回の概要をご報告くださいました。


 2017年6月26日に仁比聡平議員秘書髙橋さんの協力により電磁波問題の省庁レクに参加してきました。レク参加者の4名は症状の重さに違いはありますが、電磁波過敏症を患っています。

レク参加者
 いのち環境ネットワーク 加藤やすこさん
 宇都宮市議会議員 西房美さん
 電磁波過敏症のSさん
 アナログメーターの存続を望む会 東麻衣子

レク協力
 仁比聡平議員秘書 髙橋さん
 大門実紀史議員秘書 山本さん
 堀内照文議員秘書 増田さん

レクを受けた省庁は以下の通りです。
 1.経済産業省
 2.消費者庁
 3.厚生労働省・内閣府
 4.文部科学省
 5.国土交通省
 6.総務省

経済産業省
 アナログメーターの存続を望む署名の追加分238筆を提出しました(累計5608筆)。
 質問①スマートメーターの設置で健康被害が多発している。電磁波過敏症患者以外からの報告もある。電磁波過敏症患者の人権保障の観点から、永続的にアナログメーターを確保できるようにしてほしい。アナログメーターを提供できない場合はどのような点が問題になるのか、それらの問題をクリアするにはどのような対策が必要か。
 質問②電磁波過敏症になるとLED電球や蛍光灯に反応し白熱灯しか使用できない。電磁波や低周波音、化学物質の少ない家電製品をメーカーに製造し、メーカーが電磁波、低周波音、化学物質の情報公開をしてほしいがそのためには何が必要か。
 回答①昨年、類似のご要望があり繰り返しになりますが、エネルギー基本計画に乗っ取って2020年代早期にスマートメーターを設置したいと考えている。WHOのガイドラインに準拠した形で基本的には問題ないと考えている。アナログメーターが提供できない場合どのような問題をクリアするかについて、我々はグローバルなスタンダードに則って対応する。
 回答②電磁波に関して家電メーカーと話をした。WHOの基準に基づいたICNIRPが定めているガイドライン値よりは遙かに低い数値である。これを逆に出してしまったとしても、実際は過敏症の皆さんからすると感じてしまうので、それを表示をすること自体が正しい表示かどうかわからない限りはむしろ正確ではないであろう。「測定結果として数値が少ない」というのはあるが、表示の仕方としてどういう仕方が良いのかは家電メーカーとしては難しいと思っている。

 「WHOのガイドラインに準拠した」という言葉に対し、加藤さんは下記の矛盾点を指摘しました。
・WHOは電磁波のガイドラインを作っていない
・WHOが推奨するのはICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)とIEEE(米国電気電子学会)(どちらも、慢性的な長期被ばくの影響を考慮していないので問題のある基準)
 それに対して、経産省担当者は「WHOの傘下のICNIRP」と答えるが、加藤さんはICNIRPはWHOの傘下ではなく、独自の組織だと指摘。
 Sさん スマートメーターの設置で電磁波過敏症が悪化し、自宅に住むことができなくなった。メーター交換のお知らせは入っていなかった。近所の人も健康被害で苦しんでいる。アナログメーターを希望する人に提供をするよう東京電力に指導して欲しい。

 昨年受けたレクのような壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返すような不毛なやり取りはありませんでしたが、アナログメーターの提供に関しては平行線のままでした。以下のような各電力会社のいい加減な対応について伝えたところ、担当者は驚いた表情をしていました。
・アナログメーターの製造は続いているのに、製造中止になったと嘘をつく
・管轄によってアナログメーターの交換に応じるところもあれば、拒否するところもある
・スマートメーターに交換しないと電力供給を止めるという脅しなど
 加藤さんは電磁波の少ない製品を見定める方法や、電磁波リスクを避けたい人のための安全な製品を選べる仕組みなどを提案、経産省担当者は各メーカーの判断だが検討すべきだと思う、と回答していました。

消費者庁
 質問①「柔軟剤仕上げ剤のにおいに関する情報提供」を行ったようにスマートメーターについても情報提供を行い、事業者に対しても配慮を求める要望をして欲しい。
 質問②昨年のレクでスマートメーターで受けた健康被害について話したところ、担当者から「事故等原因調査等」に調査依頼をしてみてはどうかと提案を受け申出書を提出。しかし「電磁波の健康影響をもたらす電磁波強度の閾値が明らかになっており、スマートメーターはその閾値以下だから健康影響はない」という理由で事故等原因調査を断られた。その閾値と科学的根拠を示していただきたい。具体的な閾値は何を差しているのか。
 回答①我々は事故情報を収集して消費者に情報提供をしている部署。スマートメーターについては事故情報データバンクに十数件情報が出ている。引き続き注視しながら必要に応じて対応したい。
 回答②事故調査委員会は独立した機関になるので、理由の詳細は把握していない。委員会の先生たちが調査するテーマを選定ことになっている。そうした中での検討であると思っている。

 加藤さん「閾値は生体反応がでる部分を示す値ですよね?」
 消費者庁担当者「ちょっと、あの~事前に質問事項いただいてなかったので今この場でお答えするのは難しいと思います」としどろもどろ。
 事故調査の申出が却下されたことについてはその場では教えてもらえませんでしたが、後日事故調査委員会事務局から電話がありました。
・閾値については総務省「生体電磁環境に関する検討会」報告書(平成27年6月)に基づいている。(指針値は書いているが閾値は書いていない)
・科学的根拠はICNIRPガイドラインで問題ないと判断した。
・スマートメーターに限らず、事故調査で不選定したものでも、新たな事実が出てきたものは再調査をする。何度も申請することは可能である。
・調査対象は件数ではなく、内容の深刻さを消費者安全調査委員会の本委員会7名が判断する。
 消費者庁担当者が「スマートメーターについて事故情報データバンクに12件情報が出ている」と発言。加藤さんは「スマートメーター」で検索すると12件「電気メーター」で18件、合計30件の内、健康被害に該当するのは24件と指摘。私は関西電力(関電)に無断でスマートメーターを設置され、家に帰った瞬間ひどいめまいで倒れたこと。自身が化学物質過敏症、電磁波過敏症の既往歴があり、このめまいが電磁波由来であることがすぐに判ったこと。自宅と両隣のスマートメーターをアナログメーターに戻してもらったことで避難先の実家から自宅に帰ることができたと説明。事故調に申出をしたが、指針値よりも低いレベルでも私たち電磁波過敏症患者は反応する。電磁波過敏症患者にとってはスマートメーターは事故商品。アナログメーターを希望する人には継続的に提供して欲しいとお願いしました。
 アナログメーターとスマートメーターの電磁波測定の比較表を提出。高周波の数値がアナログメーターに比べてスマートメーターは格段に高い。しかも扉を閉めた状態の方が数値がさらに高い。Wi-Fiの電磁波も測定したが、スマートメーターの数値が高い。こんなものを自宅につけられたら住むことができない。過敏症を発症する。

使用した測定器
①ファウザー・フィールドメータ FM6
・測定範囲
 電場 0~2000V/m
 磁場 0~20000nT
・測定範囲
 電場 0~2000V/m
 磁場 0~20000nT
・測定周波数
 電場、磁場 16~2000Hz
②ギガヘルツ・ソリューションズ HF35C
・測定範囲 800MHz~2.5GHz
アナログメーター
 電場 33V/m
 磁場 5400nT(54mG)
 高周波電磁波 170μW/㎡
スマートメーター
 電場 170V/m
 磁場 500nT(5mG)
 高周波電磁波 1400μW/㎡
 高周波電磁波(扉を閉めた状態)3610μW/㎡

 加藤さんはスマートメーターに関して注意喚起をしていただけないか。関電はスマートメーターに交換しないと電気を止めるという脅し行為があったと指摘。
 消費者庁担当者は事故情報データバンクはPIONET(パイオネット)に寄せられた情報を反映していると説明。私は事故情報データバンクの件数があまりにも低く、私が受けた相談件数の方が上回っていること、私が2015年2月に消費者センターに相談した内容が反映していないことを指摘。PIONETの入力は相談員の資質に左右されていることが判りました。スマートメーターの健康被害や相談の取りこぼしが多いと思われるので、そのあたりもしっかりと情報収集してもらいたいとお願いしました。
 西さん 息子さんが新築する際、スマートメーターは絶対に付けないで欲しいと連絡したのに勝手に設置された。国の命令だからといって強制的につけさせるようなことはしないで欲しい。東電に指導をしてもらいたい。

厚生労働省・内閣府
 質問①昨年の6月に電磁波過敏症の病名登録をリクエストしたが返答がない。電磁波によって生活が困難な人は障害にあたらないのか。
 質問②障害者差別解消法では、電磁波過敏症や化学物質過敏症が同法対象になるのか否か? 障害者認定に際し、医学モデルではなく社会モデルを採用するのが同法のベースにある考えのはずだが(国連「障害者の権利に関する条約」)、実際に運用される時に医学モデルがベースになっていないか? 日本はなぜ社会モデルにならないのか理由を知りたい。
 回答①病名登録を依頼した部署に確認してほしい。こちらは部署が違うので事情がわからない。
 後日、MEDIS 標準病名マスター担当から下記のメールが届きました。恐らく、省庁レクでこの件を話さなければ放置されていたと思われます。
 「当方で調査したところ、医学的な根拠を示すものが見つけられなかった為、マスターへの登録は不採択となりました。」
 省庁レクをセッティングしていただいた仁比聡平議員秘書の髙橋さんが、あまりに不誠実な対応(省庁レクでの追及がなければ放置の可能性大)と思ってくださり、昨年6月受理以降の経過、議論の経過を文書で提出するよう求めてくださり、書面が届きましたが情報公開の度合いが非常に低いものでした。
 回答②障害者差別解消法においては症状の原因を問わない「社会モデル」を採用している。単に心身の機能に障害があるなしだけでなく、社会的障壁によって継続的に日常生活、社会生活に制限を受けているかという考え。

 今回初めて耳にした「社会モデル」が新たな収穫となりました。制度の間に落ちて困っている人たちの希望の光になればと思っています。

文部科学省
 質問①学校Wi-Fiは無線LANではなく、有線LANにして欲しい。
 質問②日本の電磁波過敏症発症者の80%は化学物質過敏症を併発しているというデータがある。電磁波過敏症の児童生徒の実態調査を求める。また、化学物質過敏症の子どもにはどんな配慮をしているのか?電磁波過敏症の子どもにも何らかの配慮を行う予定があるのか?
 質問③海外の学校無線LANによる健康被害、訴訟、子どもの自殺などの事例を調査しているか? 国内で同様の健康被害や自殺が発生した場合、どこが責任を取るのか?
 質問④2020年代早期に無線LANとタブレット端末を使った授業の導入が進められているが、教室内での電磁波被爆量を測定しているか?
 質問⑤学校無線LANは、授業で使われるので、電磁波過敏症患者が避難できるよう、オフにできるかどうかを知りたい。
 回答①無線LANにするのは利便性から。普通教室での使用を想定しているので、有線LANにすると線だらけになる。
 回答②総務省、厚労省の先行的な知見に基づき、文科省も対応している。電磁波に過敏な子どもがいるのなら、個別の状況にあわせて自治会や学校が対応すると考えている。
 回答③海外の調査していない。責任については、総務省が安全だと示している。文科省としては総務省の対応を踏まえて対応する。
 回答④測定していない。総務省の安全基準に準じている。
 回答⑤無線LANのオンオフは技術的に可能。導入方法によりスイッチは異なる。

 相変わらず各自治体へ丸投げの姿勢でしたが、対話の中で無線LANの周波数帯が「発がん性の可能性」があることを知らなかったという言葉を引き出し、子供への健康リスクについて考えてもらえるきっかけになったと思っています。アクセスポイントは技術的にオンオフ可能という言葉も各学校への交渉に役立てることができそうです。

国土交通省
 質問 交通機関での香料曝露、電磁波曝露で化学物質過敏症、電磁波過敏症発症者は健康被害を受けている。私たちは交通機関が安全な空間であり、化学物質過敏症や電磁波過敏症でも利用できる環境になることを望む。
 回答 鉄道事業者は心臓ペースメーカー使用者への配慮の観点から「優先座席付近での携帯電話の電源をお切りください」と案内している。アロマサービスについては、様々な意見を総合的に勘案して東急電鉄が取り組みを中止したと聞いている。化学物質過敏症や電磁波過敏症は病態や発症メカニズムが未解明だと聞く。総務省、環境省で研究していると聞くので、常に情報収集をしていきたい。

 加藤さん ペースメーカーへの配慮は総務省がルールを変え、隔離距離を短くした。
「混雑時は電源オフ」になっていると指摘。
 国交省 もっと勉強していく必要があると思うが、化学物質過敏症も電磁波過敏症も原因を絞り込むことができない、これをやれば防げるという研究ができていない。

 過剰なアロマサービスやWi-Fiで辛い思いをしている人たちの現状を伝えましたが、各省の研究結果を待つ姿勢が伺いしれました。CS、ES患者が安心して利用できる交通機関を運営できるよう注意喚起してもらえたらと思っています。

総務省
 質問①国の定めた電磁波の基準値では体調を崩すひとがいる実態を把握しているか。
 質問②予防原則に則り、欧州並みに規制値を厳しくする必要があるのではないか。
 回答 人間に健康影響を与えないように十分に低い値を基準値として定めている。WHOのファクトシートやICNIRPガイドラインを尊重している。

  総務省はICNIRPの指針値を尊重しているが、指針値以下でも私たち電磁波過敏症患者は反応する。安全だと云われているものでも反応する人たちがいることを知っていただき、そういう人達の声もくみ取って欲しい。総務省が安全だと云っているスマートメーター、基地局、Wi-Fiに反応する。どこの省庁に行っても総務省が基準だからといって話を強制終了される。困っている人の声に耳を傾けて欲しい。
 総務省 人への実験だけでなく、細胞や動物実験も行いながら調査しており、細胞実験では遺伝子レベルまでみられるようになってきている。電磁波に対してどんな反応をするかしっかり調査していきたい。そういった成果をWHOやICNIRPに提供し国際的なリスク評価に貢献したい。
  電磁波過敏症患者の有志を募って調査をして欲しいと総務省に申し込むことはできるか?
 総務省 ボランティアの募集をしている研究機関がある。

 遺伝子レベルまで実験をして安全性を示しているのなら、その安全基準値以下でも反応する電磁波過敏症患者の声に耳を傾け、基準値の見直しを真剣に考えてもらいたいと思いました。

 まずは、各省庁に電磁波問題で苦しむ人たちがいることを伝えることができました。次回、再び省庁レクに行くチャンスができたら、電磁波過敏症患者の窮状を伝えたいと考えています。もし、電磁波で苦しんでいる症状などを募集したら声を寄せていただればと思っています。諦めず、一歩一歩進んでいきます。

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