学習会 5Gで増える電磁波とそのリスク 1 「5Gとは何か」

網代太郎

 携帯電話は、アナログ方式だった第1世代から、第2世代以降はデジタル方式に変わった。第3世代(3G)からは世界共通方式となり、さらに「3.9世代」とも呼ばれていたLTEなど、そして第4世代(4G)の「LTE-Advanced」「WiMax2」へと「進化」した。世代が代わるにしたがって、携帯電話の通信速度が上がり、大量の情報をより短時間で送信できるようになった。通話やメールだけでなく、インターネットのホームページを閲覧したり、高精細な動画を見たりすることも可能になった。

3G以前はサービス終了へ
 第1世代、第2世代はすでに終了している。第3世代は、KDDIが2022年3月のサービス終了を昨年11月に発表。ドコモも2020年代半ばの終了を目指すと、昨年10月に社長が表明した。

4Gと5G
 2020年、5G商用サービスはNSA(ノン・スタンドアローン=独り立ちしていない)という仕組みで開始されると説明されている。これは、4Gと「コアシステム(携帯電話ネットワークを制御する中核的な装置群)」を共用するなど連携して運用されるというものだ。その数年後にSA(スタンドアローン=独り立ち)の5G基地局の導入が開始され、5Gの全性能を発揮できるようになる。4G以前の周波数帯域においても、順次5Gを展開すると説明されている。

5Gの特徴(1)高い周波数
 4G以前と比較した場合、5Gで特徴的なことがいくつかある。
 4G以前で利用されている周波数帯域は、すでにいろいろな用途で利用されており、5Gが望む幅広い帯域幅を確保する余地がない。そこで、従来よりも高い周波数帯である、3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯を5Gで利用することになった(図1)。これらの周波数帯も実はそれなりに利用されてはいて、まったくの“更地”ではないが、より低い周波数帯よりはマシということのようだ。
 これらのうち28GHz帯の電波は「ミリ波」と呼ばれている。ミリ波とは、波長1~10mm、周波数30~300GHzの電波のこと。28GHzの波長は厳密には10mmより長いが一般的にはミリ波と呼ばれている。

図1 5G電波の周波数の高さと、帯域幅の広さ(KDDI「5Gの標準化と最新技術動向-フェーズ1の全容と2020年までのロードマップ 5Gを実現するための具体的な技術:NR(New Radio)」2018年10月25日)

5Gの特徴(2)広い周波数帯域幅
 5Gは使用する周波数の帯域幅(周波数の範囲)がとても広いという特徴がある。1通信事業者あたり最大で、3.7GHz帯および4.5GHz帯では100MHz、28GHz帯では400MHzの帯域幅が割り当てられる予定だ(4Gは最大40MHz)。広い帯域幅を利用するということは、すなわち、たくさんの電波を使うということだ。5Gは、そもそも、たくさん電波を使うことで超高速化する通信方式であることが重要な点だ。5G用に割り当てられる周波数帯域(バンド)候補の幅は、現在利用中の4G以前の帯域幅を全部合わせたよりも圧倒的に広い(図1)。

5Gの特徴(3)スモールセル(膨大な数の基地局)
 5Gで使うミリ波などの周波数がより高い電波は、4G以前で利用されている周波数がより低い電波に比べて到達距離が短い(図2)。したがって基地局1基あたりがカバーするエリア(セル)は、より小さく(スモール)なる。

図2 KDDI前掲資料

 通信事業者は、5Gの基地局装置を従来と同様のサイズにして最大帯域幅を利用する場合、5Gのセルサイズは約100mが限界で(既存電波は3~4km)、最大で既存の100倍の数の基地局の設置が必要になるとしている(NTTドコモ「5Gサービス展開イメージ」2018年4月27日)。携帯電話基地局が、場所によっては約100mおきという超高密度に設置されることになる。

5Gの特徴(4)ビームフォーミング

図3 KDDI前掲資料

 上述の通り、ミリ波など周波数が高い電波は到達距離が短いが、電波が飛ぶ方向を絞り、エネルギーを集中させることで到達距離を伸ばせる。4G以前は基地局から広い範囲へ電波を飛ばしている(図3の左側)が、5Gではケータイ1台ずつへ向けて電波をビーム状に飛ばす(図3の右側)。ビームを作るので「ビームフォーミング」と言う。
 逆に、ビームの周辺へは電波が届きにくくなるので、基地局間の干渉を減らせる。

5Gの特徴(5)ビームスイーピング

図4 服部武、藤岡雅宣編著『5G教科書 LTE/IoTから5Gまで』2018年9月

 電波が飛ぶ方向を特定のケータイ・スマホ端末がある方向へ絞るためには、端末がどこにあるのかを探さなければならない。その仕組みが「ビームスイーピング」だ。4G以前では、基地局からある程度の広範囲に電波を送信するため端末の位置を絞り込む必要はないが(図4左側)、5Gでは基地局からビームを灯台のように一定周期で回転させながら出して、端末の位置を特定する(図4右側)。

5Gの特徴(6)ビームトラッキング

図5 KDDI前掲資料

 4G以前ではある程度の広範囲へ電波を送信するため、基地局のエリア内であれば、端末が移動しても電波はそのまま届く(図5左側)。5Gの場合は電波をビーム状に飛ばすので、端末が移動すれば、それを追いかける「ビームトラッキング」機能が必要となる(図5右側)。

5Gの特徴(7)ハンドオーバー

図6 KDDI前掲資料

 端末が移動して基地局のエリアから離れるときは、端末と通信する基地局を切り替える必要がある。これを「ハンドオーバー」といい、第何世代かに関わらず携帯電話システムに必要な機能だ。5Gではビームで端末を追いかけつつ、隣の基地局へ引き渡すようにして切り替えるのが特徴的だ(図6右側)。

5Gの特徴(8)Massive MIMO

図7 ソフトバンクのウェブサイト

 携帯電話1台ずつへ向けてビームを飛ばすために、5Gの基地局ではアンテナ素子が数十~数百並んだ基地局を採用する(図7)。その素子一つ一つからビームを放つ。この技術を、Massive MIMO(マッシブ マイモ)と言う。

図8 ビームフォーミングとMassive MIMOのイメージ ©ajiro, yamamoto

 MIMO(Multi-Input Multi-Output)とは、送信機と受信機の両方に複数のアンテナを搭載し、通信品質を向上させる技術だ。LTEで採用済みだが、5Gでは、それをさらに大規模(massive)に行おうとしている。図8は、Massive MIMOの基地局から、携帯電話1台ずつに電波をビーム状に放射しているイメージだ。ちなみにこの図は、「お爺さんが5人で、5G(ジイ)」というダジャレになっている。

5Gの特徴(9)客は消費者だけでなく企業なども
 5Gでは、4Gまでと比べ、より数多くの基地局の設置が必要となり、投資額は巨大になる。しかし、ケータイ・スマホ市場は飽和状態だ。スマホ等で通話や通信を行うユーザーだけを相手に商売をしていたら投資額を回収できないおそれがある。
 そこで、産業、医療、行政に利用してもらうなど、スマホ以外に5G電波の用途を広げることに、官民を挙げて躍起になっている。総務省が旗を振って、産業などによる5G電波活用法を開発する「5G総合実証試験」を展開。通信に限らない広範な分野の企業や自治体、大学などが参加している。産業などによる具体的な利用方法は、この後、鮎川が報告する。
 総務省はまた「5G利活用アイデアコンテスト」(2018年10~11月募集)を開催し、5G利用の新たなアイデアの発掘にも取り組んだ。4G以前でこのようなコンテストを開いたことはなかったことからも、国などが産業などの5G利用を重視していること、そして、産業などの利用について確かな見通しを持てていないことがうかがわれる。

5Gで実現を目指す性能

図9 総務省

 5Gによる通信は、以下の通り、超高速化、超低遅延、多数同時接続を実現するとされている。特に、超低遅延、多数同時接続は、産業向けの利用を意識した性能だと言える。
○超高速化:最高伝送速度 10Gbps 4Gの10倍の速度
 2時間の映画を3秒でダウンロード
○超低遅延:タイムラグ1ミリ秒 4Gの10分の1
 建設機械やロボットを遠隔操作
○多数同時接続:接続機器数100万台/k㎡ 4Gの30~40倍の台数
 家電やセンサーなど身のまわりのあらゆる機器がネットに接続

まとめ
 以上、見てきたとおり、5Gは4Gまでと比べて非常に広い帯域幅を使う。これは、従来よりも大幅にたくさんの電波が使われることを意味する。また、5Gはビーム状に電波を飛ばすという、4Gまでとは異なる電波の出し方をする。これらのことから、5Gは4Gまでとは異なる曝露をヒトや野生動物などへもたらすことが予想される。こうした曝露が健康影響を生じさせないのか検証が必要であり、この後、上田さんが詳しく報告する。
 さらに、5Gビジネスは、ケータイ・スマホを使う消費者だけでなく、産業や自治体などへいかに売るかが成否を握る。しかし、実際どれほど売れるのかは見通し難い状況だ。期待ほど売れなかったら、そのツケは料金値上げなどの形で消費者へ跳ね返ってくるだろう。

 

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