アーサー・ビナードさん、ラジオで 過敏症の元WHO事務局長を紹介

 在京ラジオ局の文化放送で平日夕方に放送されているニュースワイド番組の中のコーナーの一つである「アーサー・ピナード 午後の三枚おろし」の7月8日放送回で、米国出身の詩人アーサー・ビナードさんが世界保健機関(WHO)への批判を展開し、その中で、自分が電磁波過敏症だと告白したかつてのWHO事務局長のことにも言及しました。
 WHOは科学的知見だけに基づいて中立公正に発言し行動すると思っている人も多そうです。日本政府は、そのような思い込みにも乗じて「携帯基地局などからの電磁波が健康への有害な影響を起こすという説得力のある科学的証拠はない、とWHOが言っている」などと、WHOを錦の御旗にして、電磁波による健康被害と対策を求める市民の声を拒絶し続けています。
 しかし、WHOは科学的知見だけでなく、政治的判断にも基づいて発言し行動する組織です。新型コロナウイルスの封じ込め対策で国際的に評価された台湾を排除する(中国の関与が疑われています)など、この感染症に対するWHOの一連の対応によって、WHOへの印象が変わったという人も多いのではないでしょうか。
 ピナードさんは、放送で「WHOは解体すべき」と言っていますが、WHOのような役割を担う国際機関の必要性を否定しているのではないだろうと思います。WHOの見解は一応、尊重すべきであるが、個別事案によってはかなり疑わしいこともあると私はかねてから思っていたところに、この放送を聞いて、我が意を得たり、と思いました。
 その上、日本のマスメディアがほとんど伝えることがない電磁波問題にも言及したのです。ぜひ皆さんにも紹介したいと思い、放送内容を書き起こしました。[]内は私による注釈です。
 「アーサー・ビナード 午後の三枚おろし」は文化放送以外でも、全国各地のいくつかのラジオ局で放送されているようです。【網代太郎】


 アーサー・ビナード(以下「ビ」) 「蛇が出そうで蚊も出ない」という言葉があって、ヘビが出そうでみんな「大変だ大変だ」って、心の準備もしているのに、蚊の一匹も出なかったって。なんかこうボク分からないけれど今の世の中、これがどこか当てはまるような気がします。アーサー・ビナード午後の三枚おろし、今週まないたに乗せるのは「ニュース深読みアーサー読み」。アーサー・ビナードです。
 水谷佳奈(文化放送アナウンサー。以下「水」) 水谷佳奈です。
  さっそくですが、今ちょうど話題に時々出ているバンドの曲を聴きたいと思います。
[曲が流れる]
  佳奈さんこれ、バンド名分かりますか?
  分かりません、だれ?
  本当ですか? これ抜きにしたらボクの青春は成立しない。
  ごめんなさい。
  WHO(ダブルエイチオー)っていうバンド。
  「ザ・フー」[英国のロックバンド]だ。
  「ザ・フー」。
  はい。
  ザ・フーつてWHOと書くでしょう。
  はい。
  で、バンドとしてすごい流行ったし、それから、1948年に設立されたWorld Health Organizationも「WHO」って略されているんだよね。だからアメリカでよくWHOの話をする時に「フー」って言っている人、「ザ・フー」とか言う人がいるんですよ。バンドのことをWHOっていう人は聞いたことないですけど。このWHOっていう頭文字が、まあ偶然にこうなったかもしれないけど、すごくこの組織の本質を表しているんですよ。
  うん。
  あの、WHO、フー。
  はい。
  「だれなんだよ」って。
  ええ?
  バンド名としてフーってやるとおもしろい謎みたいな感じなんだけど、これだけ世界各国から資金を得てこれだけ影響力のある組織が「だれなんだよ?」ってなった時に困るんですよね。
  はい。
  WHOのマークって見たことありますか?
  えーと、どういうのでしたっけ?
  なんかね、ヘビが杖に、国連のマークの上に、こうヘビが。
  ヘビなんだ。
  そう。で、このヘビは古代ギリシャの、医者っていうか医学のマークとしてヘビはほら、薬を持っている、毒を持っているっていうのもあるんだけど、なんかこう、そういうシンボルとか、ちょっとこう魅力的なものはあるけど、WHOの本質がまったくつかめなくて、で、だれのためにあるのか、世界保健機構って言ってるけど、だれの健康を守るのか、だれのためにこういうことをやっているのか、分からないんです。
  いや、今回もコロナ関連でも、なんか頼りになるのかならないのか、ちょっと分かりかねるところはありました。
  そう。けっこうそういうふうに感じている人は多いと息うんですけど、ボクは実はこのコロナ云々じゃなくて、ボクのWHOに対する疑い、そして憤慨は、もっとさかのぼるんですね。1948年に出来たんですけど、48年っていうと、ボクの母国が核開発をやって、そしてニューメキシコでプロトニウム弾を使って、広島でウラン弾を使って、また長崎でプロトニウム弾を使って、今度はマーシャル諸島ビキニ環礁で46年からやって、まあ、ソ連は核実験やってないけど核開発やってて、その核放射性物質、放射能が世界中の人々の健康に影響を及ぼすっていうことがもう見えている時代なんですよね。それでWHOを作ったんです。責任はアメリカを支配していた人たちにあるので、これあの、アメリカ人としておわびしながら本当は話さなきやいけないんだけど、それで作った時にWHOっていう組織、あの世界の人々の健康を守るっていうことを謳い文句にしている組織をIAEA[国際原子力機関]っていう世界に原子力を広げる、核開発を司る組織の手下にしたんです。
  はい。
  WHOが、放射能とか放射線とか核・原子力に関することを発表するときに必ずIAEAの意見に従わなきゃいけない。
  うん。
 ビ で、これを、ずっと問題にして座り込みまでやっているロシアの医者・科学者がいて、ヤブロコフ博士っていうんですけど、ヤブロコフは、チェルノブイリの原発事故のことをだれよりも調べている人。『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』っていうのを岩波から出している人なんですけど、ヤブロコフはずっとこれを問題にしてるんですね。
  うん。
  でボクは、その、まあ、チェルノブイリのことを調べているときに知ったんですけど、もっと身にしみるほど、これを実感したときが福島の浜通りで原発事故が起きた時なんですね。WHOがボクらの健康のために何一つやってくれない。なんにも、まともな報告書を出さない。行動しない。だからボクとしてはもう、WHO解体、もうWHO、組織としてつぶしたほうがいいっていうふうにずっと思っていたんですね。
  うん。
  そしたら珍しく、アメリカの大統領が、なんか似たようなことを言い出したので、もっと10年前に言ってくれたら良かったんだけど、まあ、遅くても、今からでも遅くないから、つぶしたほうがいいなあと思う。
  世界保健機構ですよ。
  だれの健康を守っているんですよ? フー?
  我々じゃないっていうことですか?(笑)
  だから「世界」って、つまり世界を支配している人たち、核利権とか他の利権を支配している、その人たちの安全とか、その権利を守るために動いているんじゃないかなっていう、ボクは逆にそういうふうに読んじゃう。でもね、実はまともな人が、たとえばWHOの事務局長になることもあるんですよ。どういう人かっていうと、グロ・ハーレム・ブルントラントさん。
  フー?
  フーですよね。これ、ノルウェーの首相を最年少で、しかも、女性初の首相になった…。
  はいはいはいはい。
  …ブルントラントさん。ブルントラントさんは小児科医で、で、ノルウェーの首相になって、そして首相をやめた後に、フー、WHOの事務局長になったんです、1998年から2003年まで。で、ブルントラソトさんは電磁波や携帯電話の人体の影響に敏感な方。
  うん。
  で、自分も頭痛になる。
  へえ。
  で、電磁波は、いろんなデータを見たらやっぱり健康にまったく影響ないとは言えないので、2002年にブルントラントさんはWHOの事務局長としてルールを決めて、携帯電話をここに持ち込んじゃいけないとか。で、そのことをノルウェーの新聞にも話した。2002年に、その、電磁波対策のことをやりだして、自分の執務室も携帯を持ち込んではいけないというルールを決めた。
  へえ。
  で、その後どうなったかっていうと、2003年に事務局長から引きずり下ろされて、その後はだれも電磁波の問題をやってないんです。
  へえ!
  ボクはそこがWHOの本質を表している小さな逸話だと思うんですけど。ま、リスナーの皆さん、どう思うか。

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