ガスのスマートメーター導入進む 水道のスマートメーターも本格導入の動き

図1 スマートメーターへの交換を知らせるチラシ(東京ガスのウェブサイト[1]より)

 電気メーターは(スマートメーターを拒否している場合を除いて)ほとんどがスマートメーターへ置き換えられました。そして、ガスのスマートメーター導入を積極的に進めているガス会社もあります。さらに水道のスマートメーターは、一部地域で小規模な実証実験が行われてきましたが、いよいよ本格的な事業化の動きが出てきました。電気メーターは「エネルギー基本計画」に全戸設置がうたわれていますが、ガスと水道はそうではないので、スマートメーターの拒否は、電気ほどは難しくない場合が多いと考えられます。とは言え、いつの間にかスマートメーターが設置されてしまうおそれはあります。

ガスは固定電話経由の遠隔検針が既に一定普及
 ガスは漏洩が起きたときに重大事故につながる可能性があるため、異常を検知するとガスを自動的に遮断するなどの機能を持たせた「マイコンメーター」が、ほぼ100%普及しています。さらに、マイコンメーターの一部は通信機能を備えており、携帯電話が普及する以前から主に固定電話網を利用した集中監視が行われてきました。遠隔検針も一部で実施され、その対象は、都市ガス130万世帯以上、LPガス600万世帯以上だそうです[2]。いわば“有線のスマートメーター”が、ガスでは一定程度普及しているわけです。ちなみに、全国に設置されているメーターの数は、都市ガス約2900万台、LPガス約2300万台です[3]。
 しかし、固定電話がない家も増えて遠隔検針の普及が伸び悩んでいることや、遠隔開閉栓などのさらなる合理化、また、電気と同様に見守りサービスなど新たなビジネスにつなげたいなどとして、ガス各社は無線通信ができるスマートメーターの導入を進める方向です。

東京ガスは昨年6月からスマートメーター導入

図2 無線機付きマイコンメーター(東京ガスのウェブサイトに加筆)

 東京ガスは昨年6月の東京都大田区を皮切りに、地域単位で順次、ガスメーターを「無線機付きマイコンメーター」(スマートメーター)へ交換しています。図2のマル印で囲んだ部分が無線機です。ガスのスマートメーターは、図2や図3のように、メーターに無線機(電気のスマートメーターの「通信部」に相当)を外付けする仕様が主流のようです。経済産業省の検討会[4]に提出されている資料を見ると、無線機内蔵型のメーターもあるようですが、東京ガスに問い合わせたところ、同社の「無線機付きマイコンメーター」は、すべて無線機が外付けになっているそうです。逆に言えば、東京ガスの場合は、目で見て無線機が付いていなければ、電波で通信するスマートメーターではないことが確認できます。「マイコン」という名称や、デジタル表示の液晶画面が付いているメーターの機種もあることから、スマートメーターと間違いやすそうです。心配な方は、ガス会社に問い合わせてみるとよいでしょう。

図3 ニチガス(日本瓦斯)のスマートメーター。右のパイプに取り付けてあるのが無線機(https://www.atpress.ne.jp/news/218959より)

 東京ガスのスマートメーターは、メーターどうしで電波を送受信するバケツリレー方式でを採用しています。東京電力などの電力会社で主流となっている通信方法と同様です。
 東京ガスのウェブサイトには「メーター作業予定日の1週間程度前と作業完了日に『東京ガスネットワーク指定工事会社』より、お知らせ用紙を投函いたしますのでご確認ください」と記載されています(お知らせ用紙は、前頁の図1)[1]。東京ガスの契約者は、チラシが入っていないか、日々チェックしましょう。

電気スマートメーターとの共同検針
 LPガス会社のスマートメーターの通信方式は、主に2種類あるようです。
 一つは、電力会社のスマートメーター通信網に相乗りする「共同検針」です。ガスメーターから近くの電気のスマートメーターへ電波を飛ばし、その後は電気使用量データと同じ経路で事業者側へ送信します。
 中部電力は昨年(2021年)4月からLPガス事業者との共同検針を始めていて、サーラエナジー(愛知県豊橋市)や大垣ガス(岐阜県大垣市)など10社以上が6万台強の無線端末を設置し、中部電力はさらに30社以上と商談を進めているそうです[5]。サーラエナジーは26年までに、中部電力管内のすべての顧客に端末を取り付ける方針とのことです。

LPWA通信網の利用

図4 LPWAのメリットと制約(日経BP社『すべてわかる5G/LPWA大全2018』より)

 LPガス会社がスマートメーターで利用しているもう一つの通信手段は、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれている通信方式です。その名のとおり「省電力かつ長距離での無線通信が可能(その代わり低速)」という特長をもった通信技術の総称です(図4)。あらゆるモノをネットにつなぐIoT(モノのインターネット)社会を目指すには、あらゆるモノに付ける通信装置への電力供給が課題になります。LPWAは単三乾電池2本で最長10年、端末を稼働させられるので、IoT社会の基盤の一つと位置づけられています。電気のスマートメーターとは違い電力線につながっていないガスのスマートメーターも、内蔵された電池をメーター自体の有効期限である10年間、交換しません。
 LPWAは種類(規格)が、いくつかあります。LPガス大手のニチガスは、「LTE-M」と「Sigfox(シグフォックス)」を利用しています。LTE-Mは、携帯電話の4G(LTE)電波の周波数帯の空きを利用しているので、スマートメーターは4G携帯基地局との間で通信をします。Sigfoxは、「京セラコミュニケーションシステム」という会社がSigFox用基地局を全国に設置していて、スマートメーターはSigFox用基地局との間で通信を行います。
 バケツリレー方式の電気のスマートメーターが利用している(そして少なくない過敏症の方々を苦しめている)Wi-SUN(ワイサン)と比べても、LPWAは電波が届く距離がかなり長いです(表1)。

中部電力が来年、水道検針を事業化
 これまでガスの話をしてきましたが、水道の話に移ります。
 中部電力は水道について、電気スマートメーター相乗り方式の共同検針を来年(2023年)4月ごろから事業化します[5]。1時間ごとの水道使用量のデータを集め、水道を運営する自治体などに提供します。検針員の人手不足に対応した業務効率化や、漏水の早めの発見につなげるとのことです。中部電力は一部自治体とすでに交渉を始めており、まずは山間部などを中心に取り入れ、25年度に1万台以上の設置を目指すそうです。

図5 神奈川県横須賀市役所に共同設置された、複数種類のLPWA基地局(YRP研究開発推進協会「横須賀市におけるハイブリッドLPWAテストベッドの取組みについて」2018年6月29日より)

ガス、水道スマメの通信頻度は1日に1回?
 ガスのスマートメーターの通信頻度は業者によって異なり、経産省の検討会[4]に提出された資料によると、1時間ごとの使用量データを1日1回または2回送信しています[6]。
 電気の現行スマートメーターに替わる「次世代スマートメーター」の仕様などについての経産省の検討会[4]による「とりまとめ」(今年5月)は、ガスと水道のスマートメーターについて、1時間ごとの使用量データを1日1回送信することが適当である、としています。
 一般的にスマートメーターによる通信は使用量データの送信時だけでなく、メンテナンス、緊急時、その他必要に応じて送信が行われるので、電波が出る頻度は1日1回よりは多いです。特に、バケツリレー方式の場合は、メーターは「自分」が測定したデータだけでなく、他のメーターが測定したデータの受け渡しも行うため、通信頻度はかなり多くなるはずです。
 それでも、30分に1回送信する電気のスマートメーターに比べれば、ガスと水道のスマートメーターの通信頻度はだいぶ少なさそうなので、健康影響の危険性は、相対的に小さくなるかもしれません。もちろん、個人差の大きい過敏症の方にとって絶対に安全とは言えません。
 また、ガスや水道の使用量データを知られることによるプライバシー侵害、監視社会化の懸念は、電気のスマートメーターと同様です。【網代太郎】

[1]東京ガス「無線機付きマイコンメーター」
[2]NPO法人テレメータリング推進協議会「ガス集中監視システムについて」2020年10月28日
[3]アズビル金門「計量データの利活用について」2020年10月28日
[4]次世代スマートメーター制度検討会
[5]日本経済新聞「中部電力、スマートメーター 水道も検針」2022年9月2日
[6]三菱総合研究所「共同検針に関するニーズ」2020年10月28日
[7]中嶋信生・電気通信大学産学官連携センター特任教授「IoTを支える無線技術の特徴と比較」2017年11月
[8]「今さら聞けないLoRaWAN、他のLPWAとの違いも解説」2022年1月11日

 

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