石黒貴子(電磁波研事務局)
こんにちは、石黒です。最近、自分の仕事にも関わりのあるテーマで、大学の講演に参加をし、その後の懇親会に参加を致しました。これを聞くと、一見、本当に重い電磁波過敏症?と思われるかも知れませんが、実際には、1μW/cm2以上のところに5分もいれば頭がツーンとしてきて、密閉された場所でその状態でさらに長いこといれば、後になってひどい湿疹が出てきたり、次の日になかなか動けなくなる等の症状が相変わらず出ます。
私は日頃クリエイター名で活動をしており、ほとんどの場合、自分が電磁波過敏症であることをお話ししていません。まだまだ理解されないことが多い電磁波の影響ですから、そのイメージが原因で、仕事面で制限されたくない、という気持ちからですが、これまでと変わらない装いで振る舞うことには様々な工夫が必要です。
例えば、外を出歩く時は、エコロガの高周波遮蔽布で作った服等を活用し、タイツの下に遮蔽布を巻き、測定器で電磁波環境の指差し確認をしながら、電磁波の高い場所にいないようにすれば、そうした懇親会等があっても、電磁波の低い場所を選んで数値の高い場所を避けることができ、皆さんに「実はかくかくしかじかでスマホ等の電源を切るか、機内モードにしていただけると嬉しいんです」等アナウンスをしなくて済むことが多いです。
私が何故そうまでして、できるだけこれまでと変わらないように振る舞い、カミングアウトできる相手とタイミングを選び、人間関係にも細心の注意を払うかといえば、私自身、今の仕事を学生時代からはじめ、生涯取り組んでいく生きがいである仕事を、これまで通り、いや、これまで以上の結果を出していきながら、まだまだたくさんの人たちと関わっていきたい、と考えているからです。同時に、二人の娘達を育てていかなければなりません。
一方、そんな見えない制限を人知れずしなければならない社会構造自体を変えていく必要があると強く感じています。
電磁波の問題は、行政や企業等に真っ向から働きかけを行うのではなかなか難しい側面もあるため、自治体や学校等の施設、医師会単位(医療業界単位)での働きかけをしていくことができないだろうか、と考えていました。
そんな時、いつも電磁波研の定例会にご参加されている群馬の服部さん[編注:この会報の1頁からの記事を寄稿した方]が、保健所に相談をしてみることも、一つのあり方です、とのお話をされていたため、早速、保健所に相談をすることにしました。
そして最寄りの保健所の健康推進課の担当の方とアポをとり、資料を持参して直接窓口で担当の方に、「電磁波による健康影響に関する公的な相談窓口を作ってほしい」というテーマでお話をさせていただきました。
保健所の方は「定期的にコンタクトを」
担当の方は、電話越しではちょっとなんだかよくわからない、という様子であったものの、その後、神奈川県鎌倉市の自治体独自の携帯基地局に関する条例等についてや、電磁波研の私の記事を見つけ、いろいろな電磁波に関する内容を検索されたのか、お話をするときにはある程度理解をされた上でお話をすることができました。
担当の方は、私からの相談内容について「まずは供覧(保健所の職員が見ることができるようにすること)から始めたいと思います」「継続的にコンタクトを取らせていただきます」とおっしゃり、和気藹々とお話が終わりました。担当の方はとても良い方でした。
本当は所長にお会いして色々なお話をしたいところではあるのですが、1回や2回で何かが変われば通常の仕事でだって、何の苦労もありません。大事なのは継続すること。
きちんとした資料を手元に持っていくと、自治体でも学校でも病院でも、ちゃんときいてくださることが多いと感じます。特に手応えを感じるのは病院で、資料を持ち込んだその後の対応は、手探りながらもその時々の適切な対応をしてくださったと感じることが多いです。
電磁波問題への理解のための資料の例
私が保健所や学校、病院等に持参している資料は、
・影響があるとされている研究論文や資料等、日本弁護士連合会の2012年の意見書、海外の動向等をリンクでまとめたもの(紙媒体だと分量が多すぎるため、各資料タイトルと研究媒体の名前とリンクのリストを後でQRコードで見れるようにしたもの。名刺をいただいている場合他の人たちにも共有しやすいようにデータでも送ります)。
・総務省・経産省主催の大磯での講演会(会報前号参照)についてのレポート(主に、具体的に市民から寄せられている質問内容や総務省の回答、それに対しての実際の課題をまとめたもの)
・国立研究開発法人情報通信研究機構主催で昨年12月に開かれた「電波ばく露レベルモニタリングシンポジウム」で5000人に調査されていた結果の一部(5G等が激増しつつも、実際にそのサービスを使っている人は10~20%と少ない等がわかる内容)
・私が描いた電磁波漫画
などです。
また、保健所には、新聞等で取り上げられている電磁波過敏症の方の記事等をお渡しすると、より理解が深まりやすいかなと感じています。
例えば京都新聞の「読者の声」では、数回に渡り、電磁波過敏症になってしまってからPCやスマホ、TV等をほとんど使わなくなり、外出もほとんどできていない方の切実な訴えの声等が数回に渡り記事として掲載されているだけでなく、その記事をみて、自分は電磁波過敏ではないけれども、このような声を見ていると、本当に早くその病状についての解明をしてほしいと思う、等の第三者からの感想等が紹介される等しています。そうした記事等にも目を通していただくことで、この問題がいかに深刻であり、一部の人たちだけの問題ではないということが理解をしていただけるようになるのです。
そして最後に、自分の身を守るために、様々な不安定情報を書き分けながら、ここまで資料を集めなければならないことにとても危機感を感じていることをお伝えします。
相手に理解をしていただくには根気と情熱と信頼が必要です。形や方法を変えて伝え続けることで変わっていくことも必ずあるはずです。方法は一つではありません。あらゆる形で、あらゆる方面に、まずは基本的な情報提供や、相手によって、ある程度厳選した内容を共有をするところから、全ては始まると思います。